二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Re: ワンピース-聖職者〜ブルー ルージュ ノワール〜 ( No.149 )
- 日時: 2012/04/16 20:49
- 名前: 勇騎那 (ID: 39P00L.2)
鳥は空を飛ばない
猛獣は森にいない
木の実は見たことのない物ばかり
輝く宝石が生まれる
まとう衣が輝きをより一層引き立てる
"妖精"が空を飛ぶ
"幻獣"が森を統べる
力を秘めた"ダイヤの原石"達が住む
外海にはない物がここにはある
島の職人のほとんどが牙をもつヴァンパイア
時折、魚人や人魚が海から上がってくる
この島には空想上のものがすべて実在し、詰め込まれている
ファッションと技術が常にどこの島よりも優れている
何が起きても不思議じゃない
島の中心の高台には大小さまざまな塔が立ち並ぶ城がそびえ立つ
その城には貴族も王族もいない
いるのは"ダイヤの原石"たち、そしてキャッスルバトラーと呼ばれる元海兵や元海賊
生きる覚悟がないのなら決して立ち入るな
ここは
世界政府絶対禁制”夢の社”リーゼ・ジオン
- Re: ワンピース-聖職者〜ブルー ルージュ ノワール〜 ( No.150 )
- 日時: 2012/04/18 21:29
- 名前: 勇騎那 (ID: pL7u1715)
今までは原作に沿って書いてきましたが、しばらくは原作から離れます
————…
毒リンゴに口づけて
島を切り裂くように拓かれた大路地の左右に所狭しと店が軒を連ねている。故郷の土は"ダイヤの原石"達や、ヴァンパイアや魔法使いたちに踏み固められて硬くなっていた。そのど真ん中をしずしず歩いていく。
故郷に海軍は絶対来ないが、漆黒の目に変えた。
適当な酒場に入り、まっすぐカウンターに座った。
「パルフェとバタービールをくれ」
昔から、腹が立っている時は、冷たいパルフェで頭を冷やして、無性にバタービールが飲みたくなった。
「はい。ただいま」
女店主は笑顔で快く店の奥に行った。
元結を外してオレンジの髪を降ろし、右耳につけたバジリスクの牙のピアスも、左耳のガーネットでできた涙型のピアスも、身に着けていたアクセサリーは全部外してジャケットの胸ポケットにしまいこんだ。
「お待たせしました。ご注文のパルフェとバタービールになります」
「ありがとう。それと・・・金がないからこれで許して」
そう言ってバジリスクの牙を女店主に渡した。
「え!?こんな貴重な物を下さるんですか!?」
「それでこのパルフェとバタービールの代金、帳消しにしてくれるならね」
「……!!…分かりました」
その牙を胸に隠し、女店主はほかの客のところへ行った。
ルフィとの喧嘩の後でイライラして、常人が食う量が余裕で腹に収められるくらいだった。パルフェのアイスをふわ、とスプーンですくい上げて口に含んだ。生チョコとバニラが舌の熱で溶けた。
アマゾン・リリーを離れてリーゼ・ジオンに戻ってからから6日が過ぎた。今頃ルフィはインペルダウンに乗り込んでいるだろう。
「(ルフィ、おれはお前にとって大事な兄を……"火拳"を救うことはできる……。3年前のあのことが思い返されてしまうんだ………ごめんな………)」
————
3年前
ボーバトンの長期休暇の間、アマンダはロルシアとともに自宅療養に励んでいた。この時から6年ほど前に患った心臓病はあと少しで完治というところまで来ていた。
「母さん!今日も"七変化"のこと教えてくれるんだろ?」
ある朝、父譲りの燃えるような赤い髪をした娘のロルシアが待ちきれないといった様子でローブを弾ませている。
「気が早いわよロルシア。まァ、ちゃんと基礎は教えたからあとは強化させるだけ」
ベッドにつないだ点滴を外しながらアマンダは言った。
「じゃあ、母さんの病気も、"七変化"もあと少しのところまで来てるんだな?」
よっしゃ———!!!
