二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Re: ワンピース-聖職者〜ブルー ルージュ ノワール〜 ( No.126 )
- 日時: 2012/04/02 14:41
- 名前: 勇騎那 (ID: uyTg3jXr)
海賊女帝ボア・ハンコック
あの後、戦士たちを振り切ったゴドリックはルフィを捜索中。町の人影すら消えてしまっている。ペリドットのかけらも見つからない。
闘技場の方が騒がしい気もする。
「何かあったか……?」
気になるのが早いか足が歩を進めていた。カツ、カツ、ローファーが石畳の道にぶつかるたびに音を奏でる。
闘技場の裏に来ると、誰かがいる気配がした。
「そこにいるのは誰だ?」
「…………気づいていたんですか」
瞳は蒼と赤のオッドアイ、髪をポニーテールにしてあるが、ほどいていれば腰くらいまで髪はあるだろう。赤と青の半そで、スカートと短パンで、首にはエメラルドが埋めてあるロケットペンダントが下げられている。腰にはゴドリックと同じように剣がさしてある。
「おれはフィオレータ・ゴドリック。女だ。お前は?」
「ジルファー・グランディータ・コルティス」
「偽名は聞いてない」
「……!!」
「本名を名乗れ」
「………ショコラ・シルファリオン・ア・パラ・グランジェス・ミカエル…です」
「長いな。ショコラでいいか?」
「構いません……」
ショコラは闘技場のほうにオッド目をやる。ゴドリックも同じ方向にルビーを開いた。
「あいつ何やってんだ……?」
「お知り合いですか?」
「知り合いも何も、船長だ。おれの」
蛇の形をした縄に縛られ、闘技場のてっぺんに足をクロスさせている背中が隠れるほど長い黒髪の女に睨まれている。その背後に控えるでかい若草色の髪に目、蛇の下が口から除く女、かっぷくのいいキャラメルカラーの女も同じく。
「では聞くが”男”…………そなた何の目的でどうやってこの島へ入った…………?」
「だから!おれもよく分かんねェんだよ!!あっという間に空飛んで、気が付いたらここにいたんだからよ!!」
「嘘をつけ。そのような滑稽話でごまかされはせぬ。狙いがあるはずじゃ…?」
「狙いっつーなら船をくれ!!送ってもらうのが一番うれしいんだけど……。とにかく!!おれは早くここから出て、行きてェ場所があんだよ!!お前一番偉いんなら頼むよ!!」
「左の少女に同じく」
ルフィから見て右の位置から歩を進め、両手を後頭部に回して元結をほどきながらついでにと言わんばかりに器用にルフィの縄を解いて見せた。
「ゴドリック!!」
「そなた…!!”男”が二匹も……!!」
「獣扱いとはひどいな」
「蛇姫様……」
いつそんな時間があったのか、ショコラがハンコックの隣に立って何かを耳打ちした。それを聞いたハンコックは群青の目をわずかに見開いた。水晶体が小刻みにプルプル揺れている。
「皆!!闘技場を後にせよ!!」
「「「「…?は、はい」」」」
九蛇の戦士たちは???と思いつつ立ち退いていった。
闘技場ががら空きになると、ハンコックは赤いヒールの音を響かせながら無駄に長い階段を下りてきた。ルフィとゴドリックを見据えると、2人をふわりとマントに包み込むように抱きしめた。
- Re: ワンピース-聖職者〜ブルー ルージュ ノワール〜 ( No.127 )
- 日時: 2012/04/03 15:42
- 名前: 勇騎那 (ID: QpE/G9Cv)
さっきちらっと参照見たら…!!!
1000こえとった———!!
感謝感謝です〜〜〜〜〜!!!
今まで読んでくださった方、これからも読み続けてくださいまし
一見さんお断りやないですよ〜☆
- Re: ワンピース-聖職者〜ブルー ルージュ ノワール〜 ( No.128 )
- 日時: 2012/04/03 16:07
- 名前: ショコラ (ID: sopKm/an)
おめでとうございます!!
- Re: ワンピース-聖職者〜ブルー ルージュ ノワール〜 ( No.129 )
- 日時: 2012/04/04 21:15
- 名前: 勇騎那 (ID: emiPMG4Z)
ハンコックが離れた。
ルフィとゴドリックに背を向けて長い長い階段を上って玉座に座りなおし、二人を見下ろした。
「成程、ショコラの申したことは誠であったか……。そなたらが女だというのは」
「人の性別くらい正しく見分けろ。おれはどうでもいいが、うちの船長は特にな」
「フッ…。そなたが言うと説得力が違う」
挑戦的な微笑をゴドリックは落としてみたいと思った。右手に握った元結をジャケットの内ポケットにしまった。
「ゆけ!!マリーゴールド!!サンダーソニア!!」
ハンコックの背後に控えていた二人のゴドリックよりもずっと背の高い女が闘技場に飛び降りた。それをルフィとゴドリックは見上げた。
「女であろうとただでこの島におらせることはできぬ。ここは戦士の国アマゾン・リリー。精一杯戦って散るがよい。わらわたちが見届けてやろう。…戦士たちを呼び戻せ!!」
ハンコックの一声ですべてが動き出した。闘技場の円状に造られた観客席に女たちが戻ってきて、ソニアとマリーは大蛇の姿になってルフィとゴドリックを取り囲んだ。
「こいつら、能力者か……」
「「「「キャー!!!」」」」
「妹君たちの蛇穴の舞が始まる!!」
「なんて荘厳なお姿〜〜〜〜!!」
「これこそが怪物ゴルゴンを倒して得た強き戦士の証!!」
「呪われた妹君たちもまた素敵〜〜〜!!!」
呪われた……?
