二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Re: 怪物くん 『白銀色の孤独』 クリスマス短編、始動! ( No.72 )
- 日時: 2012/12/25 13:05
- 名前: 炎崎 獅織 ◆3ifmt4W30k (ID: 3M9YBG03)
<2nd snow 決まらない。>
デモキンは今、大いに頭を悩ませていた。
政治のことではない。少し前に過労で倒れかけて以来、「働き過ぎだから仕事をするな」と部下たちに止められてしまっている。
「もう時間がないではないか……」
自室のベッドの上で人間界のカレンダーと睨めっこをしていたが、とうとう投げ出してしまった。日付の所には黒い「×」が書き込まれ、赤い線で囲んだ日付までの残り時間を克明に示している。
人間界に存在する「クリスマス」という行事を知って以来、いつかはそれらしいことをしてみようと思ってはいた。本来はもっと別の内容であると分かっているが、「恋人たちが幸せな時を過ごす」という点に、図らずも大いに心惹かれてしまった。
デモキンにとっての“恋人”とは、無論、デモリーナのことである。
「誘う際の言葉も考えていないし、贈り物の内容も決めていない……」
昌宏を始めとした人間界の友人たちに助けを求めたが、今の所、何の音沙汰もない。基本的にノリの軽い人物が多く集まっているため、とんでもない企画が上がってくるのではないかと、いささか心配しているのも事実だった。
「結局の所、何一つ決まらない、か」
ベッドに寝転び、布団を頭から被った。
仕事から引き離されても、かえって何も出来ず、デートの内容も浮かんでこない。暗闇の中、脳裏に浮かぶのは“彼女”のことばかり。
「デモリーナのやつ、今頃何をしているのやら……」
デモキンが強制的に休暇を取るはめになった主な原因が、デモリーナだった。「見ていて心苦しいので
、頼むから休んでくれ」と直談判して来たかと思いきや、どこでどう手を回したのか、デモキンが一切政務に手をつけられない体制を整えてしまっていた。あまりの手際の良さに、怒るのも忘れた。
そんな彼女、今は何をしているのだろう。忙しさを増した仕事に励んでいるだろうか。一息入れている頃だろうか。
「女心一つ考えられんとは、我ながら情けない」
溜め息をつき、もう一度息を吸った。
「……!」
息が出来ない。身動きもできない。分厚い膜に包まれたようで、とても窮屈。デモキンはたちまちパニックに陥ってしまった。
「(どうなっているんだ、これは……!)」
膜の中で熱がこもり、頭が次第にぼうっとしてくる。叫ぼうにも、声が出ない。
新鮮な空気を求め、体が悲鳴を上げる。
「(苦しいっ……!)」
こういう時、事態は案外アッサリと解決することが多い。
いきなり膜ごと体を転がされ、うつぶせの体勢になった。膜が取り払われ、再び仰向けになる。
鼻をつままれ、顎をグッと持ち上げられ、唇に何か柔らかいものが触れた瞬間。
「ぐっ……」
空気を吹き込まれ、止まりかけの思考回路が覚醒。呼吸の仕方を思い出し、再び苦しくなって激しく咳き込んだ。
人工呼吸を施してくれた人物は、体を離した後も、デモキンの咳が治まるまで優しく背中をさすっていた。
「死ぬかと思った……」
「死なれたら困ります。布団に包まって、何をなさっていたんですか」
——そうか、布団に包まっていて、その端を自分の体で押さえつけていたから、抜け出すことが出来なかったのか。
原因が分かって一安心。助けてもらった礼を言おうと、デモキンは横を向いた。
妙に冷めた表情で彼を見返す、デモリーナがいた。
「お前か?」
「私ですが、何か」
「……ありがとう、な。俺のこと、助けてくれて」
「……どれだけ心配したと思ってんのよ!」
鈍器、というには少々軽めのもので後頭部を殴られ、デモキンの意識が一瞬だけ飛んだ。
「……あれ?」
気が付けば、デモリーナがいなくなっていた。先程まで彼女がいた場所には、分厚い封筒が一つ、置いてあった。これでデモキンの頭を叩いて消えたらしい。
「あいつにしては、随分乱暴だな」
殴られたことは彼女なりの愛情表現だと受け取り、後日改めて礼を言おうと決心した。
「……待てよ、俺を救ったのがデモリーナだったんだから……」
人工呼吸を施したのも、デモリーナ。唇に触れたものの正体は、彼女の唇だったのだ。
その後しばらく、顔を真っ赤にして再起不能状態になってしまったとか。
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<あとがき>
25日中には終わらないな、これ←
年内に完結できるよう、頑張ります。
……さて、録画してある怪物くんでも見ようかな。