二次創作小説(映像)※倉庫ログ

第63話「終わりなき脅威!」 ( No.132 )
日時: 2013/03/07 17:09
名前: 世梨果 ◆t4bgREaztQ (ID: ekp2OEpi)


ピッピッピーーーッ!!


[ここで試合終了ーーっ!! 4−3で、雷門の勝利!! 遂に…遂にエイリア学園を倒しました!!]


円堂「やったぁぁああ!!」
「「「やったぁぁああ!!」」」


ウルビダは涙を流す。


ウルビダ「勝ちたかった……お父様の…お父様の為に…!」


吉良「…ヒロト。」

瞳・零「!」


吉良が此方まで降りてきて、グランに歩み寄る。


吉良「お前達を苦しめてすまなかった…」

円堂「……」

グラン「父さん…」

吉良「瞳子、零。私はあのエイリア石に取り憑かれていた。…お前達の…いや、お前達のチームのお陰でようやく分かった…」


吉良は申し訳が無さそうに言う。


瞳子「…父さん…!」

零「…」


零は腕を組み、目を伏せて微笑む。


吉良「そう、ジェネシス計画そのものが間違っていたのだ…」

ウルビダ「!!」


吉良の言葉にウルビダは大きく反応した。


ウルビダ「ふざけるな…!」


ウルビダは強く地面を踏むようにして立ち上がる。
そしてボールを蹴る体勢に。


ウルビダ「これほど愛し、尽くしてきた私達を…よりによってあなたが否定するなぁああ!!」


ウルビダは力一杯、吉良に向けてシュートを撃った。
吉良は受け入れるように真っ直ぐと立っている。


「「「!!」」」


ここではない場所でモニターを見ていた総理や理事長も驚く。


瞳子「お父さん!!」


——ドガァッ!!


「「「!!;」」」


グランが、吉良の前で腹でボールを受け止めていた。
雷門イレブンもジェネシスも驚きを隠せない。


ウルビダ「グラン…お前…」

グラン「……っ、…;」


グランは倒れた。


.


(OP)


.


「「「………」」」


みんなはグランの行動に騒然とする。


円堂「ヒロト!」


円堂が駆け寄る。


ウルビダ「……」
円堂「ヒロト、ヒロト! 大丈夫か…?」


ウルビダも、加害者とはいえ驚いていた。


円堂「ヒロト!」

グラン「円堂くん…っ、;」


円堂はヒロトの体を支え、零は肩に手を遣る。


ウルビダ「何故だグラン…」

円・グラン「…!」

ウルビダ「何故止めたんだァ!! そいつは私達の存在を否定したんだぞ!?」


吉良を指差すウルビダ。


ウルビダ「そいつを信じて、戦ってきた私達の存在を…! 私達は全てを懸けて戦ってきた……ただ、強くなる為に…! …それを今更〝間違っていた〟!? そんなことが許されるのか、グラン!!」


ウルビダは怒りを露わにしてグランに問い掛ける。


吉良「……(グラン「確かに、」!」

グラン「確かに、ウルビダの言う通りかもしれない…お前の気持ちも分かる…」


グランはよろけながらも立ち上がる。


グラン「でも、それでもこの人は…俺の大事な父さんなんだ!!」

吉良「!」

ウルビダ「!」

瞳・零「…」

グラン「勿論、本当の父さんじゃないことは分かってる。」


吉良に振り向くグラン。


グラン「〝ヒロト〟って名前が、ずっと前に死んだ、父さんの本当の息子だってことも…」
円堂「…」

鬼道「〝本当の息子〟…?」

瞳子「ええ…」


瞳子は悲しそうに肯定する。


グラン「っ!;」

円堂「ヒロト…」

グラン「っそれでも、構わなかった…」


ふらつくグランを支える円堂。


グラン「父さんが…俺に〝本当のヒロトの姿〟を、重ね合わせるだけでも…;」


.


