二次創作小説(映像)※倉庫ログ

【ボカロ神曲で小説作ってみた】パンダヒーロー ( No.1 )
日時: 2012/03/19 17:35
名前: 菜の花 (ID: TaF97fNV)

***「パンダヒーロー」第一話***


都市伝説なんて、あるわけない。

原 拓実(ハラ タクミ)もとい俺は部活帰りの暗くなりかけた道を急ぎ足で歩いている。

部活といっても別に忙しい部活でもなく少子化のご時世のおかげで部員が少なくなった卓球部。しかも今日遅くなったのは、部

室の窓を割ってしまって説教をされていたから————なんて馬鹿馬鹿しい理由だ。

さっきから『都市伝説などありえない』と自分に言い聞かせているが、昼間クラスメートが話していたおかしな都市伝説が頭か

ら離れない。

その都市伝説『パンダヒーロー』が。


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———さかのぼる事5時間前———

昼休みの真っ最中の事だった。俺は学食で友達がいないわけじゃないがなんとなく、と思い一人で食事を取っていたところだっ

た。今日はいつもより心なしか人が少なく、テーブルもいつもより空いていたからか、向かいのテーブルにいるグループの話が

筒抜けだったのだ。

暇だったのでそのグループの話を盗み聞きしていると、こんな事を話していた。

「最近ここらで有名な話なんだけどー、『パンダヒーロー』って都市伝説があるんだよねー」その言葉に他のメンバーも「何何

?」と、興味深そうに話を聞いている。

「頼めば大抵の事はしてくれる、いわば何でも屋らしいよ」

(何でも屋?)そんな店、別に普通ではないのか。
そんなことを思いながらもう一度その話に耳を傾けた。

「でね、その『パンダヒーロー』って言う名前はお店の名前じゃないんだって」

「じゃあなんなの?」言い出したメンバーの隣に座っていた背の低い女子が聞き返す。

「何でも、その何でも屋で働いてるただ一人の人の名前らしいよ。だけど、素性はハッキリしていないみたい。誰も素顔を見た

ことがないって聞いたよ」

素顔を見たことがない?誰も?益々俺は混乱してきた。

「あー、それなら私聞いたことある」背の低い女子の前に座っている女子が口を挟んだ。

「『パンダ』って言うくらいだから目の下に黒い模様かいてるんだって、パンダみたいな。後、これはあんまりよく知らないん

だけど金属バットを左手に持ってるんだって・・・」

「何それ不審者じゃん!」ガヤガヤと騒がしくなった向かいの席の様子など目に入らず、俺は『パンダヒーロー』という言葉が

頭に焼き付いて離れなかった。


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———ということで今に至る。

高々都市伝説だ。

そう思えば思うほど考えてしまうのが人の性。俺の頭から『パンダヒーロー』という単語は消えてくれる様子ではなかった。

気がつけば、誰かにぶつかってしまった。ボーっと考え事をしながら歩いたのがいけなかったらしい。前を歩いてくる集団に気

がつかなかった。
(あ、やべ)謝ろうと顔を上げると運がよくなかったらしい。ぶつかったのはガラの悪そうな集団だった。
「オイお前」本当に今日はついていない。

ぶつかった男は、体格のいいいかにも不良じみた集団の中の一人だった。

全身からじっとりと気持ちの悪い汗が吹き出る。しかも辺りは人っ子一人いない。

「何ぶつかった上にガンつけてんだ」ぶつかった男が低い声音で脅すようにこちらに話しかけてくる。
「い、いえ俺は別に・・・・」すぐにでも逃げ出したい。でも周りは2,3人の不良らしき男に囲まれ、逃げる事は絶対不可能だろう。

「文句アンのかぁ?!ああん?」胸倉を掴まれ、殴られると思ってぎゅっと目を閉じたそのときだった。

「おい」後ろから自分たちに声をかけてくる人物が。声の様子からして、女の人だとわかった。

その人は、ジャージのフードをかぶり、そのフードには熊の耳らしきものがついていた。左手に棒のようなものを持っている。そ

う、まるでバットのような————

「ねぇちゃん文句あんのか?!」近くにいた坊主頭の男がその女性の顎をクイッと上げて睨む。

その時だった。

“ガコッ”何か硬いものが地面に叩き付けられるような音がして、拓実は恐る恐る音のした方向へと振り返る。

そこには、壁にもたれて座り込み、震え上がったさっきの男と、バット状の物を男の体すれすれのところでかわして男を見下げる

あの女の人がいた。

「なっ・・・・てめっ」拓実の胸倉を掴んでいた男は拓実を離しその女の人の元へと詰め寄った。

「このアマっ、ケンジに何してくれてるんだ!」

その女の人はゆっくりと振り向き、地面にめり込んだバットらしき物を肩のところまで引き上げた。

「夜道で人を恐喝する輩に言われたくないね」その目は挑発的だった。

不良が女の人野方に掴みかかったその時—————


バァァン!!!


大きな音がして、辺りは煙に包まれていた。

「こっちだ」

拓実は誘導されるがまま路地裏に案内された。

「大丈夫か?」その人の風貌は————

パンダのような目の下の化粧

グレーの明細の熊耳つきジャージ。

そして———金属バット。

ポカーンとしていると、一枚の紙が投げられた。

「ほら」

「あ、あのっ、名前は———」

そう聞くと無表情のまま女の人は言った。

「パンダヒーロー」と。

「借りは返せよ」そう言って女の人は夜道に消えていった。

拓実の手に一枚の紙を残して————


***


第1話終了!