ロルシアは両腕を突き上げてワイワイ大喜びだ。
アマンダも、見たことのない娘のキラキラした笑顔に、早く治さないといけないな、と思った。
- Re: ワンピース-聖職者〜ブルー ルージュ ノワール〜 ( No.151 )
- 日時: 2012/04/19 19:36
- 名前: 勇騎那 (ID: pL7u1715)
カフェのテラスにあるローテーブルでロルシアと"七変化"で顔をいじった状態のアマンダは向かい合って座っている。
「そうね。フォークスに化けてみて」
意識を集中させて、相棒の姿を頭の中に復元させた。そして、光に包まれる間に赤髪を不自然なほど指通りのいい黒髪に、オレンジの目を濁りのないメタルブルーにした。身長もフォークスの体格になった。が、
「顔は男のままだな」
「タイプの違う男になっちゃった……」
最大の欠点が出てしまった。というのも、ロルシアがほかの誰かに化けようとすると、顔はそっくりなのだが、どうしても男顔が抜けない。母アマンダはそういったことはないのだが。
「女顔の奴に化けようとするから駄目なのか?」
「本物の男ならどうにかなるかもね!!」
ナイスな提案!!!と言わんばかりの人差し指をびしっ!!と指したアマンダのガキくさい顔にロルシアはちょっと引いた。
「どっかにいいモデルが居ればいいんだけど。……できればシャンクすレベルのイケメンがいいな」
「欲張るなよ………!!早々美男がい———」
そう言いながら左側にある大路地を見やると、
「……いたぞ」
「え!?どこ!?」
こちらの視線に気づいたのか、それとも違う理由か、そいつはこっちへかけてきた。
- Re: ワンピース-聖職者〜ブルー ルージュ ノワール〜 ( No.152 )
- 日時: 2012/04/20 22:40
- 名前: 勇騎那 (ID: .Ksjqplx)
コシのある硬い黒髪にオレンジのテンガロンハットをかぶり、スーッと切れ長の黒い目で、そばかすがほのかにキュートさを加味、魅力満点の男だった。
「"火拳"のエースだったわよね?」
「そうだ。あんた、"時渡り"のアマンダだろ?」
「私を知ってるの?」
「知ってるだろ。奴隷解放を2回もやってのけた海賊だぞ」
「あ、そっか!!」ロルシアに言われるまで忘れていたらしい。
「で、何か用?」
「勝負して見ないか?」
エースはよっぽど腕っぷしに自信があるらしい。母さんに勝負挑むとか相当な度胸あるな!!とロルシアは声に出さずに叫んだ。
「いいわよ」
————少しくらいの戦闘なら大丈夫よね。
心臓の病気はほぼ完治している。運動も大丈夫だ、戦闘も少しならいいと主治医に言われていたため、アマンダは引き受けた。
————それにこの子、能力にちょっとだけかまけてる。それがほんのわずかでもあれば私には勝てない。
「あ!!」
「どうかしたの?」
「"エトワール"今日鍛冶屋が出来たって言ってた!!」
「取りに行ったら?その間に戦闘は終わってるわよ」
「おう!!行ってきま〜す!!」
ロルシアは大字路を島の中心へと向かって駆けだした。大小さまざまな塔が立ち並ぶ城、つまりは自分の通う学校のすぐ眼下にある鍛冶屋に駆け込んだ。壁のいたるところには刀がかけられていて、机が無頓着に置かれて、その上にこれまた無頓着に銃がゴロゴロと置いてある。散らかっているようで整理された店内だ。
「ベーレ!!"エトワール"どこにある!?」
店のほぼど真ん中の黒いソファを陣取って完全にくつろいでいる口からわずかに牙がのぞいている若い男に開口一番、"エトワール"の所在を聞いた。
「これだろ?持ってけ」
ソファの下に手を伸ばした。それをロルシアに取りに来させて手渡した。
「ありがとう!!」
代金は前払いしてあるため、そのままダッシュでダッシュでさっきのカフェのところまで戻った。そこには、ゲホゲホ血を吐き、腹を押さえているエースの姿と、それを石像のような真顔で見つめるアマンダだった。
「自然系—ロギア—だからと言って、私が能力者への対策をしていないとでも思ったの?」
「噂には…がふっ!!……聞いていたが…あんた、能力者以上の化け物なんだな………!!」
「怪物を体の中に宿しているもの。そう思ってもらっていいわ」
アマンダが瑠璃色の髪を耳にかけた。
————母さんはやっぱり強い………!!!
