二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- 木蓮 ( No.467 )
- 日時: 2012/07/03 18:33
- 名前: もずく・ ◆GJi12uWTrE (ID: vj3b3W/M)
006話 [ 涙の跡さえ ]
「そういえば源田くん、さっき何か言いかけてなかった?」
学校周辺にいるのは見つかる危険があるので、人の寄り付かない空き地へと場所を移動した。
大川はスクールバッグを地面に起き、壁にもたれる。
「ああ、そう言えば大川の進路しらないなと思って。」
「進路か・・・」
源田の言葉を繰り返し言った後、俯いて黙り込む
そしてゆっくり顔を上げ、少し目をそらした。
大川の進路を聞いたことがなかった。
聞こうとも思わなかったし、話題にすらならなかった。
だから源田が聞く今の今まで誰も触れようとはしなかったし、
大川自身がその話を避けているようにも見えた。
でも今なら、今なら。
もう卒業するんだ。次はいつ会えるかも分からない。
俺の中に生まれる好奇心と期待。
しかしその好奇心と期待は大川の言葉によってかき消される事となる。
「県外に就職するんだ」
「え?」
「家、貧乏だからさ」
そう言うと大川は笑う。
「奨学金で入った学校だったから、学校は中学までって決めてた。でも」
ためらいを入れ、大川は俯く。
帝国学園から、就職というのを俺は聞いたことがなかった。
なんせ帝国は言っちゃアレだがボンボンやお嬢様が通う学校で
そして学力だって上位中の上位。
中等部からは100%が進学を希望するのが普通だ。
なのに大川は進学を希望せず、就職と言った。
大川の成績は決して悪くはない。むしろいい方だ。
なのになぜ?
奨学金を貰えるくらい成績がいいのに。
家が貧乏、なんて理由で進学を諦めたって言うのか。
わからない、ワカラナイ。
「佐久間くんや源田くんと会えるのが最後って思うと・・・悲しいなあ」
「 ———っ、」
「大川・・・」
なんだよ、なんで泣くんだ
悲しくなんかない、最後なんかじゃない、違う、違う!
生きて同じ世界にいればいつか必ずまた会えるって信じてる
でも、大川が泣くとそんな風に思えなくなるだろ
もしかしたら2度と会えないかもしれない。
俺のこの大川に対する気持ちも伝えられぬままに、永遠に。
「いつ・・・・・・東京出るんだよ」
「・・・明日、かな」
( 涙の跡さえ )