ゴドリックの脳内には疑問符が浮かんだ。それはルフィも同じだったようで二人とも斜め60度に首をかしげている。
「何言ってんだあいつら。どう見てもなんかの実食ったんじゃねェか」
「それはまず間違いない。恐らく………彼女たちは、本物の能力者—おれたち—を見たことがないんだ」
「え!?ゴドリック能力者だったのか!!?」
「数十分前に実を食ったばかりだ。外野の声は無視して、何も一切耳に入れるな」
ルフィはパキぽきと指の骨を鳴らした。無機質な音が旋律を歌う。
ゴドリックは”エトワール”を鞘から裸にした。プラチナとルビーが共鳴する。
「ウフフ………。丸呑みにしちゃおうかしら………?」
「それとも絞め殺しちゃおうかしら?」
- Re: ワンピース-聖職者〜ブルー ルージュ ノワール〜 ( No.130 )
- 日時: 2012/04/05 15:37
- 名前: 勇騎那 (ID: lV5SbBSQ)
「とにかく、お前らをぶっ飛ばせばいいんだな?」
強気なルフィに九蛇の戦士たちは笑いをこらえきれなかった。
「やだ!!なんて言ったの!!?今あの子!!!」
「妹君たちを倒すつもりでいるわ!!」
「おもしろい!!死刑が決まって笑いを取るなんて男っておもしろい!!」
「教えておくけど、客席と闘技台の間の溝には落ちないほうがいいわよ。落ちてもいいけどそこは剣で埋め尽くされているから」
「そうか、忠告をありがとう…。だが、今は目の前の敵を倒すことだけを考えたほうがいいぞ。物を言うのは結果だけだ………!!」
それを合図にマリーゴールドの鉾がルフィを蝕もうとする。
ルフィは持前も身のこなしでそれをかわした。
マリーが何かをはきだした。
「何だ!?毒か…!!」
「猛毒よ。残念」
断続的に撃ち出される毒をよけて、何とか攻撃態勢に入った。
「ゴムゴムの〜〜”スタンプ”!!」
右足のけりを繰り出した。
マリーはルフィの足を手のひらで弾き返した。
「伸びすぎた牙は……アクセサリーにちょうどいい」
一時の角度に”エトワール”の切っ先を傾けて黒と紫の光が集う。
「死夜—モルト・ソワール—」
その光は鎌を形成し、サンダーソニアに向かってずんずん突き進んでいく。
「スネークダンス」
ソニアは攻撃のすべてを仕組んだように華麗にかわした。
「ケハハ…。おれ、剣捨てようかな?」
「あら、剣士が剣を捨てていいの…?」
からかうようなソニアにゴドリックは鞘に剣をしまいながら突き放すように言った。
「おれは自分を剣士だと思ったことはない」
「そう……」
ソニアはルフィにしっぽを巻きつけて身動きを取れなくした。
「おい!!何しやがんだ!!離せ!!」
ルフィがわめいても姉妹は聞き入れる様子もない。
「”蛇叉”バジリスク!!!」
綺麗なルビーが血に飢えたように濁り、牙と舌がむき出しになってぎらつき、秘めるところなんてない大蛇がゴドリックの背中に召喚された。
「嘘…!!?バジリスク……!!?」
「空想上の怪物じゃなかったの!!?」
戦士たちはがくがくとざわめきだす。
こんな力を秘めていたのか……!?
いったいどうなってしまうんだろうか
何をする気なんだ…!!
誰もがそう思っていた。だがゴドリックは普通の人間と感覚が違う。
「離せって言ってんだからさっさと離さんかい!!!おれの嫁に何してくれとるんじゃ!!!」
……ほらな?
ルフィと口をそろえて、せ〜の!!
「「離せ〜〜〜〜〜!!!」」
——ギイィ…ン…!!
バタ!!バタ!!っと戦士たちが次々倒れていく。
「今の……”覇王色”の覇気…………!!」
「嘘でしょ………!!数百万人に一人しか身に着けられない選ばれた者の覇気………!!」
ソニアは驚愕に染まったままゆっくりルフィを降ろした。
「何だ〜!!物分かりいいなお前ら!!」
「覇王色—これ—を使える人間なんて………姉様のほかに見たことがない………!!」
「この子たち……人の上に立てる、”王の資質”を持っているんだわ………」
ハンコックは闘技台を見つめながら爪を噛んでルフィとゴドリックを見下ろしてぼやいた。
「わらわと同じ覇王色………。どういうことじゃ………?ただの小娘ではないのか………あ奴等………!!」
ちょっとそういう気分になったゴドリックはバジリスクをしまいざまに、髪をスカイブルーにした。
「姿が変わった……!?まさか…”七変化”が使えるの……!!?」
「何者なの……!!?あの子たち一体……」
「ゴチャゴチャうるせェな。何なんだよ?」
「そんなに俺が美男だっていうのか?」
「絶対それじゃねェだろ!!!」
覇気を放出したことに気付いてない様子のルフィとゴドリック。
「覇気を使ったことに気付いてないの………?」
「自分じゃ制御できてないのね」
「お前ェらが強いのはよーく分かった!!」
「続けよう………。試合は後半戦からだ………!!」
- Re: ワンピース-聖職者〜ブルー ルージュ ノワール〜 ( No.131 )
- 日時: 2012/04/06 08:20
- 名前: サリー (ID: ZjIbjScL)
- 参照: http://www3.atpaint.jp/kakiko/src/1332583345904.jpg/img/
1000おめでと〜やっぱりチラッと見ちゃうよね〜
はい、またアリスの設定足しま〜す!