最初から分かり切っていたが、アマンダが最近名を挙げてきたルーキーに倒されるわけがない。相手が少しでも能力に溺れていると尚更だ。
「もっと強くなって、私を越えてみせなさい」
「待ってな。必ずまた会いに来る」
戦闘後の余韻を残して去るエース。
彼の後姿が見える内にロルシアは、その背中に向かって叫んだ。
「おれ!!もう少ししたら海賊になるんだ!!いつか海の上で会おう!!…エース!!!」
エースは振り向きざまに立ち止まってロルシアに張り合うくらいのぎゃいぎゃい大声で叫んだ。
「お前の名前は何だ!!?」
「ロルシア!!プリンセス・ロルシア!!」
「ロルシアか!!いい名前だな!!次に会うときは今よりもっと美人になっておけ!!おれが嫁にもらってやる!!」
「じゃあエースはおれより男前になってもらうぞ!!」
「上等だ!!」
エースは再び海岸へ歩き出した。どこかの青春ドラマのような光景を見せられたアマンダが「嫁の貰い手が見つかってよかったわ」とつぶやき、ロルシアが赤髪に隠れて、エースがテンガロンハットの陰で大赤面をしたのははさて、何秒後?
- Re: ワンピース-聖職者〜ブルー ルージュ ノワール〜 ( No.153 )
- 日時: 2012/05/06 18:01
- 名前: 勇騎那 (ID: rtyxk5/5)
あれから一年の月日が流れたころ、アマンダの容体が急変した。
「おい!!どういうことだよ!!もう治らないってどういうことだよ!!」
ロルシアは手術室から出てきた主治医の胸ぐらをつかんで壁に叩きつけた。
「戦闘時に受けた傷が心臓を掠って、その傷から内出血が起こっているんです」
そんなことになれば、もう助かる方法はない。どんなに手を尽くしたとしても。
医者から手を放して、ガラスの向こうでベッドに横たわっている母を見た。
その時——
「うっ!!」
突然女性の甲高い悲鳴が聞こえ、頭が焼かれるような頭痛がロルシアを襲った。
一閃の光が目の前を横切り、自分は目を開けている母の横にいる自分の隣に立っていた。
『 』
『 』
『 』
『 』
アマンダの潤んだオレンジの目に瞼が重くのしかかった。心電図の数字は"0"だ。
『 』
もう一人のロルシアは母に踵を返して病室を飛び出した。
自分もその後を追った。
うす暗く長い走ってはいけない廊下をロルシアを追ってずっと駆けて行った。
そうする内、赤いピンヒールをはいた綺麗な黒髪の美女が反対方向からやってきた。
『 』
その美女こそがフォークスだった。
————そこで途切れた。
気が付けば自分は頭を抱えてうずくまり、医者に揺さぶられていた。
「大丈夫ですか?」
「ああ」
————さっきのは一体……
こんなことが起きたのは初めてだった。
どうして、あんなものが見えたんだろうかと考えてもわからない。
すくっと立ち上がったら、目を開けているアマンダがいた。こちらを見やり、弱々しく手招きした。
ロルシアは医者に許可も取らず病室に入った。
そして、ベッドの横に膝立ちになった。
これは、さっき見えたものと同じだ。
「死ぬんなら死んだっていいんだぞ」
「非情な子……。親に…そんなこと……言うなんて」
「母さんの娘だ」
「……そうね」
アマンダは自由があまり聞かなくなってきている左腕でロルシアの頬に触れた。
「私と……シャンクスの子……」
そう言うと、アマンダの手が重力に逆らわずぶらんとなった。
ロルシアは母に踵を返して病室を飛び出した。
ただただ我武者羅に走って走って走った。
息が切れた時に顔を上げると、赤いピンヒールをはいた指通りのいい黒髪と澄んだメタルブルーの目を持つ美女がいた。
フォークスだ。
「ロルシア、どうした?」
「……………」
「答えろよ……っ!!おい!!」
フォークスの腕を引っ張って病院を飛び出す。
死角になる場所まで来てロルシアは真正面からフォークスに抱き着いた。
「お前、何考えて…」
「うるさい!!黙ってこうさせろ!!」
フォークスは小刻みにロルシアが震えているのが分かった。
————こいつでも泣くんだな……
泣かない、というより、涙というものを知らずに生まれてきたんじゃないかというくらい冷静な(時々バカ)ロルシアが泣くときは必ず誰かがそばにいる。
そのほとんどがアマンダかフォークスだ。
「アマンダさん……亡くなったのか?」
赤髪が自身の胸をこすった。
フォークスは抱きしめて相棒の気が済むまで好きなだけ泣かせることにした。
「…うぅ……母さんが………母さんが死んだ!!死んじまった………!!………母さん!!!」
