二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Re: 怪物くん 『白銀色の孤独』 クリスマス短編、始動! ( No.73 )
- 日時: 2012/12/26 12:02
- 名前: 炎崎 獅織 ◆3ifmt4W30k (ID: 3M9YBG03)
<3rd snow 渡せない。>
「去り際にデモキン様のこと、殴っちゃったし」
「正義くんのことだもの。少々乱暴な愛情表現とでも受け取ったんじゃないかしら」
クリスマスに向けて何やら画策しているのは、デモキンだけではなかった。
「プレゼント、渡しにくいな……」
「大丈夫だって。何なら昌宏くんに聞いてみる?」
「松岡さんまで巻き込む訳にはいかないから」
「よし江ちゃん、相変わらず優しいわね」
「それ、褒め言葉?」
「褒め言葉以外に何があるって言うの」
城島邸のリビングで、炬燵に入りながら会話をする二人の女性がいた。由貴と、人間・高杉よし江に変身したデモリーナである。
「12月25日にあわせ、プレゼントを贈りたいがどうすればいいか」という相談を受け、由貴はよし江を呼び出した。『布団で呼吸困難事件(詳細は>>72にて)』の顛末を聞いた後、改めて話を元に戻す。
「……で、当日渡す予定のものは、これだけ?」
「まだ未完成だけど、手編みマフラーをプレゼントしようと思っていて」
「手堅く攻めてるわね。男は手作り系に弱いのよ」
炬燵の上には、よし江が手作りしたという、銀色のピアスが乗っていた。左右の2つでワンセット、剣の刃をイメージしたデザインに仕上がっている。本人曰く「昔から工作や編み物は得意だった」とか。
「正義くん、ピアスなんか付けるの?」
「あの人、意外とオシャレさんなの。ピアスもそうだし、時々髪を結んだりするし」
「なるほどね」
湯呑みのお茶を一口啜り、由貴は一息ついた。炬燵とお茶のダブル効果で、体の芯まで暖まる。
「プレゼントの内容は、問題なし。大喜びするわよ、絶対」
「残るは渡し方……」
由貴とよし江、二人揃って腕を組む。思考の為の沈黙が流れ、道路を走っていく車のエンジンがよく聞こえた。その中に混じり、雪遊びに興じている智也、太一、源太の歓声と悲鳴も響く。この日は大雪で、30㎝もの積雪を記録していた。
「下手に仕込むよりは、正面切って渡した方がいいんじゃない」
由貴が意見を述べると、よし江はすぐに首を振った。
「それは絶対無理!」
「なんで」
「……仮にも上司であり主君である人物に、そんな真正面からなんて」
「要するに、照れくさいのね」
図星。よし江は炬燵に顎を乗せ、意中の男性に渡す予定のピアスを見つめた。
「やったこと、ないもん」
「仮に正義くんも、よし江ちゃんにプレゼントを用意しているとするでしょ。彼も照れ屋さんだから、同じ状況に陥るんじゃない?」
“仮に”どころではなく、正義が本当にプレゼントを用意するつもりでいることは、源太を含め人間界にいる者たちの間の秘密である。
「それだと、互いに渡せなくてそのまま流れちゃいそう」
「うーむ、それもそうか……」
女二人の意見交換会は、その後もしばらく続いた。
クリスマスまで、残りわずか。
——————————————————————————————
<あとがき>
残りわずかどころか、すでに1日過ぎているけど気にしない←
週末までには、完結できそうです。