*2年後
・身長→0.01cm伸びる(自慢する)
・サンジと同じ鼻血病になります。
ちなみに血液型はネプチューンと同じ
*おまけみたいな
・まえに「たまにサニー号に顔を見せる」的な事を書きましたが、いつも出してる事にしてください。
そして最終的には仲間に入れてやって下さい。
PS:あれ?アリスどこ?
- Re: ワンピース-聖職者〜ブルー ルージュ ノワール〜 ( No.132 )
- 日時: 2012/04/06 08:46
- 名前: 勇騎那 (ID: eYRHtZjC)
戦闘シーンが終わったらまた出すよ!!
- Re: ワンピース-聖職者〜ブルー ルージュ ノワール〜 ( No.133 )
- 日時: 2012/04/06 12:50
- 名前: 勇騎那 (ID: z9tQTgtp)
ヘビヘビ×2対ゴムゴム+ユメユメ
「恐れることはないよ……マリー」
「えぇ」
「ギア”2”!!」
両足を180°開き、体から蒸気機関車のように煙を吹いているルフィ。
「強大な”覇気”も、制御できなきゃただの気迫!!”蛇髪憑き”ヤマタノオロチ!!」
若草色の髪が蛇そのものの形になった。
ソニアはルフィの動きを読んで変形した髪の毛でルフィに襲い掛かった。ルフィはギアでスピードが増し、難なくよけた。
「うっ!!」
ソニアの首に左腕をかけて闘技台にズダン!!とたたきつけた。その反動から髪の毛の変形が解かれた。
「青太陽—ソレイユ・ブルー—!!」
ピストルの指先からマリーに青い稲妻がかすった。
隙ができたマリーに、よける隙も与えずゴドリックが畳み掛ける。ひゅっと飛び上がり、身長の倍以上の、いや、もっとあるだろう体格差があるにもかかわらず、マリーの胸元を蹴り倒した。
「ああああぁ!!」
蛇姉妹がここまで圧されるなど想像もしていなかった戦士たちは呆然として闘技台のルフィとゴドリックを数倍にも見開いた目で息をのんでいる。
「ソニア………!!マリー………!!そなたたち、一体何を遊んでおるのじゃ………!!」
ぎろり、それがぴったりなほどにハンコックが妹達を睨んだ。
「あ、姉様………」
「ご…ごめんなさい姉様……!!すぐに………!!」
ゴドリックから見て右側にマリー、左側にソニアで囲まれた。
「逃げ場なんて与えないわよ!!!”蛇髪憑き”ヤマタノオロチ!!!」
一度溶けていた変形がまた蛇の姿をなした。
「燃えた…!」
マリーの体が炎に燃え盛った。
「”蛇髪憑き”サラマンダ!!!」
「これ以上ない攻撃!!」
「どんなにすばしっこくても絶対逃げられない!!」
「ゴムゴムの…」
「夢—フリート—」
二人して闘技台に寝そべるように倒れながら…
「JET銃乱弾!!!」
「墓場—ホーフ—!!!」
黒い闇が炎と大蛇を食らい、ゴムがオロチの牙をもぎ取った。
ルフィが足を延ばして蛇姉妹の足元を—蛇に足はないが—蹴った。バランスが崩れた姉妹は前方に倒れこんだ。その時、互いの体がぶつかってしまった。
「ぎゃああああぁぁ!!!熱い!!!」
「しまった!!ソニア姉様!!早く離れて!!」
ソニアは一刻も早くマリーの炎から遠ざかろうとする。
「え!?引っ張られる!!ソニア姉様に引っ張られる!!」
しっぽがいつの間にか固く結ばれており、その近くで喜び、ハイタッチをするいたずら仕掛人二人…
「ああ!!?しっぽが!!いつの間に!!?待って姉様!!私まで!!!」
「あああああああぁぁぁ!!!」
マリーから離れようとするソニアに、待って、は通用しない。
「ソニア姉さま!!危ない!!そっちは剣の溝!!客席につかまって!!」
マリーの言うように客席につかまったソニア。くすぶった火でマントが焼けて衣服がはだけていく。
「あ!おい!ルフィ何して……!!」
ソニアの背中にルフィが飛びついた。
「あづっ!!」
「男が追い撃ちをかけてきた!!」
「非道な!!ソニア様を串刺しにする気よ!!」
九蛇の戦士たちは次々にルフィに罵声を浴びせる。
「動くな!!」
「生意気な……!!マリー!!今のうちにこいつを!!」
マリーは動こうとしない。
「何をしているの!!?マリー!!!」
「……無理よ、ソニア姉様。私たちは今………その子に守られてるから………」
「見て!!サンダーソニア様の衣服が燃えて、背中がはだけてる!!」
「あの男が離れたら”ゴルゴンの目”が露わに!!」
・・
「おまえらこれ、死んでも見られたくないんだろ?だから…動くな」
「”武ヶ”は終わりじゃ!!”ゴルゴンの目”が晒される前に皆!!会場を出よ!!」
「大変!!闘技場の外へ!!」
「石化してしまうわ!!」
「ゴルゴンの呪いよ〜〜〜!!」
我先にと戦士たちは闘技場を出て行った。ルフィ、ゴドリック、ショコラ、九蛇三姉妹が闘技台にいる。
「私は今、戦っていた敵だぞ………。なぜ庇うのだ………」
「お前らが見られたくねェもんと、おれたちとの勝負は別の話だ」
残っていたニョン婆とアリスは闘技台に目を向けながらぼやいた。
「ニョン婆様…”ゴルゴンの目”って……何のこと……?」
「そなたにも話す。……九蛇城へ来るがよい」
その中でただ一人、ハンコックだけが頬を濡らしていた。
- Re: ワンピース-聖職者〜ブルー ルージュ ノワール〜 ( No.134 )
- 日時: 2012/04/06 13:49
- 名前: 勇騎那 (ID: z9tQTgtp)
「その人は、お前にとって大切なだけだ。…………おれにとって大切じゃない」
- Re: ワンピース-聖職者〜ブルー ルージュ ノワール〜 ( No.135 )
- 日時: 2012/04/06 17:59
- 名前: サリー (ID: ZjIbjScL)
- 参照: http://www3.atpaint.jp/kakiko/src/1332583345904.jpg/img/
あ、見てたのか!