「そうだな………。アマンダさんは死んだ………。でも———」
————…
「(時間だな……)」
カウンターから視界の端に見える時計を見て時刻を確認した。授業に遅れないように店を後にした。
すると、夜空を映したような緋色のくるぶしまである髪に、紫の目を持つ中年女性が酒場の壁に寄り掛かっていた。
「遅刻だよ」
「さっきからここにいたんだけど?」
"バトラー"に「調子に乗るんじゃない」と言われるだけで終わった。
「まァいい。さっさとやるよ」
- Re: ワンピース-聖職者〜ブルー ルージュ ノワール〜 ( No.154 )
- 日時: 2012/05/06 18:06
- 名前: 勇騎那 (ID: rtyxk5/5)
ゴドリックはなぜかファッションブランドの店にいた。
先ほどあった中年に見える女、彼女にぐいぐい手を引かれて連れていかれたところだ。彼女はベルモット・D・キルタルと言い、ゴドリックの思い入れの深い恩師だ。
「何だっていうんだよ」
リーゼ・ジオンに帰ってきてからは、毎日キルタルのもとで授業という名の戦闘訓練を積んでいた。
今日もそれがあると聞かされていたが、実際はどうだ。
試着しては脱いで、試着しては脱いで、それの繰り返しだ。
「ベルモット……!!」
試着するのも飽きてきたころ、キルタルをファミリーネームで呼びつけた。
「授業中だよ。"キャッスルバトラー"を呼び捨てにするんじゃない」
「そんなことはどうだっていい。これが授業か!?」
「お前、頂上戦争に行く気なんだろう?」
「ああ。行くよ」
「だったら、数日続けてきているその服は着ていけないね」
一理あると思った。
あと4時間もすれば戦争は始まるだろう。
さすがに今着ている服は衣装チェンジする必要がある。
「分かった……。無難なのを選べばいいんだな?」
「ロルシア……お前の無難は並大抵の人間がオシャレと感じるレベルだよ……」
————…
女の買い物は長い。
それはそれは付き合わされた者がヘロヘロになってしまうほどだ。
しかし、ゴドリックは普通の女とは比較対象にならない。
買い物もほとんど即決だ。
「……」
鏡の前で体をひねらせて全体のシルエットを見た。
「こんなもんだろ」
試着室から出てきたゴドリックのスタイルはこう。
西部劇の保安官が被っているような帽子を目深にかぶって顔に斜がさす。
黄緑色のインナーに丈の短いブラウンのジャケットを羽織る。
ダークチョコレートカラーのスキニ—パンツ、靴は履きなれたドラゴン革の黒いショートブーツ。
左耳に涙型のガーネットピアス、稲妻型のポイントのペリドットが使われたチェーンネックレスを首から下げている。
髪は眩い黄色にして低い位置でツインテールにした。
女の子っぽい髪型にしてやっと少し中性的になった。
「十二分に男前だよ……」
キルタルは肩をすくめながら言った。
「おれ、無一文だからさ、金は払っといて」
「………ちゃんと返してくれよ?」
「出世払いで」
顔の前で手のひらを合わせているゴドリックを見て、いつの話になるんだと思ったが、言葉は飲み込んだ。
返すと言ったらこの女が返すのは分かっている。
- Re: ワンピース-聖職者〜ブルー ルージュ ノワール〜 ( No.155 )
- 日時: 2012/05/06 18:09
- 名前: 勇騎那 (ID: rtyxk5/5)
「そうだ、こいつを持っていきな」
キルタルはローブの下から艶めいた真っ黒なリンゴと、汚れが見えない真っ白なリンゴを取り出し、ゴドリックに投げ渡した。
ゴドリックはそれにうまく反応してキャッチした。
「……!!?あんた正気かよ……!!!」
「どうなるかはわかっているよ」
————…
世界各地から海軍の全戦力、総勢約10万人が集められ、広場は埋め尽くされていた。
三日月形の湾内に白ひげ海賊団を迎え撃つ陣形が整えられ、にじり寄る決戦の時を待っていた。湾頭から島全体は海軍の軍艦50隻が周囲の守りを固める。
港から見える軍隊の先頭に立つは、戦局のカギを握ることになる曲者、海賊"王下七武海"。
処刑台がそびえるのは広場の奥になる。それに立つ者こそ、"白ひげ海賊団"2番隊隊長ポートガス・D・エース。
その眼下で処刑台を固く守るのは、海軍の最高戦力、黄猿、青キジ、赤犬の”三大将”。
処刑台のエースの横に海軍のトップ、センゴクが現れ、広場の緊張が高まった。
センゴクは電伝虫の拡声器を使い、「諸君らに話しておくことがある」と始めた。
「ポートガス・D・エース…この男が今日ここで死ぬことの大きな意味についてだ………!!
