二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Re: 怪物くん 『白銀色の孤独』 祝・参照1000突破! ( No.62 )
- 日時: 2012/10/12 18:15
- 名前: 炎崎 獅織 ◆3ifmt4W30k (ID: Bukazeet)
<episode 17 裏切り者の真意>
悪魔界の王城裏手には、墓地が広がっている。デモキンの祖先にあたるかつての王や、親類である王族、特別に重用されていた家臣たちが、その生を終えた末に行き着く場所。そこにまた一つ、新しい墓標が増えた。
「デモキン様?」
「……デモリーナ、か」
その真新しい墓石の前で物思いにふける事が、ここ最近のデモキンの癖となっていた。諸々の仕事を終えると誰にも告げる事無く、たった独りで城の裏手に足を運ぶ。緊急の呼び出しが無い限り、ずっと無言で立っているのだ。
普段の悪魔王子らしからぬ行動に、大多数の者が陰で大いに心配の念を抱いた。政務を終えた瞬間に姿を消してしまうデモキンを探し求めて墓地へやってきたデモリーナも、その大多数の中の独りだった。
「わざわざ俺を捜しに来たのか」
「いつの間にか、御姿が見えなくなっていた者ですから」
デモリーナはデモキンのすぐ隣に立ち、彼と同じ物を見つめた。
「悪いな、心配をかけて」
「あの日以来、ずっとでしょう。暇があれば、墓地に行くなんて」
「未だに信じられんのだ。足下で眠っている男が、俺を裏切ったという事実を」
1ヶ月ほど前に諜報部から届けられた報告書。封魔抑制の封印が妨害されていることを調べたそれの末尾には、首謀者と推測される人物の名前が添えられていた。
「私も、同じです。全く信じられません」
諜報部に加えて、特捜部から報告を受けた時の衝撃は、今なおデモリーナの中に残っている。報告書の最後に容疑者として名前を記され、表立った大捜査の末に捕まった男には、デモキンとデモリーナを含め、ほぼ全ての悪魔たちが心からの信頼を寄せていた。地位はデモリーナやリュオンよりずっと上、国家のNo.2である宰相——名を、コウハという。
宰相とはいえ、国家転覆を謀った“裏切り者”である。配下の者も含めて然るべき手続きを踏んだ後、彼はデモキンの手によって処刑された。
「俺が政治方針を修正すると宣言した時だって、あいつは全面的に協力してくれた」
「コウハ殿には、色々とお世話になりました。わたしが悪魔になったばかりの頃は、特に」
「忠誠心の塊みたいな男が、終いには俺の事を腰抜け呼ばわりだ」
「そういえば、言ってましたね」
『貴様のような腰抜けに対する忠誠心など、持ち合わせてはおらん。封魔を暴走させ、対応に追われて疲弊しているときを狙い、貴様を消すつもりだった!』
死を目前にしながらも、コウハはそう言い放った。彼によると、他の世界への侵略行為を中止した時点でデモキンのことを見限っていたらしい。
「それでもやはり、信じられんのだ」
「だから、墓地を訪れているのですね」
なぜ裏切ったのか、理由を聞きたい。しかし当人は既に死んでいる為、そんなことは不可能だ。その事を知っていてもなお、デモキンはコウハの墓前に佇み、心の中で問い続けた。
「コウハよ、なぜ裏切った?」
口に出しても、答えはない。
「処刑寸前での発言が、コウハ殿の本心なのでしょうけど」
「今となっては、そう考えるしかなかろう」
デモキンはその場を離れ、近くに設置されているベンチに腰を下ろした。「ああ、疲れた」と言わんばかりの動きと表情を見たデモリーナは、心配になって彼の元に駆け寄った。
「……どうした、お前も何か心配事を抱えているのか」
「デモキン様は、大丈夫なのですか? 私から見れば、随分お疲れのように思えます」
「俺の事は気にしなくていい。平気だ」
デモリーナを見上げるデモキンの表情と声は、とても穏やかで優しい。
「とにかく、無理だけはなさらないでください」
「出来る限り、な」
二人きりで過ごすプライベートな時間の中でも見慣れない穏やかさに、デモリーナの心は逆にかき乱されるばかりだ。次にどのようなアクションをとるか考え抜いた末、デモキンとは一人分くらいの間を空けて、彼女もベンチに座った
「……此処にいるのがお前だからこそ、白状する。他言無用であるのは、分かっているな」
「えぇ、勿論」
地面を見つめたまま、デモキンは溜め息をついた。
「俺は今、不安で仕方ないんだ」
「不安、ですか」
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<あとがき>
受験本番まで100日を切っても、絶賛更新中でございます←
パンフレットやガイドブックを見て執筆意欲を高めている今日この頃。
……なんで“あの二人”の関係はハッピーエンドにならなかったんだぁっ!←