成程〜〜!
- Re: ワンピース-聖職者〜ブルー ルージュ ノワール〜 ( No.136 )
- 日時: 2012/04/06 18:45
- 名前: 勇騎那 (ID: j./sPzSr)
あの死闘の後、ルフィ、ゴドリック、ショコラ、アリスは九蛇城へ呼ばれた。
「あなたには、お礼を言わなきゃね。ありがとう」
「いいよ〜別に。礼なんて食えねえじゃねえか」
「食うこと前提で返すなよ……」
ソニアに礼なんて食えねえと返したルフィに静かにゴドリックが呆れつつ言った。
「背中のものを見られたら……私たちはもう、この国にはいられなかった」
「そんなに大きなことなんですか?」
ショコラが問うた。
「…………」
マリーは返事をする代わりに沈黙を保った。それをショコラは肯定と取った。
「入ってよいぞ」
「?」
カーテン越しに凛としたハンコックの声がした。
「カーテンの奥じゃ」
「メシかな?……おい、裸になってどうしたお前ェ」
「相変わらず無礼な反応じゃ」
食い物があることを思っていたルフィはカーテンを開けて間抜けなリアクションを取った。上半身裸になったハンコックの姿があったからだ。
「まあよい」
ハンコックは右腕をうなじに回して、長い黒髪を背中からよけた。
「(あの烙印………!!)」
ゴドリックの記憶の片鱗の中に蘇ってきた。
その背中には、りゅうのひずめの烙印が刻まれていた。
「このマークを……そなた、どこかで見たと言ったな……?今一度よくあらためよ」
- Re: ワンピース-聖職者〜ブルー ルージュ ノワール〜 ( No.137 )
- 日時: 2012/04/08 18:43
- 名前: 勇騎那 (ID: rZ9NVVGG)
忌まわしき過去
「さっさと答えよ……!!…あまり見せたいものではない」
ルフィは少し考え込むそぶりを見せて—実際はあまり考えていないが—あっけらかんとした顔で言い切った。
「やっぱおれが知ってんのとは少し違うみてェだ。おれの友達にハチっていう魚人の奴がいて、そいつのおでこに似たマークがあったから勘違いした。そのマークは知らねェや」
「お前……おれと離れた後どこ行ってたんだ………」
「いやいや諸事情ありまして」
スカイブルーのゴドリックに呆れられる。本来これはナミの仕事だ。
「知らにゅのなら話してやるがよい」
ソニアとマリーが後方をクリっと振り返ったところに、ニョン婆が侵入していた。
「またどこから………!!」
「素直になれ蛇姫。その者達の器の深さ……しかとその目で見たはずじゃ……!!」
「大丈夫………。安心して全てを吐き出せ………」
ハンコックは唇を噛んだ。
「お主ら、海賊モンキー・D・ルフィとフィオレータ・ゴドリックで間違いにゃいな」
「数時間前にそう名乗ったしな………」
「あァそうだ!!なんでおれのこと知ってんだ……!!?」
「普通知ってるでしょ!!3億の首なんだから!!」
アリスに言われて自分の懸賞金額を思い出したルフィ。そしてゴドリックがわざわざブーツを脱いでルフィに一発ゴン!!
