二次創作小説(映像)※倉庫ログ

裏切られ、傷ついて、それでも僕らは愛を唄う。 ( No.494 )
日時: 2012/07/21 00:06
名前: 兎欠 ◆GJi12uWTrE (ID: vj3b3W/M)
参照: http://mynmmr0608.anime-voice.com/

@1 [ あなたの瞳 ]




“ お前が女ばかり生むからだ!! ”

“ やめてよ父さん!性別なんて誰も好きなようには決められないでしょう! ”


“ ごめんなさい、ごめんなさいアナタ・・・! ”
“ ねーね、お母さん泣いちゃったあ ”



父はオトコノコが産まれて欲しかったと嘆く。


幼児のように物を投げつけ壊し暴力で蔑む。
私の家庭は全てが父中心で回っているようなもの。

幼い頃から見てきたその光景は今でも目の奥に色濃く染み付いている。



父はある日それまでの人間性とはあたかも別人のように変わり、
私と姉、母に笑顔を振りまき遊園地へ連れて行ってくれた。
暴力的で自分勝手な父が遊びに連れて行ってくれる事は私も姉も初めての体験で、
これで今までの自分を見返してくれたのだろうかと思っていた矢先。




それは本当に一瞬の出来事だった。


父が家に忘れ物をしたと言って途中で退園をした。

いくら待っても帰ってこない父を心配し、私たちも遊園地を後にすることになった。


ボロボロのアパートの軋むドアの音を聞きながら部屋へ入ると




そこには何もなく、空っぽで、ただ滑稽に1枚の写真だけがハラリと落ちていた。


姉も母も絶望し、幼かった私でさえ父に対する憎悪が生まれるのに時間は要さなかった。





“ 空っぽね ”


母は力なく呟く。



“ 空っぽ、ね ”

まるで私の心のようだわ。

母は涙声で再度呟き、静かに泣いた。



母の涙は美しかった。
汚らわしい父では出せない美しさ。


男とは、暴力的で、自分勝手で、汚らわしい生き物。



そう、それは父が植えつけた男への方程式。


あの人の瞳はいつも真っ黒で、分からなかった。