『お日さま園』という施設。
施設の庭からは笑い声が聞こえる。

幼い姿のグラン——基、基山ヒロトは、ブランコに1人座っていた。


基山「……! 父さん!」


ヒロトは、プレゼントをたくさん抱えた吉良の姿を見ると、表情を明るく変えた。
他の子供達も吉良に駆け寄る。


.


グラン「父さんが施設に来る日が、楽しみでしょうがなかった…。父さんの喜ぶ顔を見ているだけで…嬉しかった…」


.


玲名「ねぇ父さん! 私学校でさァ、先生に褒められたんだよ!」


幼いウルビダ——八神玲名は、吉良に嬉しそうに話す。吉良も相槌を打ちながら、嬉しそうに聞いている。
不意に、吉良はヒロトを見た。ヒロトは照れたように笑っていた。


.


グラン「たとえ存在を否定されようと…父さんがもう、俺達のことを必要としなくなったとしても……」

ウルビダ「…」
グラン「それでも、父さんは…」

ジェネシス「……」
グラン「俺にはたった1人の父さんなんだ…!」

瞳子「……」

吉良「ヒロト…お前はそこまで私を…」


吉良は決心したように背筋を伸ばした。


続き ( No.133 )
日時: 2013/03/10 15:35
名前: 世梨果 ◆t4bgREaztQ (ID: ekp2OEpi)

吉良「私は間違っていた…私にはもう、お前に父さんと呼んで貰える資格などない…」


ボールを拾い、下投げでウルビダに渡した。


ウルビダ「……」

吉良「さぁ撃て。私に向かって撃てウルビダ。」


吉良は両手を広げ、ボールを受ける体勢に。


グラン「父さん!」

吉良「こんなことで、許して貰おうなどとは思っていない。」

ウルビダ「…」

吉良「だが少しでもお前の気が治まるのなら…」

ウルビダ「っ、」

吉良「さぁ、撃て。」

グラン「……」

瞳子「…」

零「…」


ウルビダと吉良はお互い見合う。
吉良は何も言わず、ウルビダは焦ったような表情になり、足を振り翳す。


ウルビダ「ぅぉおおおおおおっ…!!」

円堂「ウルビダ!!」

吉良「……」

ウルビダ「………っ…」


ウルビダは涙目になり、足から崩れ落ちる。


ウルビダ「撃てない……撃てるわけ、ない…! だって…だってあなたは…私にとっても、大切な父さんなんだ…!!」

吉良「……ウルビダ…」


そのまま泣き崩れ、嗚咽を洩らす。
吉良はゆっくりと腕を降ろし、ジェネシス達も涙を浮かべる。


吉良「私は人として恥ずかしい…こんなにも私を思ってくれる子供達を…単なる復讐の道具に…」


吉良は膝を折り、グラウンドにしゃがみ込んだ。


円・零・グラン「……」

瞳子「……」


吉良に、鬼瓦が歩み寄った。


鬼瓦「話して貰えませんか、吉良さん。何故、ジェネシス計画などというものを企てたのか…どこで道を誤ってしまったのか…」


キーブとクィールがウルビダに手を貸して起こしてやる。


鬼瓦「巻き込んでしまったあの子達の為にも…」

吉良「…あなたも知っている通りに、私にはヒロトという息子がいた…」


吉良はぽつりぽつりと話し始めた。


吉良「とてもサッカーの好きな子で、夢はプロの選手になることだった…、…」

零「…でも兄は、サッカー留学に出た海外で、謎の死を遂げました。」


言葉を詰まらせた吉良の代わりに、笑顔の零が話を進める。


.


(ここでの〝ヒロト〟表記は吉良ヒロトになります。ちなみに基山ヒロトは〝基山〟)


ヒロト「はい、お守り。」

零「……」


リュックを背負い、スーツケースを傍らに、家を出ようとしている吉良ヒロト。
吉良ヒロトは、幼い零に黒地に白の模様のサッカーボールのストラップを渡した。


ヒロト「離れちゃうけど、僕は零のことずっと思ってるから…。…ほら、お揃い。」


吉良ヒロトは微笑み、普通の白地に黒模様のサッカーボールのキーホルダーが付いたリュックを見せた。


ヒロト「父さんと瞳子が寂しがらないように、守ってあげてね。」

零「……」

ヒロト「約束だよ。」

零「…!」


そう言って2人は小指を結び、約束した。


.