「これだけ世間を騒がせておいて呑気なモニョじゃ…!!見よ!!こにょ新聞!!」
ニョン婆は手に持つ新聞をベシベシ叩いた。
「この女、中枢のすぐそばにあるシャボンディ諸島にて、天竜人を殴り飛ばすという神をも恐れぬ大事件を引き起こした張本人じゃ!!!」
「「「「!!!」」」」
ショコラは何も言わずに、九蛇三姉妹、アリスは驚きだけにくわっと目を見開く。
「天竜人を………!?」
「そんにゃことをしでかして……中枢の最高権力から逃げ切れている奇跡……!!事件の日から、たった2日で今こんな遠い土地へ到達している事実……!!いろいろと理解しかねる」
「だからよ〜突然すっ飛ばされてよ、おれはここがどこかってわかってねェ。それに、あの天竜人のことならおれは後悔してねェぞ!!案にゃろおれの友達に何したと思う!!?」
「では………天竜人に手を挙げたのは事実か………!?」
ハンコックの問いにルフィは無言でうなずいた。それを聞いてハンコックは泣きながら言った。
「まだ……そのような大馬鹿者が……この世界におったのか……!?命を顧みず天に挑んだ………彼らのような者が………!!」
「”彼ら”って?」
ソニアとマリーは苦しい顔で聞いている。
「そなたたちにはすべてを話す………。そなたの魚人の友が額に刻むシンボルの意味も」
「ハチのマーク?」
- Re: ワンピース-聖職者〜ブルー ルージュ ノワール〜 ( No.138 )
- 日時: 2012/04/09 14:28
- 名前: 勇騎那 (ID: rZ9NVVGG)
「これは……天駆ける竜の蹄、”天竜人”の紋章じゃ」
脱いでいた上着を羽織り、—正確には後ろにいたサロメが着せた—ハンコックは言った。
「”世界貴族”に飼われた者に焼き付けられる、一生消えることのない人間以下の証明………」
「”天竜人”……」
「わらわ達三姉妹は……その昔……世界貴族の奴隷だった……!!」
「お前らが奴隷……!?」
ルフィ、ゴドリック、アリス、ショコラも驚愕以外感じ取れなかった。マリーが肯定したように大きなことというのは本当のことだった。
「わらわが12の頃じゃ……。九蛇の海賊船からわらわたち3人…人さらいの手にかかり……売り飛ばされた。その先は……思い出したくもない忌まわしき過去………。生まれて初めて見る男も…恐怖の塊でしかなかった………!!」
「ウゥ……!!ウああああああ!!!」
「ソニア姉様!!落ち着いて!!」
耐え切れずに泣き出してしまったソニアをマリーが鎮めようとする。
ルフィとアリスは「もういいよ!!話さなくて!!」と言うが、ハンコックは胸の内を隠そうとはしない。
「記憶は始終蘇る……。酷いものだった……。何の希望も見出せず、死ぬことばかり考えていた」
「それ以上はいいから……!!」
アリスは半泣きになって訴える。
「だが、4年たったある日のこと……」
うつむいていたハンコックがすっと顔をあげた。
「世界政府が青ざめるような事件が起こった……。”天竜人”にはだれも逆らわない、それが鉄則の世界。あの”赤い血の大陸”を越えて”天竜人”の住む聖地マリージョアへ乗り込んだ者たちがいたのじゃ。
のちに’魚人海賊団’を率いる冒険家フィッシャー・タイガー、そしてロジャー海賊団船員プリンセス・アマンダ」
「ゴドリックの母ちゃんが!?」
「「「「「「ええ!?」」」」」」
ハンコック、ソニア、マリー、アリス、ショコラの視線が一時的にゴドリックに注がれた。
「続けてくれ…。母さんのことはそのあとだ」
「……分かった。多くの者を虐げるその町の奴隷解放のため、彼らは力の限り暴れまわった。タイガーは種族として人間を嫌ってはいても……奴隷たちに区別せず…何万人ものあらゆる種族を解放してくれたのじゃ………。わらわたちも、決死の思いで逃げた……!!彼らには、計り知れない恩がある……」
「タイガーは、多くの魚人たちを海へ解放したが、奴隷だった者達の烙印が消えることはない。世界政府を敵に回したタイガーは、その者達と”タイヨウの海賊団”を結成し…外海へ飛び出したのじゃ…。まるで呪いを掻き消すかのように……皆の体に刻まれた”天竜人”の紋章を……タイヨウのシンボルに変えて……!!!そなたがわらわの烙印を見間違えたというのはその魚人海賊団のタイヨウのシンボルであろう……?」
「ああ、そうだ。ハチのおでこにあんのはタイヨウみたいな形してる……。じゃ、あいつも奴隷だったのかな?」
「必ずしもそうとは限らないわ」
少し枯れた声でソニアが言った。だいぶ落ち着いて、今は床に横になっている。
「あれは、奴隷だった者とそうでない者の区別を分からなくするために刻まれるシンボル……。”タイヨウの海賊団”に所属していたことは間違いないでしょうけど」
「ちにゃみに、フィッシャー・タイガーはもう死んで、魚人海賊団はいくつかの一味に分裂したようじゃがの」
「一方で、アマンダとは事件の後も交流があった……。娘がいるということは今初めて知ったぞ」
「ばれたら政府が”穢れた血”の娘を放っておくわけない、母さんはそう考えていたんだ」
「……だからおれは、海に出る前に名前を変えて、フィオレータ・ロルシア・ゴドリックと名乗っている」
蠱惑的なゴドリックの声が部屋に静かに通る。
「”穢れた血”……ということは、父親は四皇”赤髪”のシャンクスですね……?」
ショコラに問われてゴドリックは頷くしかしなかった。
「いつかあったら惚気話でも何でも聞いてやるつもりさ」
- Re: ワンピース-聖職者〜ブルー ルージュ ノワール〜 ( No.139 )
- 日時: 2012/04/10 21:44
- 名前: 勇騎那 (ID: iaFUGUi0)
〜お知らせ〜
これからの話の脚本を練るために金曜日までお休みします。
読んでくださっている方々、申し訳ありません
土曜日には更新再開させます
- Re: ワンピース-聖職者〜ブルー ルージュ ノワール〜 ( No.140 )
- 日時: 2012/04/12 19:19
- 名前: サリー (ID: vWq4PSF8)
そうかぁー…。
ガンバレ!
