二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Re: 怪物くん 『白銀色の孤独』 目次の整頓、完了! ( No.70 )
- 日時: 2012/12/16 01:39
- 名前: 炎崎 獅織 ◆3ifmt4W30k (ID: Bukazeet)
<episode 19 空振りの思い>
「結局、肝心な事は何一つ話してくれなかったんだぜ。何の為に呼び寄せたのか分かんないっつーの!」
「愚痴を聞く側が愚痴ってどないすんねん」
「正義くんにも色々と事情があるんだよ、きっと。無理に聞き出そうとしたら、正義くんが可哀想じゃん」
「長瀬に言われると、スッゲー負けた気分になる」
「あ、松岡くん酷い!」
この日、城島邸の一日は、昌宏のぼやきで始まった。
彼曰く。
『昨日の夜、正義のやつを呼んで俺の手料理を振る舞ったわけよ。政治だ何だっつって愚痴もストレスも溜まっているだろうから、少しでも話を聞いて、心を軽くしてやりたくて。なのにあいつ、飯だけ喰って愚痴一つ言わずに帰っていったんだ!』
自分の思惑が大いに外れた事が不服らしく、早朝からずっとこの調子である。
「長瀬の言う通りやと思うなぁ、僕は」
朝食のおかずをつまみながら、茂は続ける。
「表に出さへんだけで、松岡の厚意には感謝しとるやろ。それでも、愚痴と悩みは言いづらかったんちゃうか? 正義くん、松岡と一緒で優しいし、気遣いもバッチリやし」
「ほらね、リーダーも俺と同じ意見だ」
「長瀬もドヤ顔している場合じゃねぇだろ。今日の仕入れは、由貴さんと源太とお前の担当。二人とも車の中で待ってるぞ」
智也は弾かれたかのように立ち上がり、卵焼きの一切れを口に放り込むと、大慌てでダイニングルームを出て行った。
「……長瀬の姿が、全力疾走するセントバーナード犬に見えてくるんやけど、どう思う?」
「24時間年中無休で犬耳と尻尾を出していたら、完璧だな」
“看板犬”が走り去っていくのを見送ると、残った昌宏と茂は黙々と食事を再開した。しばらくは食器が触れ合う音と、みそ汁を啜る音、茂の発言に対する昌宏の「ジジくせぇ」というコメントだけが、広いダイニングルームに響く。
「酷いなぁ、僕は永遠の10代やで」
「心だけは、でしょ。肉体は実年齢相応なんだから」
「……現実を突きつけんといて。結構気にしてんねん」
「……ごめん」
男二人では、話もなかなか進まない。気が付けば、『飯だけ喰って愚痴一つ言わずに帰っていった』正義の事について語り合っていた。
「源太も言っていた。“封魔問題が浮上して以来、デモキン様も休日返上で働き詰めだ”って」
「そういう話を聞いていると、正義くんの事が段々心配になってくるな。その内過労で倒れてまいそうで」
「そのリスクを減らす為に呼び出したのに……」
「分かった分かった、これ以上愚痴を言わんでもええやろ」
「あいつ、絶対何かを隠していると思う。心と体が繋がっているはずの俺に、何も伝わって来ないなんて、おかしいもん」
「ほんまに何もない、という可能性は?」
「ゼロ。時々だけど、伝わってくるんだよね……頭痛とか…………っ!」
「松岡、大丈夫か?!」
その頃の悪魔界。
「デモキン様……」
「すまんな、迷惑をかけて」
「いいえ。これくらいのことは、別に」
人間界にいる昌宏と、ほぼ同じタイミングで激しい頭痛に襲われたデモキン。執務室内で一人倒れている所デモリーナが発見し、彼女に助け起こされた状態であった。
痛み自体は消えたものの、余波で思考回路は未だにぼんやりとしたまま。立ち上がろうにも、体に上手く力が入らない。
「何度も申し上げましたが、無理だけは禁物でございます」
「分かっている」
デモリーナの肩に頭を預け、デモキンは目を閉じた。
「思考がはっきりするまで、少し休むか」
ほんのりと甘い香りが漂う暖かさに包まれ、彼はそのまま意識を手放した。
「寝るなら先に言ってよ……」
小さな寝息を立てて眠るデモキンを支えながらも、彼が目を覚ますまで、デモリーナはずっと寄り添っていた。
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<あとがき>
受験まであと1ヶ月でも、元気に更新。
先週テレビで放送された「映画 怪物くん」の煽りを受けたせいか、ラストは甘めで。
……デモキン様とデモリーナ様の絡みを見て、切なさのあまりテレビの前でのたうち回ったのは、私だけではないはず←
同士求ム。