二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Re: 【ボカロ神曲で小説作ってみた】パンダヒーロー ( No.52 )
- 日時: 2012/03/22 17:42
- 名前: 菜の花 ◆GmIm2XHxIQ (ID: TaF97fNV)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel7/index.cgi?mode
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いつもそうだ。
家の事やカナの事で、放課後友達と遊べた事なんか—————あったけ?
いや、無かったな。
第一、友達と遊びに行くのにはお金がかかる。家には、そんな余裕など無い。生活費等を出してもらっている祖父母にも、そんな
我儘(ワガママ)を言うなんて出来るはずが無かった。
「・・・・・・帰るか」そうこぼし、駅のホームを出た。私は家から高校まで比較的近いので、いつも徒歩通学にしている。
とぼとぼと一人帰りながら、冷蔵庫空っぽだから何か野菜とか買っとかなきゃな、なんて帰ってしなければいけない仕事の事を考
えながら何時もの帰り道を歩いていた。
20分後、スーパーから出て家の近くの公園を通りがかったときだった。
公園では、幼稚園の子供が保育士に連れられ散歩に来ていて、幼い子の甲高い声が五月蝿い程に聞こえてくる。
(元気だな〜)幼い子供を見て少し微笑ましい気持ちになった矢先、すぐ後ろから車の急ブレーキの音と、何かが車とぶつかった
ような、鈍い音が和やかな住宅街に響いた。
キャーッと言う保育士や子供の喚き声が飽和して、周囲は瞬く間に五月蝿くなり、突然の事に唖然としていた私も、ハッとなって後
ろを向いた。
「わ・・・・・・」見た事もない光景だった。普通車が走る事の無い歩道に突っ込んだグレーの車は、電柱にぶつかり悲惨な状況になって
いる。
車が走っていたであろう車道には、一人の男性がうつ伏せに倒れていた。血は出ていなかったが、意識は無いようだ。
「だ、誰か救急車ッ」一人の女性保育士が大声で叫び、私はほぼ条件反射的に公衆電話ボックスの中に駆け込んだ。
急いで『119』のボタンを押す。
———————そこから先はよく覚えていないけど、救急車が来て私も一緒にその男性と乗車した、と言う事は鮮明に覚えている。
病院に着いても何処か心配でずっと病院の待合室で座っていた事も。
帰り際、そっと病室を覗いたことも。
別途に横たわる男性の顔は、とても穏やかだった。
ホッとしたと同時に、この男性に同情以外の感情を持った事も。
それが、『好き』という感情だ、って事は日の経たないうちに分かったし、この日の事はずっと忘れなかった。
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