エース、お前の父親の名を言ってみろ!!」
オヤジ?
何だ?こんな時に…
広場も、シャボンディ諸島の記者たちもざわざわとし始める。
「おれの親父は"白ひげ"だ!!」
「違う!!!」
「違わねェ!!白ひげだけだ!!!他にはいねェ!!!」
「当時我々は、目を皿にして必死に探したのだ。
ある島にあの男の子供がいるかもしれない」
センゴクの声以外に空気を震わせる音はない。
誰もが処刑台にくぎ付けになっていた。
「"CP"の微かな情報と、その可能性だけを頼りに、生まれたての子供、生まれてくる子供、そして母親たちを隈なく調べたが、見つからない。
それもそのハズ、お前の出生には、母親とその友人が命を懸けた、母の意地とも言えるトリックがあったのだ………!!
それは我々の目を………いや…世界の目を欺いた!!
"南の海"にバテリラという島がある。
母親の名はポートガス・D・ルージュ。
その女の友人の名はプリンセス・アマンダ。
女達は我々の頭にある常識を遥かに超えて、子を想う一心で、ルージュは実に20ヶ月もの間子を腹に宿していたのだ!!
そしてお前を産むと同時に力尽き果て、その場で命を落とした。
アマンダはお前をかくまい、父親の死から1年3か月を経て、世界最大の悪の血を引いて生まれてきた子供、それがお前だ。
知らんわけではあるまい……!!」
まさかという予想、先ほどよりもどよどよと騒ぎが大きくなっている。
「お前の父親は……海賊王ゴールド・ロジャーだ!!!」
- Re: ワンピース-聖職者〜ブルー ルージュ ノワール〜 ( No.156 )
- 日時: 2012/04/28 08:44
- 名前: 勇騎那 (ID: /1FaKALE)
まだよ……
死ねない……
行かなきゃ……
私と彼……
あの子とあの子……
二人を死で分かつことはしないで……
彼らはただ生きたいだけなの……
私と彼だってそうだった……
ただ求めているだけなの……
必ず彼らを生かして……
そうじゃないと……
この先の時代……楽しくなくなるわ……!!!