零「最初で最後のプレゼントは、形見になっちゃいましたがね。」


零は自嘲的な笑みで、いつも持っていた携帯の、黒地に白い五角形のサッカーボールのストラップを、カチャリと音を立てて見遣った。


零「父さんは真相の解明を求めて、何度も警察に掛け合いました。…でも、事件に政府要人が関わっていたらしく、結局、兄は事故死として処理されました。…鬼瓦さんも、ここまでは知ってますよね。」

鬼瓦「ああ、10年も前の担当だがな。」


鬼瓦に確認を入れる零。


吉良「あの時の悔しさは、今でもはっきり覚えている。」

瞳子「……」

吉良「息子に何もしてやれなかった悔しさ…そして、あの喪失感…」


瞳子は吉良に歩み寄る。


吉良「息子を失い、心に大きな穴が開いた私は、生きる気力さえ失っていた…」

瞳子「……」

吉良「そんな時だった…瞳子が私に、親を亡くした子供達の施設——『お日さま園』を進めてくれたのは…」


吉良は過去を思い出しながら話す。


吉良「初めは、娘の頼みと思い作ったお日さま園…子供達の笑顔に、私の心の傷も、癒えていったのだ…」

ジェネシス「……」

吉良「本当にお前達には感謝している…」

グラン「…」
吉良「お前達だけが、私の生き甲斐だった…」

円・グラン「……」


ジェネシス、グランは俯いて悲しそうにする。


吉良「…そして、5年前…隕石の落下。それがエイリア石。エイリア石の分析を始めた私達は、すぐにその恐るべきエナジーに気が付いた。…そして、私はエイリア石の魅力に取り憑かれていった…その素晴らしい力に…
しかし同時に、それまで心の奥底に押し殺していた復讐心が、再び込み上げてきたんだ…」


.


瞳子「復讐!? 復讐ってどういうこと!?」

吉良「エイリア石だ…エイリア石さえあれば、私から息子を奪った連中に復讐できる…。…いや、それだけではない…私の思うまま支配出来る…!」

瞳子「……お父さん…」


零「……」


幼い零は心配そうにではなく、ただ2人の会話を影で聞いていた。


.


続き ( No.134 )
日時: 2013/02/27 19:17
名前: 世梨果 ◆t4bgREaztQ (ID: ekp2OEpi)

.


吉良「すまない…本当にみんなすまなかった…」

瞳子「…」
吉良「私が、愚かだった…」
零・グラン「……」

グラン「父さん…」


グランは辛そうに言葉を洩らす。


「「「……」」」


鬼道「……監督。」


鬼道がその場の空気を割るようにぽつりと言う。


鬼道「本当にそれだけなんですか?」

瞳子「ぇ…」

鬼道「監督は全て話すと言いました。…でも、まだ何か言っていないことがあるんじゃないですか?」


鬼道は零に目を遣り、瞳子や雷門イレブンもそれに釣られる。
零は視線を感じ取り、ゆっくりと目を開いて鬼道を見据えた。


零「…別にいいっすよ、話したって。もう会うこともないでしょうし。」

瞳子「! …」


瞳子の考えを見抜いたかのように、零は冷笑して言った。


瞳子「……知りたいのなら話すわ。…零は、私達とは血が繋がっていないの。」

「「「!!」」」


驚く雷門イレブン。
吉良親子、零、鬼瓦、ジェネシス達は至って冷静でいる。


瞳子「捨て子だったの。遠征で東京へ行っていた兄が、傷だらけの幼い零を拾ってきた…」


橙色の傘を差した吉良ヒロトが、幼い零に手を差し伸べている。

『捨て子』という単語に、木暮は少し反応していた。


鬼道「……」
瞳子「母親から虐待を受け、何も信じられなかった零の縋る先は兄だった。その兄がいなくなって、零は必死に勉強をし始めたわ。…恐らく、私達の為に。——強くなる為に。
兄との約束を果たすことが、自分に出来る全てだと思って…」


