二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re: original ダンガンロンパ アンケート実施中 ( No.57 )
日時: 2012/02/26 00:16
名前: 魔女の騎士 ◆klvlLaCD9M (ID: .7T494ht)


「分かった。安積、こっちだ」
「ああ」


 安積を手招きした後、おれはカウンターの端につけられた扉をくぐってキッチンに入った。安積が来たと同時に扉を一応閉め、食器棚のある奥に向かう。


「お前たち、来ていたのか」
「安積と……速水……だな」
「あら。安積と速水だったのね。てっきり、花月か御剣だと思っていたわ」


 その途中、米倉たちの反対側、電子コンロのある方にいた篠田とアヤメに話しかけられ、おれは顔を向けた。
篠田はメインプレートににんじんを添え、アヤメはスープを容器に注いでいる。そして、篠田の後ろには荷台に料理を載せている大山と、フライパンから上がった炎と格闘している石蕗の姿があった。


「どう見たらその二人と僕たちを間違えるんだ?」
「うふふ。そうね、ごめんなさい。ここからだと外側はあまり見えないのよ」
「確かに……そうだな」


 おれは首を回し、食堂を見る。
 アヤメの言う通り、この薄暗いオレンジ色の光の中では、何かがいるのは分かるものの、だれなのかは判別しにくい。現に御剣がいる出口付近の席だと、陰が色濃くて人がいるのかも特定できないほどだ。


「ふふ。そういえば、安積……」


 楽しそうなアヤメの笑い声に胸騒ぎを覚え、おれは思わず首を戻す。彼女が目配せした先では、笹川と東雲が黙々とウサギ林檎を皿に盛りつけていた。


「笹川はあっちよ。がんばってね」
「なっ!? なにを唐突に!?」
「あら、てっきり彼女に用があると思ったのだけど?」
「そ、それは……まぁ、そう…だが………」
「けっ」


 笹川が一度だけおれたちを睨み、そっぽを向く。
明らかに、不機嫌な様子だ。


「……速水刹那」


戸惑いがちに顔を向けてきた安積に、おれは大丈夫だと、頷きだけ返し笹川を見遣る。
それで、安積は決心したらしい。
まだ困惑した様子だったが、大きく深呼吸をして彼女の前に歩み寄った。


「笹川辰美」
「………」
「辰美ちゃん……呼ばれて……ますよ?」
「笹川辰美っ!聞こえていないのか!?」
「そんだけ声上げて、聞こえないわけないだろ?」


 笹川がようやく体を安積へ向け、やけに落ち着いた様子で言い放つ。


「で?なんだよ?」
「あ、その……さっきはすまなかった。僕の不用意な発言で君のことを傷つけてしまって……」
「……ふーん」


 まだ怒っている…のだろうか。
笹川は口を真一文字に結んだまま、それ以降言葉を続けようとしなかった。


「「………」」


安積もさすがにああ切り返されては言いづらいだろう。
そのため、できあがったのは二人が真っ向から睨み合うという、傍から見ている人間にとっても重苦しい状況だった。


「た、辰美ちゃん……」
「ね、ねぇ、タッツー。許してあげなよ。あづみん、謝ってるんだからさ」
「笹川……もう……」


 あまりの気まずさに、彼女の隣にいる菊を始め、雅や大山が助け舟を出す。
その会話におれも入ろうとしたところで、気づいた。笹川がわずかに口元をほこばせていることに。


「くく……っ。ちょ、もう無理っ」


 堪えきれない様子で安積を眺め、笹川が吹き出す。
それに安積はもちろん、おれも、みなもただ呆然としていた。
今の流れでなにがおかしいのか……見当もつかない。


「ははっ。お前って、本当に正真正銘の馬鹿だなっ」
「なっ!? そ、それはどういう意味だっ!?」
「どっかの恋愛シュミレーションで出てくるキャラか、ってこと。真面目過ぎるんだよ」
「れ、恋愛しゅみれーしょん?」
「なんだ、そういうゲームも知らないのかお前?」
「あ、当たり前だっ! 僕はゲームなんてまったくしてないんだぞっ! それに、あれは目を悪くするじゃないかっ!」
「ぷっ。ちょっ……まんま同じ台詞っ。もう、笑わせんなってのっ!」


 笹川が安積の肩をばんばん叩き、笑い声をあげる。
しかし、対して安積は今にも頭を抱え込みそうなほど、戸惑いがちな表情を浮かべていた。
周囲も、同じような顔つきだった。


「な、なにがおかしい!? 訳が分からないぞっ!?」
「だーかーらっ! とりあえず、しゃべるなってこと」
「む…」


 笹川は安積の口に人差し指を当て、ニヤリと口を曲げる。それから、彼女はうさぎりんごを載せた皿を彼の手に押しつけた。


「ほら、今からあっちに料理運ぶから手伝え」
「あ……ああ。分かった」


 いつの間にか機嫌を取り戻した笹川に言われるまま、安積はうさぎりんごの載った皿を運びはじめる。


「じゃ、菊。おれも運ぶから、残りのやつは任せたぜ」
「あ……は、はい……」


そうして、笹川もうさぎりんごの皿を二枚持ち上げるとさっさと手前の食堂に向かっていってしまった。