————瑠璃色の聖母は一時の起床を許された
光に包まれながら重い瞼を持ち上げた
- Re: ワンピース-聖職者〜ブルー ルージュ ノワール〜 ( No.157 )
- 日時: 2012/04/28 15:45
- 名前: 勇騎那 (ID: ra5/85Hy)
「相手の死に際に嫁ぐことになろうとは皮肉なものだ」
海の上を歩きながらゴドリックは言った。
その両腕にはダーコイズブルーの髪に、エメラルドの目、露出の多い服を着た男が安定して抱えられている。
「何の事だか知らないけど、降ろして」
「バカか。ここは海の上、降ろしたらシフウ=ロイド、あ〜間違えた、レイン=フォルテ、お前がおぼれるぞ」
文句が言えないことをさらりと言ってレインを黙らせた。
レインは苦虫を噛み潰したような顔だが、実際海のど真ん中で逆お姫様抱っこをされているため、ゴドリックに逆らえない。
「で、お前は海軍を恨んでる。だからおれが戦争に行くとわかったらお前から連れて行けと言ったのに……」
何だこのザマは。
ゴドリックははァとため息をついた。
「あんたが勝手にこうしたんだよ!!!」
「降ろすぞ」
「っ……」
ゴドリックは最初、母に教わった技で空を飛びながらマリンフォードまで行っていた。
途中休憩が目的で立ち寄った島で、レインに引っかかり、連れて行かなくてはならなくなった。
ゴドリックにとって荷物でしかないこの男を—実際に手荷物になっている—連れて行ってやっているのだ。姫抱き…いや、王子様抱っこをして。
「あんた、本当に女?……信じられるもんか」
「女がすべてか弱いわけじゃない。…優しくもあって勇ましい女もいれば、強さにどん欲な女だっている」
「じゃあ、あんたはどういう女なわけ?」
「男を超えた男前」
自意識過剰とも取れる言動だ。
だが、ゴドリックが言うと全く嫌味じゃないから不思議だ。
「そろそろ着くぞ」
白ひげの傘下の海賊団の船と思われるそれらが見えた。
海が氷漬けになっていて、海賊たちと海軍はその上でぶつかり合っていた。
「もう始まっていたんだ……」
だんだんと船が近づいてきて、2人は氷を踏んだ。
そこでゴドリックはレインを降ろした。
「好き勝手暴れて海軍つぶしておけ」
「言われなくても……!!」
レインはパチン!とクリックを鳴らして霧を発生させた。
その霧は赤かった。
「「「「ぎゃああああ!!!」」」」
それをまともに食らった海兵は焼死体となった。
「なかなかやるな」
帽子を右手の人差し指で上げた。
「氷空旅—シエル・ボヤージュ—!!!」
乳白色の風が巻き起こる。
その風に身をゆだねてゴドリックは高く高く飛び上がった。
湾内の氷が近づく。
その氷を踏んだ時、彼女が探している人は強面の煙の海兵に組み敷かれていた、ようにゴドリックの目に映った。
「離れ…「おのれ!!離れぬか!!!」…!!」
いつもよりラフな紫の九蛇海賊団のジョリー・ロジャーがあちこちにあるチャイナドレス?を着たハンコックがルフィを押さえつけていたバカ海兵を蹴り飛ばした。
「煙のおれに攻撃を……!!?ハンコック!!てめェも"七武海"を辞める気か!!?」
「黙れ!!」
世界一の美女が見境がつかなくなるほど怒り狂い、綺麗だけでは足りないほどきれいなその顔を般若のようにさせている。
「怒りゆえ何も耳に入らぬ!!!そなたよくもわらわが溶けるほどに愛でる美麗なお方を殴り飛ばし、組み敷いたな!!!生かしてはおかぬ!!!こんなに怒りを覚えたことはない!!!そなたを切り刻んで、獣のエサにしてやる!!!」
「"九蛇"の覇気か………」
- Re: ワンピース-聖職者〜ブルー ルージュ ノワール〜 ( No.158 )
- 日時: 2012/04/29 23:22
- 名前: 勇騎那 (ID: M4UdAK/d)
ハンコックがルフィに鍵を渡した。
恐らくエースを解放するためのものだ。
ゴドリックはそちらを見ながらも自分に襲い掛かってくる海兵に気付いていた。
「今いいとこなんだから邪魔しない!!」
「ぐはっ!!」
無残にも後方へ海兵は倒れた。
「フィオレータ・ゴドリックを捕えろ!!!」
「「「「はっ!!!」」」」
取り囲まれるように手配書と同じ顔をしている自分に迫ってくる海兵たちをまとめてバコバコ蹴り飛ばしていく。
「どこ蹴られたい?背中?」
「ああ゛!!!」
背中を蹴ってやった。
「頭?」
「がはっ………!!!」
別の者の頭をかかとで踏みつけた。
