二次創作小説(映像)※倉庫ログ

My world 番外編 ( No.290 )
日時: 2012/03/30 11:10
名前: もずく・ ◆GJi12uWTrE (ID: vj3b3W/M)
参照: http://mynmmr0608.anime-voice.com/

        My world番外編「 特等席 」



「つかれたぁ」

「あと少し頑張れよ」
「アッくんおぶって」


頬を膨らませ、上目遣いで俺を見つめる花弥。



花弥を蝕んでいた病は日に日に回復へと方向を変え
リハビリを乗り越えた末に、今日退院を迎えた。
まだまだ、俺たちが出逢った頃のような体型には戻りきっていないが。

それでも俺はこうしてまた花弥が隣に居ることが嬉しくてつい甘やかす。
でも今日こそは厳しくしなきゃいけないな。



「駄目。ちゃんと自分で歩いて筋肉つけろ」


俺の言葉に花弥はぷいっとそっぽを向いて先を歩き出した。


そうやって怒るところとか、さりげなく後ろ手を組んで俺に手を繋いでもらうのを待ってるところとか



もう、全てが愛しい。


惚れた弱みってやつなんだろうなって、思う。


だけど



だからこそ俺はお前じゃなきゃ隣に居る意味がないと思うし、
お前の隣は俺じゃなきゃ駄目だって思うよ。


好きだから。


1度は手放した。



でももう、俺はお前を離すつもりは盲目ない。




「あのさ」




もう、決めた。

決めたから、俺。



俺の特等席も
花弥の特等席も


誰にも譲りたくないよ。








「  結婚、しよう  」




花弥は進めていた足をピタリと止める。
硬直しているのが判る。


俺はどれだけでも待つ。お前のためなら。




「花弥」


花弥は俯いていた。

俺は腰をかがめて顔を覗き込む




「………アツ、…アツヤ…っ」


何で、泣いてる?
花弥を抱きしめる。愛しいからとっさにした行動だった。

頬を濡らす花弥の涙。



その一粒一粒を、俺に捧げてほしい。



我侭か?





「私、アツヤに迷惑をかけちゃうかもしれないよ?」
「迷惑なことでも全部俺が受け止める」

「アツヤより早く死んじゃうかもしれないよ?」
「その時は俺も一緒に死ぬ。お前は一人じゃない」

「・・・・・・私なんかで・・・いいの?」

「お前じゃなきゃ意味ねーだろ、馬鹿。」
「だってアツヤにはもっと良い人がたくさんいる!」


なあ、俺はお前以外に人を好きになれる自信がこの先あるとは思えない。


確かに、理人は良い奴だった。俺自身、好きだった。



でも最後に辿り着くのは結局お前しか居ないんだって知ってるか?

不安になんかならなくてもいいんだ。
俺はお前が好きだから。
お前しか俺の特等席は座らせないから。










「   花弥しか俺は愛せない   」




ポケットに忍ばせていた紅色の小さな箱を取り出して、その中に埋め込まれていた『指輪』を花弥の左薬指につける。


「 2人で、辛いことも悲しいことも乗り越えよう

   信じて、俺について来て欲しい。 」


花弥は涙で濡れる瞳を乱暴に拭い、俺に向き直り






「  お願い、…します  」



—— そう、はっきりと告げた。




                        *END*