二次創作小説(映像)※倉庫ログ

「愛」の形001*途切れた赤い糸 ( No.275 )
日時: 2012/03/29 12:56
名前: もずく・ ◆GJi12uWTrE (ID: vj3b3W/M)
参照: http://mynmmr0608.anime-voice.com/









         12月24日




      白い雪が降る東京の病院で




      愛しい人が




      死んだ —— 。






「愛」の形001-2 ( No.276 )
日時: 2012/03/29 13:27
名前: もずく・ ◆GJi12uWTrE (ID: vj3b3W/M)
参照: http://mynmmr0608.anime-voice.com/





綾の体温はだんだん冷たくなっていく。

手を離せば、もう綾が帰ってこないことを認めてしまうことになる。
認めたくない一心で、冷えかけている細く、小さな手を何度も擦り合わせた。

もう1度でいい。


もう1度だけでいいから、綾に笑いかけて欲しかった。


苦しみの感情など知らぬままに、逝かせてやりたかった。
ごめん、あんなに守るって誓ったのに。
悔しいよ俺。お前の事最期まで幸せに出来なかった。


いや、綾は幸せって感じてくれていたのかな?



聞かせて欲しかったな、お前がちゃんと幸せだったか。



俺は自信こそあるわけじゃないから、胸張ってお前に“幸せ”与えられたなんて言えないよ、恥ずかしいけど。




「祥平さん、もう…綾さんは…」

「春奈、そっとしておけ…」
「でも兄さん…」


シンミリとした空気を保った病室にこだまする、後輩達の声。


綾の手を元の位置へとそっと戻し、時間を掛けて振り返る。

そこには10年前、共に汗と涙を流した“仲間”達が表情を曇らせ立ちすくんでいる。

第一声を放った春奈は両の手で目を覆い、泣き顔を見られまいと小さく肩を震わせ
そんな春奈を兄である有人が肩を抱きしめ

守は現実を受け入れるかのように真っ直ぐと綾の横顔を見つめ
今や結婚して苗字が変わった、夏未も悲しそうに綾を見つめていた。



「大丈夫…綾は…天国へ行ったよ」



こんな時こそ先輩らしくしなくてはと思って作り上げた笑顔は決して“笑顔”と呼べるものではない。


自分でも判る。


笑えない、いいや こんなときこそ失笑と言うべきか。



愛しい人が、俺の手の届かない遠くへと旅立った。







「みんな…綾に“さようなら”をしようか」



綾、聞こえてるか?
今どこかで聞いてるか?



お前に“さようなら”をするから





俺に






力を貸してくれよ









「祥平っ…さん」
「杉浦…」
「祥平…」
「…杉浦くん…」





泣き顔なんて



後輩に見られたく


なかったなあ、俺。