瞳子が話し終えると、一同は沈黙した。
だが当の本人——零だけは呆れたような表情。


零「はいっ。これが、あんたの知りたかった〝全て〟です。」


空気を変えるように手を叩き、ニッコリと笑みを浮かべる零。


零「…何かいいことあった? いつか言いましたよね、『深く知る必要はない』って。空気が濁るだけでしょ、こんな話。」

円・鬼「……」


〝口角をあげているだけ〟の笑みで零は言う。


零「……これからは気をつけたらどうです?」

円堂「零。」


名前を呼ばれ円堂を見る零。


円堂「…話してくれてありがとな。お前のこと知れて、嬉しいよ。」

零「…」


ニコッと笑う円堂に、拍子抜けしたような顔の零。
だがすぐにフッと鼻で笑い、「ほんと、天然っていうか鈍感っていうか…」と呆れた。


研崎「……フッ。」


研崎は吉良達を見下げ、アタッシュケースを持ち出しその場を去った。


円堂「……っ!!」


グラウンドが再び大きく揺れた。


「「「!!」」」

鬼道「何だ…!?」

土門「地震か!?」

零「……っ!」


零は焦ったように吉良の居た場所——先ほど、研崎が立ち去った場所を睨むように見る。
研崎の姿が確認出来ないと、零は落ち着き、笑顔になる。


零「あーあ、逃げられちゃった。」

鬼瓦「!」


.


外から見るとよく分かるが、グラウンドだけでなく、建物全体が揺れていた。
理事長の見ているモニターも調子が悪くなる。


雷門「どうした!? 何が起こったんだ!」


.


段々と瓦礫が落ちて来る。


響木「いかん! 崩れるぞ!」

秋「みんな、出口へ!」


秋がそう言うと、道を阻むように瓦礫が出口を塞いだ。


土門「出口を…塞がれた…;」

「「「……」」」


絶体絶命と思われたところに、ハイスピードのキャラバンが飛び出してきた。
キャラバンは大胆な停車をし、運転席から古株が顔を出す。


古株「みんな! 早く乗るんだ!」

円堂「古株さん!」


こうしている間にも着々と施設は崩れている。
みんなは雷門ジェネシス関係なく、急いでキャラバンに乗り込んでいった。


グラン「! 父さん!」

円堂「ヒロト!」


最後に響木、円堂、瞳子、零、グランが乗ろうとしたところで、グランは吉良が乗っていないことに気付いた。
グランは吉良に駆け寄る。


吉良「………(グラン「父さん! 逃げるんだ、早く!」


グランは手を差し出すが、吉良は応えない。
グランに続き円堂も来ていた。


吉良「…私のことはいい。」


もう施設は崩壊寸前。
瞳子も駆け寄ろうとしている。


吉良「私は、ここでエイリア石の最後を見届ける…それが、お前達に対するせめてもの償いだ…」

グラン「……」


零「っ!」


入り口に居た零はキャラバンを降り、瞳子を通り過ぎて吉良の元へ駆け寄る。
そのまま有無を言わさず吉良の手を取り、キャラバンへ走った。

零は走りながら言う。


零「死んで楽しようとするな。本当に償いたいんなら、その罪を一生背負って生きて下さい…!」

吉良「…!」


.


(CM)


.


続き ( No.135 )
日時: 2013/02/27 19:26
名前: 世梨果 ◆t4bgREaztQ (ID: ekp2OEpi)



(抜かし)


.


