二次創作小説(映像)※倉庫ログ

【ボカロ神曲で小説作ってみた】パンダヒーロー ( No.72 )
日時: 2012/05/30 21:04
名前: 菜の花 ◆GmIm2XHxIQ (ID: TFYTRxC.)
参照: 定期テスト終わったなう。嗚呼、会いたかったよPC!

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病院の待合室には、私達二人のほかにも、沢山の妊婦や子連れ、女性達が押し寄せていた。

「大熊さん」

1時間も待たされてから、やっと名前を呼ばれた。

オレンジ色で薄っぺらいクッション付きの、病院特有であるあの香りに包まれたソファを立ち上がったその瞬間、前の席に座って

いる女性が抱いた、乳児と目があった。

乳児は私からずっと目を離さない。

「裕香、どうしたんだ?」

ジャンさんに顔を覗き込まれ、ハッと我に返る。

「あ、うん」

赤ん坊の無垢な視線が妙に痛く、なんでもなかったかのようにジャンさんに目を向けた。

               『どうするの』

「・・・?」

不意に、誰かから話しかけれた錯覚に襲われる。

               『どうせ、ままはやさしいから、わたしをころすなんてできないんでしょうね』

声は、先程の赤ん坊から発せられるように思えた。

その場で赤ん坊のもとまで引き返し、赤ん坊を凝視したい衝動に駆られたが、気持ちとは裏腹に、自分の足はずんずんと診察室に

向かっていた。

               『わたし、ままといっしょにいたいの。でも、わたしがうまれても———』















               『ほかのひとにあずけてわたしをそだててもらうしか、なすなんてすべ、きっとないから』





我に返ると、先程の待合室と全く同じ席にジャンさんと二人で座っていた。

時計の針は、いつの間にかかなり進んでいる。

どうやら、私は知らない間————ちょっと前に————診察は終わったらしい。

診察のときの記憶はないくせに、さっきの赤ん坊が口を聞いたような錯覚だけは、つい5秒前にあった出来事のように、生々しく

感触のような何かが残っていた。

(『どうするの』、か)

まぁ、診察結果は聞かずとも知っている。

ジャンさんは今、私の隣にいるんじゃなくて、カウンターで診察台を払っている最中だ。

「・・・・どうしようかな」

自分では分からない。

仮に、自分で答えを出したとしても、それは単なる利己的な感情の塊でしかないだろう。

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