はぁー…叶わぬ夢だがゴドリックとうちのカノンちゃんを対面させてみたい…
- Re: ワンピース-聖職者〜ブルー ルージュ ノワール〜 ( No.141 )
- 日時: 2012/04/14 11:03
- 名前: 勇騎那 (ID: BB67RT0Y)
「アマンダは……息災にしておるか?」
「2年前に心臓病で亡くなったよ」
「そうか……」
ハンコックは何とも言えぬ顔をした。
「…母さんのことだ。やり残したことがあるとか言って、まだ成仏してないんだろうぜ」
ほどいていた元結を高い位置でスカイブルーの髪をまとめながらゴドリックが言った。
「ちなみに、フィッシャー・タイガーはもう死んで、魚人海賊団はいくつかの一味に分裂したようじゃがの」
「これが、私たちの背中のマークと魚人のマークが似ている理由よ」
「そうか。分かった、ぼんやり」
分かっているのかわかっていないのかわからない返事をしたルフィにゴドリックが本日二回目のブーツで殴った。アリスにも心を持たないショコラにも呆れられる。
「奇しくもわらわたちは奴隷であった時、余興で口にさせられた”メロメロの実”と”ヘビヘビの実”の能力のおかげで、国を騙し、秘密を守ることが出来ている。……もしもあの時、そなたがソニアの背中を庇ってくれなければ、わらわ達はもう…この島にはおれぬところであった」
ぽろぽろと真珠のように大粒の涙でハンコックは頬とベッドのシーツを濡らした。
「誰にも…過去を知られとうない!!たとえ国中を欺こうとも……!!わらわ達は、一切の隙も見せぬ!!もう誰からも支配されとうない!!!」
脆い姉の姿を見てソニアとマリーも目にしずくをためている。
「誰かに気を許すことが恐ろしい………!!恐ろしゅうて敵わぬのじゃ………!!」
「しかし久しぶりよにょう」
ニョン婆が自分のヘビのとぐろに乗ってゆらゆら左右に揺られながら言った。
「そなたがこうも感情を表に出すにょは。近年では、もはや蛇姫様は氷にでもなってしまわれたのかと」
先ほどまでわあわあ泣いていたハンコックが顔の水をぬぐい、キッとニョン婆に食って掛かった。
「黙れ!!国を捨てた裏切り者!!」
「黙るのはお主じゃ!!天竜人から逃れたはよいもにょの、どうすれば島へ帰れるかと路頭に迷っておった傷心の小娘3人!!一体、誰がここまで連れて帰ってやったと思っておるニョじゃ!!すべて!!わしが外海で暮らしておったおかげではにゃいか!!」
「アマンダにわらわ達が連れてこられるまでは居場所すらわからんかったのであろう?小さな恩を振りかざしおって」
「ニョにを〜〜〜!?」
「わしゃいつも親同然にそなたらを見守って——」怒りの収まらないニョン婆をソニアとマリーが抑えた。
「そなた達は、奴隷であったわらわを蔑むか……?」
ハンコックはルフィたちの返答を待った。わずかな音符のない小節がが流れた。内心、穏やかとは言えなかった。
「何言ってんだお前ェ。だから、おれ天竜人嫌いなんだって」
「天竜人より何億倍もあんたのほうが綺麗だと思うぞ」
「私もそう思います」
「…あ、私もだから……!!」
久しぶりに心から笑った。
「そなた達を気に入ったぞ!目的地を言え、船を貸そう」
「「ホントか〜〜〜〜!!?」」
- Re: ワンピース-聖職者〜ブルー ルージュ ノワール〜 ( No.142 )
- 日時: 2012/04/14 17:47
- 名前: 勇騎那 (ID: BB67RT0Y)
仲間じゃない
ショコラとアリスは島を出て、ルフィ、ゴドリックは宴に参加し、ルフィはご馳走を風船のような腹になるまでたらふくたいらげている。
「名物?」
「海王類入りペンネゴルゴンゾーラ」
「おれにもよこせ」
横からゴドリックにメシをちょっとだけとられた。ゴドリックは十分に満足した。ルフィは女たちにつつかれたり、引っ張られたりしながらメシを頬張る。
「本当に伸びた—!!」
「やわらかくてゴムみたい!!」
「はい、もう終わりよ」
「え〜〜!?もう一回!!」
「ダメよキリがないじゃない」
我慢の限界は誰にでもあるし、能天気なルフィだってたまには切れる。
「食いづれェな!!何だ—!!人の体つついたり引っ張ったりお前ェら!!」
「仕方ないじゃない。あなたもう明日出航でしょ?記念にあなたに触りたいって子達にほら!!」
その女が持つ札には1タッチ20ゴルと書かれていて、指し示す方向には長蛇の長蛇の長蛇の列が出来ている。
「大人気!!」
「ルフィ様〜〜〜!!」
「ルフィちゃ〜〜〜ん!!」
「「お前!!何勝手に商売してんだよ!!」」
ルフィとゴドリックが綺麗にハモった!!女達はしつこくルフィを追いかけてくる。ゴドリックがバジリスクを召喚しかけているのに気付いていないようだ。
「いいじゃないルフィちゃ〜〜〜ん!!」
「や、やめろお前ら!!メシ食えねェ……!!」
————ボカア…ン!!!
