二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re: 怪物くん 『白銀色の孤独』 ( No.12 )
日時: 2012/03/22 13:51
名前: 炎崎 獅織 ◆3ifmt4W30k (ID: aZP6Qvf9)

<episode 3 白銀色の悪魔王子>





 柔らかくも禍々しい、オレンジ色の光で満たされている悪魔界。
 それを上塗りするかのように、深い青色の光が王城内を走る。光が消えると、目のやりどころに困ってしまいそうなセクシーな黒衣を纏う、長身の美女が現れた。

「3日ぶりの、悪魔界、ね」

 感慨深げに呟き、一歩踏み出す。その瞬間、頭に激痛が走り、視界が歪んだ。

「痛っ…………!」

 懸命に頭痛と戦う中で、次第に大きく、はっきり聞こえてくる声がある。


『なんで……どうして……教えてよ……』


 最近になって、度々見舞われるようになった激しい頭痛。それに併せて必ず、少年とおぼしき悲痛な声が聞こえるのだ。
 そして、最後に聞こえる声は、毎回同じ。


『あなたのこと、ずっと、信じていたのに!』


 声と同時に、頭痛も消えた。
 溜め息とともに再び歩き出すが、ダメージが残っているのだろうか、上手く力が入らずに倒れそうになってしまう。
 後少しで床に崩れ落ちてしまう、まさにその時だった。

「……デモリーナ」

 王城内を駆ける紫色の光に包まれ、光が消える頃には男の腕の中にいた。
 助けられた美女、もといデモリーナは、自分を支えてくれている人物に寄りかかりながら、 深呼吸を繰り返した。

「デモリーナ、大丈夫か?」

 優しくいたわる声に頷き返すと、彼女は相手の顔を見た。
 白く痩せた顔立ち、深く冷たい闇色の双眸、怪しい輝きを放つ白銀色の長髪。デモリーナが心から忠誠を誓い、純粋な愛を注ぐ男。
 彼こそが“白銀色の悪魔王子”、デモキンであった。

「デモキン様…………!」

 自分がおかれている状況をようやく理解し、慌ててデモキンから離れた。

「なぜ逃げる? ここには俺とお前しかいないだろう」
「いや、ですが……」

 言葉を探すデモリーナの顔は、今にも火が出そうなくらいに真っ赤だ。彼女を愛おしそうに見つめるデモキンも耳朶まで赤くなっているのは、内緒の話である。
 まあよい、と呟き、デモキンは改めて労いの声をかけた。

「……今回の遠出で疲れが出たのであろう。ゆっくり休むがいい」
「しかし、まだこの後も仕事があるのでは?」
「俺一人で十分だ」

 デモリーナの額に、軽く口づけをする。

「お前の仕事は、疲れを癒すこと。いいな?」

 それまで以上に顔を赤くしながら頷くデモリーナ。それを見たデモキンは微かな笑みを浮かべ、ロングヘアを靡かせながらその場を去った。

「……自己チューなんだから」

 主君の陰口を叩き、デモリーナは瞬間移動で自室に戻った。
 到着するや否や、今まで来ていた黒衣を脱ぎ捨て、装飾を一切排除した漆黒のロングドレスに着替える。蜘蛛をモチーフにした髪飾りを外すと、艶やかな黒髪が露になった。

「……それっ!」

 服と髪飾りを綺麗に片付けると、自分一人であるのをいいことに、勢いよくベッドにダイブした。
 布団の冷たさが、火照った体にしみ込んでいく。

「気持ちいい……」

 しばらく寝転んでいると、次第に眠気が襲ってきた。デモキンの言う通り、かなりの疲れがたまっていたらしい。

「デモキン様だって、私以上に疲れているはずなのに」

 その言葉は、意識と共に闇の中へ溶けていった。





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<あとがき>
やっと登場。本当のメインキャラ、デモキン&デモリーナ。
前の話と比べて短い上に、デモキンの出番が少ない気がするけど、気にしない←
物語の本筋は、次回からスタート、ということで。