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二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- 会いにいくよ 003 ( No.429 )
- 日時: 2012/06/17 18:37
- 名前: もずく・ ◆GJi12uWTrE (ID: vj3b3W/M)
- 参照: http://www.kakiko.cc/gallery/pickup.html
003話 [ 心を撫でるような ]
カラン、と透明なガラスのコップに入った氷が1つ音を立てた。
目の前に座る日置さんはさっきから黙りっぱなしで、気まずい空気が俺の部屋に漂っている。
少し傷んだ黒いロングのストレート。
化粧はしていないのに、人形のように目は大きく、そして肌は白い。
細くて華奢な体。
いつから俺は日置さんをちゃんと見なくなっただろう。
出会った頃はお互い気持ちが通じ合っていて、お互いの心の内が表情一つで理解できた筈だった。
でも今は、日置さんが何を考えているか全く分からない。
ただ無表情。
「あ・・・のさ日置さん」
とりあえず、謝ろう。そう思った時だ。
日置さんの瞳からボロボロと大粒の涙が零れおちたのだ。
「え、あ・・・ひおき、さん・・・!ごめ・・・っ」
「謝らないで下さい」
日置さんは涙も拭わず、真っ直ぐと俺を見つめる。
そして眉を「八」の字にまげ、微笑んだ。
「風丸さんの気持ちが変わらないのは、私の所為ですね」
「な、」
「あの人を忘れられないのは、忘れさせてあげられない、私の、所為です」
心を撫でるような、くすぶられるようなそんな感覚が俺を襲う。
違うのに、違うと言葉を発することが出来なかった。
日置さんが両手で顔を被って、嗚咽を堪えながら泣いている姿を見てしまったから。
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