やがてパトカーと護送車がやって来た。


警官「鬼瓦刑事、ジェミニストーム、及び、イプシロンの子供達、無事保護しました!」


警官が敬礼し、鬼瓦に報告する。


円堂「……」

鬼瓦「ご苦労。」

零「プロミネンスとダイヤモンドダストは、こっちで何とかしますんで。」

警官「了解。」


鬼瓦の隣にいた零が、警官に告げた。


グラン「……」

鬼瓦「…さぁ、行こうか。」


鬼瓦は吉良星二郎とジェネシスに伝える。
吉良は黙って頷いた。


瞳子「お父さん。」

吉良「…ありがとう、瞳子。お前のお陰で目が覚めたよ…」

円堂「……(グラン「父さん!」!」


グランが吉良を呼ぶ。


グラン「俺…待ってるから! 父さんが帰って来るまで、ずっと待ってるから…!」


グランは涙を流しながら吉良に呼びかけた。
吉良も薄っすらと涙を浮かべ、ヒロトの名を零した。

吉良はパトカーに乗り、護送されていった。


ジェネシス「……」

鬼瓦「さぁ、キミ達も行こう。」


鬼瓦がそう言うと、グラン以外のジェネシスは護送車へ歩いていく。


グラン「……」


瞳子「……響木監督。円堂くん達のこと、お願いしても宜しいでしょうか…
…ヒロト達の傍にいたいんです。」

響木「ああ。」


了承を得ると、瞳子は響木に頭を下げ、円堂達を見た。


円堂「!」


雷門イレブンに歩み寄る瞳子。


瞳子「……ありがとう、みんな…ここまで来れたのも、みんながいてくれたからこそ。…感謝してるわ。本当に、ありがとう…」

「「「…」」」


瞳子は雷門イレブンに頭を下げる。


円堂「監督…」

一之瀬「監督…」

壁山「監督ぅ…」

土門「監督っ…」


雷門イレブンは監督、と瞳子を呼ぶ。
瞳子は顔を上げ、みんなの顔を見た。


「「「……」」」

円堂「……((ニコッ」

瞳子「……クス」


円堂が笑いかけ、応えるように笑みを返す瞳子。
表情を引き締め、髪を靡かせてグランに歩み寄った。


瞳子「…さぁ、行きましょう。」

グラン「…… !」


グランには、瞳子の手が差し出されていた。


グラン「……うん。」


グランは瞳子と手を繋ぎ、護送車へ向かった。
悟曽者の前で、後ろに振り返るグラン。


グラン「…円堂くん。」

円堂「……」

グラン「……また、会えるよね…」

円堂「…ああ、もちろんさ! サッカーさえ続けていれば、絶対会える…!」

グラン「………うん…!」


円堂は強く、優しく微笑む。
グランは安心したように笑った。

瞳子は護送車の傍らにいる零を見た。


瞳子「…あなたは、どうするの?」

零「僕はまだキャラバンですよ。」


済ました顔で言う零。
だが次の一言は少し重たく、目を細めて言った。


零「…まだ依頼は、終わってませんから…」


.


(抜かし)


.


