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朝。

拓実は自分の家で、朝食のトーストを口にしかけていた所だった。

「やっだぁ、最近子供の誘拐事件が増えてるみたいよぉ。アンタも気をつけなさい」キッチンでは母：由美子（ユミコ）が拓実の

中学１年生の弟————直樹（ナオキ）にそんな事を言っていた。

「・・・・・・」反抗期真っ只中の弟は何も言わなかった。

（俺も直樹もそんな年じゃねぇんだからさー・・・・）と、何やかんやでその事件が少し気になったので、テーブルの

端に置いてあるバターの容器に手を伸ばしたついでに、母が先程まで読んでいた新聞に目を向けた。

『昨日午後未明、東京都ｘｘｘ地区で大熊李沙ちゃん（５）が行方不明になったと警察に連絡が入った。』

「———なっ」大熊なんて苗字、そうそういない。

もしかして————————拓実の顔に、冷や汗が滲んだ。



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