二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- 【ボカロ神曲で小説作ってみた】パンダヒーロー ( No.10 )
- 日時: 2012/03/19 17:37
- 名前: 菜の花 (ID: TaF97fNV)
- 参照: これ書いてる時は「千本桜」聞きながら書いてたよ、私w
***「パンダヒーロー」第4話***
「なぁ、頼むよ」男は、空になった林檎(袋)を支配人に差し出す。
「駄目だ」支配人は首を縦に振らない。
これで何回目の交渉だろうか。麻薬漬けの男にはそれはわからない。
溜息をつく。
「もう、どこにも行けないな」テーブルの上に注いであるウォトカを一口飲んで男はつぶやいた。
κ κ κ κ κ
海崎が店に来て丸一ヶ月経った頃、拓実はパンダヒーローの仕事にも慣れてきた。だがこのパンダヒーローという仕事、どうも
何でも屋とはかけ離れていた。
この前の仕事だって、『カップルの破局を手伝ってくれ』だの、『公園の遊具の上り棒を全て上に上げろ』だの、まともそうな
仕事など無かったような気がする。(後者は完全に“愉快犯”という奴じゃないか)
最初こそいい顔をしなかった拓実だが、ここまで続けたのはやってみると思いの外好奇心が湧いて飽きないからだ。
今日は、パンダヒーローではなく普通の店の雑用である。
「おい」不意に大熊が拓実に声をかけた。
「今日だぞ」———今日、海崎の仕事の日だ———実は、結構楽しみだ。
拓実はそのまま少し今夜が楽しみだ、と思いつつ掃除を続けた。
κ κ κ κ κ
深夜———今回の仕事が実行される。
「さむっ・・・」今は1月の下旬だ。裏がボアのジャージ(やはり迷彩の耳付きのジャージ)を着込んで皮手袋をしても、まだ
寒い。
(ちなみに大熊は同じく迷彩でモコモコとしたジャージの下に分厚めのカラータイツ、白いファー帽を被っていた)
「乗れ」大熊はかなりボロそうなグレーの軽自動車に拓実を乗り込ませると車を発進させた。
少しばかりわくわくしながら疑問に思う。
———今日の仕事は何なんだ?
実は、拓実は大熊から今日の仕事の依頼内容を聞いていない。聞こうと思ったが「後で説明する」といつも言われ、今日の今日
まで聞けていなかった。
「あの・・・今日の仕事ってどんな物なんですか?」そう尋ねると、大熊が前回海崎から渡された封筒を差し出した。
中を開けてみると、一枚の紙が入っている。書いてあったのは———
『“カリバ二ズム”という店に行ってトランクを受け受け取り、
以下の場所に置いておいてくれ』
裏には、地図が書かれている。
だがしかし、そんな事はどうでもよかった。問題なのは、用件だ。
———まさか、ヤバイものを運ばされたりとか———
ひやりと冷たい汗が出る。
(いや、そんな事ありえねー)そうやって、無理矢理ながら自分を落ち着かせ、何気なく窓に目をやった。
外の景色は街頭も
何もにも無いので真っ暗で、それどころか建物らしい建物は無い気がする。
一体何処を走っているんだ、と疑問に思いながら車に揺られていた。
15分後———一軒の店(と言ってもこれは店らしくない。どちらかと言えば廃墟に近かった)の前で大熊が車を止めた。
車から出ると突き刺さるような寒い風が頬を撫ぜた。
でもそれよりも先に目がいったのは————何も無い所でドアを開けた瞬
間に飛び込んできた、ネオンの光と酒の香り。
「来たか」小さめの酒瓶を片手に持った男がドアから顔を出した。
大熊が車に鍵をかけ終え、つかつかと男の元へ歩いていった。
「私が店長だ」そう言って、男の前に依頼書のような物を突き出す。
「よし、中に入れ」後ろから支配人が一礼をし、拓実達が店に入るとドアを閉め、別のテーブルへと向かって行った。
店の内装は、まるでカジノだった。ポーカーをする客、ジャラジャラというコインの音。拓実のすぐ横をバニーガールが通り
過ぎていった。
騒がしすぎて、少々フラフラする程である。
***