壁を突き抜けてしまった。しかしそこにはルフィもゴドリックもいない。
「ゼェ…ゼェ…何なんだよあいつら」
「隠れて」
マーガレットがルフィとゴドリックをかくまってくれた。今は建物の屋根の上にいる。
「あ〜あ、食いモンこんだけしか持ってこれなかったよ」
屋根を飛び歩きながらルフィは言った。
ルフィは並大抵の人間でもゴドリックのさじ加減で言っても食える量ではない肉の塊をしっかり持っている。
「安心しろ。ついでに持ってきておいてやった」
ルフィが持っている肉より一回りは大きい肉をゴドリックは抱えていた。ゴドリックは船員になってからの期間一味の中で最もは浅いが、先ほどの宴でのルフィの食いっぷりを見てバクバクものを食う人種だということが分かったのだろう。
「おお—!!ありがとう!!」
「2人ともよかったね。仲間のところへ帰れることになって」
「なんかいろいろ迷惑かけて悪かったな」
「いいよ。可愛いから許す」
「ここに同志様がいた!!」
- Re: ワンピース-聖職者〜ブルー ルージュ ノワール〜 ( No.143 )
- 日時: 2012/04/14 19:25
- 名前: 勇騎那 (ID: BB67RT0Y)
「ニョン婆様!」
「どうしたニョじゃ?マーガレット」
屋根伝いに村のはずれにあるニョン婆のうちに来た。岩に固定されているその家は窓がなく、イスしかない。静かで暮らしやすいと言える。ゴドリックは腕を組んで壁に寄りかかり、ルフィは床に胡坐をかいて肉を食い始めた。
「ルフィとゴドリックが村の女の子達に大人気になっちゃって……」
「まァ、ソニアとマリーを倒したのじゃからな」
「よお!!豆バーさん!!」
「ここは村の片隅、ゆっくりしていけ。お主豆て!!」
豆というのはいささか無礼すぎではないだろうか。レベルアップして”エトワール”の柄をルフィの頭に振り下ろした。
「食糧持参か。茶でも淹れてやりなさい」
「は〜い」
「婆さん、新聞好きなんだな」
「”帆の帯”にはニュースクーが来んにょでな。なかなか手に入らにゅが、我が国の皇帝が”七武海”である以上この世の情勢くらい知っておかねばまずかろう」
「ひひぶかえ?でれは?<七武海?誰が?>」
「まずは口の中の物を食えよ……」
ゴドリックに言われてルフィは無理矢理にでも肉を飲み込んだ。マーガレットが淹れてくれた茶を啜った。
「蛇姫じゃ」
ルフィは沈黙。これは珍しいとゴドリックが胸の内でぼやいていた。
「えええ〜〜〜〜〜!!?あ、あいつ”七武海”!!?じゃ、戦ったらスゲー強ェのか!!?」
「そにゃた、海賊なのに分からんかったのか?」
「わ…分からんかった」
本当にわからんかったのだ。もともと疎いルフィには愚問だが。
「新聞など読んどらんのか?」
「「読んどらん」」
ハモリ№2
2人とも苦い顔だ。
「蛇姫がこの国の皇帝、並びに九蛇海賊団の船長となったのは11年前。あの子はまだ若かったが、たった一度の遠征でその首に8千万の懸賞金を懸けられた。もともと轟いておった九蛇の悪名と相まって、中枢の者達は即座に蛇姫を警戒し、”七武海”への加盟を勧めてきたのじゃ。だが、もはやその称号も剥奪の危機。……というにょも」
そのあとに続いたニョン婆の言葉をルフィとゴドリックはただただ純粋に驚いた。
「え〜〜〜〜〜!!?」
「”海軍本部と””王下七武海”が”白ひげ海賊団”と戦う!!?」
「何だよそれ!!どうなるんだよ!!?」
「ちょ、ちょっと待て!!一気に聞きすぎて訳が分かんねェぞ!!」
ルフィは茶をすすって、ゴドリックはもう腹がいっぱいだがひとかけら肉をむし食って気分を落ち着けた。
「呆れた者たちじゃ。無知にも程がある。ただ、その話はあくまで予測じゃ。しかし十中八九戦いは起こる。世界政府は打って出たのじゃ。白ひげは仲間の死を決して許さぬ男。それを知って尚、白ひげの優秀な部下ポートガス・D・エースの公開処刑を発表した」
ルフィが急に青を通り越して黒い顔をした。
「どうしたの?」
疑問に思ったマーガレットが問うた。
「エースが……処刑………!!?」
「何でも黒ひげという海賊が”火拳”のエースを撃ち取ることで新たに”七武海”に入ったとか……。中枢の者達は、突然手に入った大物、エースという海賊の身柄を大きく利用し、今か「婆さん!!」」
ルフィが叫んだ。そしてニョン婆の肩をがしっと掴んだ。その声は嘆きを帯びている。
「兄ちゃんなんだよ!!エースはおれの兄ちゃんなんだよ!!」
「何と!?真か!?そなたの兄!!」
「捕まってたなんて知らなかった!!”処刑”って何だよ!!もう逃げられねェじゃねェか!!」
「この戦いに白ひげが勝てば救われる道もありょうがのう」
「”火拳”の公開処刑はどこであるんだ?」
ゴドリックの問いにニョン婆は新聞を見て処刑の日時を確認した。
「海軍本部を有する町、マリンフォードの広場。一週間後とあるニョで今日から実質6日後か」
「すぐじゃんか!!ここからシャボンディ諸島まで何日かかるんだ?」
「まァ、一週間以上はかかると思ったほうがよいな」
「そんなかかったら、仲間達に会う前にエースのほうは全部終わっちまうよ!!じゃあ、ここからエースのいるところまでは?」
