二次創作小説(映像)※倉庫ログ

木蓮 ( No.505 )
日時: 2012/08/13 23:14
名前: 兎欠 ◆GJi12uWTrE (ID: vj3b3W/M)
参照: http://mynmmr0608.anime-voice.com/

最終話 Ⅱ/Ⅱ [ また春が来て ]





「佐久間、こっちに戻ってきてたのか?」



時差ボケの関係で頭がぼんやりとするが、記憶を頼りに源田の家へと辿り着く。




「大川に聞きたいことが、あるんだ」
「わかった」





源田と大川は、去年結婚した。

大川のお腹には子供がいるらしい。


騒ぎ立てるようなことはしないつもりだ。
あくまで穏便に。いや、騒ぐような事態にはならないが。





「ひさしぶり、大川」

「佐久間くん?」




何年ぶりなんだろう。


中学以来かもしれない。
あの頃長かった髪は短く、大人びた容姿。



好きだった頃とは雰囲気が、俺の知っている大川ではない。


結婚すると人はここまで変わるのかと思い知らされる。


見たことないくらいに膨れ上がった腹。




2人の愛の形がもうすぐ生まれると言う事が聞かずとも分かる。





「単刀直入に言う。お前にとっての“木蓮”は何だ?」




読んでいた本をパタリと閉じる大川。

懐かしむように微笑んで、うん、と相槌を入れた。






「佐久間くん、かな」
「は、」


「憧れてたんだよ、佐久間くんに」


あこ、がれ?





「ねえ、言わなかったけれど、木蓮の終がどんなものか教えてあげる」




大川は目をそっと閉じた。


想像するように、優しく。





「満開の木蓮の木の下を通り掛かったとき、


風もないのに突然花びらがバーッと100枚ぐらい一気に降ってくるの。

木蓮の花びらは大きいから、地面に落ちるときほんとに大粒の雨が降りだしたかのような
「バラバラ」という大きい音がするんだよ。
「もう花びらを落としてもいいよ」って木の中の指令が、
  幹、枝を通して伝わってるのかなって思う。」








『もう、花びらを落としてもいいんだよ』




どれだけ美しい言葉を聞いてきたか。


どれだけ美しい言葉を探しきれなかったか。
見つけようともしなかった俺に降りかかった、美しい言葉。



肩の荷が下りたような



違う、


馬鹿みたいだけど、子供騙しみたいだけど、





心に染みる言葉で


恥ずかしいくらい、俺にピッタリな言葉で。





「佐久間くん」


真っ直ぐと俺を見る瞳


そこには迷いなんか1つもない。





「花って、花言葉で綺麗に言いくるめられてしまうかもしれない。


  見かけで言いくるめられてしまうかもしれない。
  でもそこにはちゃんと、見た人にしか伝わらないものがある。

  私は佐久間くんを木蓮のような強い人だと思ったよ」



「強い人?」


「そう、佐久間くんは強い人だよ。」
「どこ、が」



「木蓮はどんな事があっても、幹からの指令がない限り落ちないの」





もう、わかるよね?


言葉では言わなかった。
口だけを動かして、伝えた言葉。






人は見かけではない

確かに、確かに偏見はあるかもしれない
でも負けないくらいの強さを持ち合わせている


つまり、




散り散りになった仲間と離れてしまっても


俺にはそれを繋ぎ留めるだけの絆がある。




木蓮とは、


木蓮とは、





-----------------“絆”






                    2012-0813 木蓮 完結