帰路の途中、キャラバンは怪しい音を立てて止まった。
エンジンからは煙があがっている。


古株「無理させ過ぎたかァ…」


古株と響木はキャラバンを降り、修理に掛かった。

雷門イレブンは外の様子を眺める。


土門「結構時間掛かりそうだな…」

木暮「…俺、」


木暮が話し出した。


木暮「やっぱりこのチームに入って良かった。」

土門「? 何だよいきなり…」

木暮「だってほら俺…母ちゃんのこと、あったろ?」

春奈「!」


反応する春奈。


木暮「俺、人のことが信じられなくなったって…」

春奈「……」
木暮「けどさ、」

零「……」
木暮「みんなと一緒に戦って、分かったんだ。…人は、信じなきゃ駄目だって!」


木暮は席を降りる。


木暮「俺、このチームが大好きだ! 本当に入って良かったと思ってる!」

綱海「だな!」

立・リカ「……」

塔・吹「……」

春奈「…木暮くん…」


春奈は嬉しそうに目を細め、木暮に歩み寄る。
自分よりも頭1つ分小さい木暮を見下ろし、手を差し出した。


木暮「! ……」


木暮は春奈と握手した。
——が、


木暮「…? 、……ひぇっ!;」

春奈「引っ掛かった引っ掛かったァ!」


2人の手からするりとカエルが飛び出し、木暮の頭に乗った。


春奈「私も1回やってみたかったんだァ。ウッシッシー♪」


春奈は木暮の真似をして笑う。——やっぱり、信じた俺が馬鹿だったぁ…。涙声で言う木暮。
雷門イレブンは2人を微笑ましげに見ていた。


.


外からもイレブンの楽しげな笑い声は聞こえていた。


.


ずっと車内にいては疲れるため、円堂達は一旦外に出た。
塔子は伸びをする。


塔子「…で、みんなはこれからどうするんだ?」

円堂「これから?」


円堂は意味が分からずキョトンする。


塔子「だから、雷門中に帰った後だよ。エイリア学園は倒したわけだしさ。」

円堂「!」

夏未「確かにそうね…(リカ「ウチは決まってんねんで!」


みんなリカの方を見る。
リカは一之瀬にくっついて、恍惚の表情で語る。


リカ「ダーリンとお好み焼き焼きながら幸せな家庭作るんや…」

一之瀬「だから、その話は…;」

リカ「そんな照れんでもええやぁん!」


やんわりと否定しようとする一之瀬の話を聞かないリカに、マネージャー達は呆れた。


続き ( No.136 )
日時: 2013/02/27 19:42
名前: 世梨果 ◆t4bgREaztQ (ID: ekp2OEpi)



円堂「立向居はどうするんだ?」

立向居「俺ですか? 俺は、陽花戸中に帰ろうと思っています。」

円堂「陽花戸中へ?」

立向居「はい。…それで、もっと特訓して、いつか強くなった姿を、円堂さんに見て貰うんです!
…その時は負けませんよ!?」


いつになく強気に言う立向居。


立向居「円堂さんのメガトンヘッド、必ず止めてみせます!」

円堂「ああ! 楽しみにしてるぜ!」

綱海「…そんじゃ俺も帰るかな。」


立向居の肩を叩いて、綱海は話し始めた。


綱海「そろそろ海が恋しくなってきた頃だしよ。」

吹雪「僕も、白恋中のみんなが待ってるだろうし…」

円堂「ぁ…吹雪もか…」

壁山「みんな、帰っちゃうんすね…」


円堂と壁山は寂しそうに言う。
吹雪は少し離れて隣にいる零に視線を向けた。


吹雪「零は、どうするの?」

零「んー…またぶらぶらしとこうかな。」

吹雪「もう…」


軽い感じに言う零に、吹雪は相変わらず、という風に呆れた。


秋「塔子さんはどうするの?」

塔子「アタシ? うーん…」


頭の上に手を組んで少し考える。


塔子「リカん家の隣で、円堂とたこ焼き屋さんやろうかなー…」
壁山「!」

秋・夏「え!?」

塔子「くすっ、ジョーダンだよジョーダン。ははははははっ!」

秋・夏「…//」


ケラケラと笑う塔子に、2人は顔を真っ赤にして俯いた。

そのとき、雰囲気とはなかなか合わない、低い爆発音が。


「「「?」」」


集まる視線の先には、顔が汚れた古株と響木。


古株「駄目だ…こりゃ、もう少し時間が掛かりそうだ…」


.