「幽閉中のインペルダウンじゃと、海賊船なら一週間、海軍船なら4日」
希望があった。
「何で?海軍の船はそんなに早いのか!?」
「世界政府専用の海流があっての、エニエス・ロビー、インペルダウン、海軍本部、変形した巨大な渦潮がこの3つの機関をつないでおるニョじゃ。それぞれの持つ正義の門と呼ばれる巨大な門を開閉することで海流を流し込み3つの機関へ到達できる」
「つまり、門が開かなければただ渦に乗り続けるだけ。海賊船などむしろ、その渦を避けて行かなければならぬゆえ、どうしても遠回りになる」
麦わら帽子のリボンの間から焦げ続けている小さい紙切れを取り出した。
「それ、ビブルカードだよな?」
「あなたが大事にしてた動く紙?」
「あれとは別の紙だ。これはエースの奴」
「別名を”命の紙”といってな、持ち主のおる方角と生命力を掲示する」
「じゃあ、そんなに小さいのは……」
ルフィが言わずともマーガレットは察しがついた。
「もらった時は10倍くらいあった」
「ええ!?」
「エースにはエースの冒険がある」
<出来の悪い妹を持つと……兄貴は心配なんだ>
砂漠の国でそう言っていた兄を思い出した。
「強ェ兄ちゃんを助けたいなんて、おれがエースに怒られるだけだ。悪ィみんな……おれちょっと寄り道してくよ」
- Re: ワンピース-聖職者〜ブルー ルージュ ノワール〜 ( No.144 )
- 日時: 2012/04/15 10:50
- 名前: 勇騎那 (ID: ET4BPspr)
「おれ、エースを助けに行きてェ!!!」
ルフィのその姿を見て一線の光がゴドリックの目の前を横切り、焼けるような激しい頭痛にさいなまれた。ルフィ達に悟られないように頭を押さえた。誰かの叫び声とともにニョン婆の部屋が消えて、ゴドリックはなぜか海ががちがちに固まった氷の上にいた。
そこで景色は途絶え、元のニョン婆の部屋にいた。
「(……!!見せるならもっとよく見せろ!!)」
先が見れないもどかしさにゴドリックはイライラした。
「それがどれほど無謀なことか、この戦争がいかなる規模のものか分かっているのじゃな?嵐の中にアリが一匹飛び込むも同じこと。何もできずただはじかれて終わりという結果もある!」
「どうなるかは関係ねェ!!とにかく行きてェ!!これをどっかで黙ってやり過ごすことなんて、おれには出来ねェ!!」
連続して焼けるような頭痛がして、閃光がゴドリックの目の前を走り去り、また氷漬けの海に立っていた。
今度はそれだけで終わらなかった。その周りの景色が映し出された。海兵たちと海賊たちが氷の海の上で大乱闘を繰り広げ、自分が立つ右にはしりもちをついて現実を受け入れられないといったルフィの姿があった。
頭痛が過ぎ去ると、ニョン婆の家だった。
「あい分かった。……今や世界一重要な囚人を助けるか。そのチャンスが万に一つもあるとすれば、幽閉されておる大監獄へ行くべきじゃな!!マリンフォードの処刑場へ連行されれば、”海軍本部”と”七武海”がそのガードを固めてしまう。とはいえ、お主の兄が現在最重要囚人である以上、監獄の警備網も確かな戦力が傾けられておって当然。中に侵入するなどまず不可能!!」
「着いてからのことより、着けるかどうかが問題だ。エースがそこに居る内に着かねェと、でっけェオールがあれば、おれ力いっぱい…」
ニョン婆が無茶を言う何が何でもとルフィを止めようとする。
「待て!待て!そんな力技では解決できぬ!!これもまた可能性は薄いが、今日までかたくなに断り続けていた”七武海”の強制召集……蛇姫がもし、これに応じてくれたら、それに乗じてお主を軍艦に乗せることが出来る」
「軍艦に?海軍の船があんのか!?じゃあおれ、あの女に頼みに行く!!ゴドリックも一緒にエースを助けに言ってくれるよな!?」
ルフィは仲間—ゴドリック—を信じて言っているのだろう。だが、ゴドリックが告げた言葉はあまりにも非情で、情熱的な赤い目とオレンジの髪に反してその表情は冷酷だった。
「なぜおれが行かなくちゃならないんだ?」
「え……!?」
「その人はお前にとって大切なだけだ。…………おれにとって大切じゃない。したがっておれが"火拳"を救う理由はどこにもない」
「でも!!仲間のためならお前は力を貸すって言ってたじゃねェか!!!」
「ああ、そう言った。だがこれは仲間のためじゃない……。仲間の兄弟のためだ。仲間にのためなら力を貸すが、仲間の家族にまで手は尽くしたくない」
ゴドリックがため息交じりに声を発して冷酷になればなるほどルフィの怒りは増幅されていく。
「じゃあ何で…」
「"おれの仲間になったんだ"とでも言いたげだな」
「あぁ、そうだ。……答えろ!!!」
「………名を挙げるために手っ取り早かっただけさ」
「それがお前の本性か………!!」
怒りでふるふる揺れる黒い瞳に”エトワール”の切っ先を向けた。
「おれを見抜けなかったお前が悪い」
「お前なんか……お前なんかもう仲間じゃねェ!!!」
「そう……」
それ以上何も言わずにゴドリックは風を起こして飛び去った。
「ごめんな……ルフィ……」
力となる透明のしずくと震えるその声は誰にも届かずに夜の海に消え入った。