二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re: 怪物くん 『白銀色の孤独』 ( No.71 )
日時: 2012/12/23 15:00
名前: 炎崎 獅織 ◆3ifmt4W30k (ID: 3M9YBG03)

<1st snow 相談>






「……はぁっ?!」

 昌宏の元に舞い込んだ、一本の相談電話が始まりだった。

「お前、仕事はどうする……あ、そう……しかし、お前がそんなことを考えていたとは……冷やかしてないよ。ただ意外なだけで……俺一人じゃどうにもならねぇ事もあるし、リーダーとかにも相談してみるわ……分かった、任せとけって……また追って連絡する……おう、体調には気をつけろよ。じゃあな」


「えらい長電話やったけど、どないした?」
「……正義のやつから、物凄い相談事が舞い込んだよ」

 12月も中旬。街中でイルミネーションが輝き、恋人たちが幸せそうに微笑んでいる、とてもロマンチックな季節だ。茂たちが経営するレストランでも、定休日を利用して店内外の模様替えを行っていた。昌宏は店内でツリーの飾り付けをしていたが、作業も佳境に入った所で、スマートフォン風通信端末に着信が入ったのである。
 一旦席を外した彼が戻ってくる頃には、外でイルミネーションの設置をしていた達也、太一、智也、源太の4人も帰還していた。

「この際、兄ぃたちの助けも借りた方がいいかな」
「何だ松岡、俺に頼み事か?
「正確に言えば、正義から俺への頼み事だよ」
「デモキン様から松岡さんに、ですか」
「俺だけじゃどうにもならないからさ、源太たちの知恵も借りたいんだ」

 店の奥で作業をしていた由貴もかけつけ、全員が揃う。昌宏は真剣な表情で咳払いをし、言葉を紡ぎ始めた。

「先程、デモキンこと正義から電話があってな。どうしても手伝って欲しい事があるそうだ。本人は真剣に悩んでいるようだから、変に騒いだりしないように。特に長瀬と太一くんね」
「松岡くん酷い!」
「長瀬はいいけど、俺はいつでも真面目だぞ!」
「太一くんも酷い!」
「まぁまぁ落ち着いて……さて本題。正義は数週間後に迫っている、人間界での一大イベントにどうしても乗っかりたいらしい」
「何やねん、その“一大イベント”って」
「分かってるくせに」

 昌宏は、店内に設置されているテーブルの一つを示した。
 小さなサンタクロースのぬいぐるみと、これまた小さなモミの木が置いてある。


「12月25日、よし江さんを誘って人間界に来るそうだ」

 昌宏以外の人物が、このあと絶叫したのは言うまでもない。

「薄々察してはいたけど、まさか本当やとは思わんかった……」
「意外よね」
「あのデモキン様が、クリスマスデート……」

 デモキンが昌宏に頼み込んだ事。それは、『クリスマスデートの企画』だったのである。
 あまりの意外さに驚いたのか、しばらくの間は誰も口をきけなかった。
 その内、誰かが「やろう。全力であのカップルを応援しよう!」と言い出し、全員で「クリスマス大作戦(命名:城島 茂)」を遂行する事になった。

「悪魔がクリスマスって、何か変な気がするけど」
「長瀬、細かい事はどうでもええねん。正義とよし江さんの距離を1㎜でも縮めるのが、今回の目的やで」
「……うん!」

 紺色に染まりつつある空を、純白の無数の粒が舞う。
 粉雪が降る窓の外を見ながら、昌宏は、デートが成功することを願った。

「上手いこと、ホワイトクリスマスになればいいな」

 こうして、冬の物語が動き出した。





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<あとがき>
突貫作業で練り上げ、見切り発車で始動したクリスマススペシャル。
薄っぺらい内容ですが、出来れば見守っていただけるとありがたいです。
25日に完結予定。