「それともココ?」
「ハウッ!!!」
男にとって一番の急所を蹴った。
ルフィに近づくバカ海兵はハンコックが前に立ちふさがっており、心配はない。
「不届き物!!控えよ!!ここはわらわが通さぬ!!」
とめどなく見下して逆に見上げているのはゴドリックの興味をそそられたが。
「とにかく処刑台に行くか。ルフィもそこを目指すはずだ」
ゴドリックは駆けだした。目の前へ迫ってくる海兵を潜り抜けていく。
「ディフェンスライン固めておかなきゃだめだぜ?ケハハハッ!!ケハハハハ!!!」
ゴドリックの笑い声に悪寒を感じたものは少なくなかった。
「あの笑い方……!!まさか………!!」
ルフィは気づいた。自分が知る限り、ケハケハと笑うのはただ一人だけだ。
自分と同じ、罪人の血と自分の憧れのあの人のを血引く彼女だけだ。
「ゴドリック!!!」
しかし、彼女はルフィの声に応えない。
聞こえているはずなのに、その名前は彼女だけのものなのに、ゴドリックは無視するばかり。
ルフィは自らゴドリックに近づいて行った。
「何か用か?……"船長"」
「!!!」
ルフィは吸血鬼にかみつかれたような顔をした。
ゴドリックはあえて肩書きで呼んだ。
名前を呼んでくれた時の世界一艶のある危険な声は聞こえない。
仲間じゃないと言われた、名前は呼ぶ必要はない。
ゴドリックはそう考えていたからだ。
「お前、戦争に来ないんじゃなかったのか!?」
「"火拳"のエースを救う理由がないとは言った。だが、この戦いに来ないと言ったか!?」
「言ってない!!」
「それに、お前はおれに仲間じゃないとは言ったが、船を降りろと言ったか!?」
「言ってない!!」
「だからおれは、"仲間"じゃなく、"船員"として船長のところにいる!!何かおかしいことはあるか!?」
「無い!!」
「だったらさっさと兄貴救って来やがれ!!!」
「わかった!!」
2人の会話は周囲にダダ漏れだった。
ゴドリックは麦わらの一味の船員であることが知られた。
『必ず捕えろ!!その女もいずれ我らの敵になる!!』
処刑台からセンゴクが電伝虫の拡声器を使いながら叫ぶ。
男だと思っていた奴が女だったことに白ひげ海賊団も海軍も驚いたようだったが。
そんなもの耳に入らないというようにルフィとゴドリックは海軍の包囲網を突破していく。
『幼いころから母に匿われ、存在すら表に出て来なかった!!!ルフィ、エースと同じく悪の血を引いている!!!"穢れた血"の実の娘だ!!!!』
「「「「「「!!!!!」」」」」」
目を見開く者、怯える者、面白がって笑う者もいて、皆様々な反応を示した。
『あいつも消しておかにゃならんのう』
非情な正義を振りかざし、大将赤犬が言った。
「何も驚くことなどない……」
"鷹の目"のミホークが表情を全く動かさずガラスのように冷たく言い放った。
「お前が……ロルシア………」
再会を約束した少女がこの戦場で戦っていることにエースは信じられなかった。
「エース!!」
ゴドリックは何かに喘いでいるようで、苦しんでいるようだった。
「お前とおれは必ず海のどこかで会おうと約束した!!だが、お前と戦った母さんはその時受けた傷が原因で死んだ!!!」
「え……!!?」
「でも、エースは殺すつもりで母さんに挑んでいない!!!ただ勝負をしただけだ!!!仇と言えば仇なのに……!!お前を恨んでいいのか!!!憎んでいいのかわからない!!!」
恨みと約束の間でゴドリックは揺れていた。その度に、体の中で何かが渦巻いていた。
「お前を憎むまいとすればするほど、おれの心はバジリスクにむしばまれていった!!!体中に毒が回ってお前を憎いとしか思えなくなった!!!」
「それでエースを助けないって言ったのか……」
「でも!!!その家族まで恨めと言うのは筋違い!!!」
「憎いなら恨めばいいじゃないか……」
家族を殺されたという境遇はゴドリックとレインは同じなのに価値観が違いすぎる。
「おれはルフィにしか縛られないと決めた!!!」
ゴドリックはどこからともなくサッカーボールを足に這わせた。
それを空中に空高く蹴り上げた。
自身もびゅんっ!!と飛び上がった。
その途中、怪しい紫の念波を足にまとわせ、ボールにたどり着いた。
「念脚—サイコドライブ—!!!」
直下に向かってシュートを決めた。
「「「「「うわああああ!!!」」」」」
固まっていた海軍があちこちへ飛び散った。
ゴドリックは華麗にシュタッ!!と着地を決めた。