というわけで、サッカーをすることに。
最初は見ていたマネージャー達も、いつの間にか参加していた。


「こっちだー!」「きゃあっ!」「あはははっ!」


零「………」


1人取り残された零は、ドリンクの傍で胡坐を掻いてみんなを見ている。


「零ーっ!」

零「…」


円堂がドリンクを飲みに、零のところへ駆け寄る。


円堂「零はやらないのか?」

零「…別に、やる必要もないでしょうに。何でわざわざ疲れなきゃなんないんだか。」

円堂「ははっ。」


円堂はドリンクを手に取り、零の言葉に苦笑しながらドリンクを飲んだ。


円堂「…ぷはっ!」

零「……」

円堂「……なぁ。」

零「…!」


円堂をさして気にすることなくみんなを眺めていた零に、円堂は話し掛ける。
零は横目で円堂を見た。


円堂「ごたごたしてて言えなかったけどさ…、…色々と、ありがとな。
…ジェネシス戦のとき、零が言ってくれなかったら、きっと俺、駄目だったよ。」


円堂はジェネシス戦でのことを思い出しながら言う。
零は特に表情も変えず、笑みを崩さないで円堂の顔を見ながら聞いていた。


円堂「今回だけじゃない…。言葉は冷たいし、厳しいし、何考えてるのか全然分からない。でも本当は、誰も見てないところで、誰よりも努力してるんじゃないかって、俺思うんだ。」

零「……」
円堂「強くなるには、誰1人欠けちゃいけない……ここには来られなかったみんなだって、いなかったら俺達はここにはいないはずだ。…だから、零だってここにいる。零の努力も、誰も見てなくたって、欠けていちゃ駄目なんだ。
ほんとにありがとう。ここまで俺達を強くしてくれて。」


ふわりと零に笑う円堂。
零はキョトンとして、またいつもの笑みに戻った。


零「…よくもまぁ、んな恥ずかしい台詞を長々と言えますね。んなこと僕にじゃなく、マネージャーにでも言ってやって下さいよ。」


涼しい声で言う零。呆れたように笑っている。


円堂「じゃ、俺行ってくる!」

零「……」


円堂はそう言ってみんなのところへ戻った。
零は円堂を見届け、笑みを崩して一息つく。


零「……クス」


肘を突き、微笑ましげにサッカーをするみんなを見た。


.


雷門中——


雷門中に戻ってきた円堂達。
だが学校はいつもの明るさはなく、霧掛かって薄暗かった。


壁山「あれー、変っすねー。…誰も、いないんすかねぇ…」


壁山の言う通り、生徒どころか、人1人さえいない。


「「「……;」」」


異様な空気に呑まれ、一同は不安そうに校舎を見つめている。
円堂は意を決し、前に進んだ。

すると、霧の中から人影が現れる。
人影は決して遅くはないスピードで、此方へ歩み寄ってくる。


鬼道「あいつは…!」

零「研崎…!」


零は鬼道の言葉を紡ぐように長身痩躯の男——研崎の名を呼んだ。

やがて研崎は一同にだいぶ近付き、姿もはっきりと見えてくる。


研崎「おやおや、お嬢様はついてきていたのですか。…お待ちしていましたよ、雷門の皆さん。」


零の存在を確かめて、雷門イレブンに話を向ける研崎。


研崎「皆さんにはまだ…最後の戦いが残っていますからね。」

円堂「最後の…戦い?」

零「やっぱり、あんた…」


零が笑みを崩し研崎を睨むと、いつの間にか研崎の背後にいた、黒いパーカーを着た11人の少年達。
円堂も彼等に気付く。


「「「…?」」」


少年達の中の中心辺りにいた少年が歩み寄ってきた。


円堂「………」

???「……」


少年はフードを取る。


円堂「、! 風丸!?」


フードの下は、髪を解き、目つきが鋭くなっている風丸だった。


零「!」

鬼道「あれは…」

吹雪「… !」


吹雪は少年達の中に、心当たりのある人物を発見した。
彼もフードを取る。


秋「染岡くん!;」

吹雪「嘘…!;」


2人を初めとし、他のメンバーも驚愕の色を浮かべる。


土門「っ、影野、半田!」

壁山「栗松、少林!」


他の少年達もフードを取り、各々の姿を露にしていた。


風丸「…久しぶりだな、円堂。」

円堂「ど、どういうことなんだ…?;」


.


(ED)


.


次回予告 ( No.137 )
日時: 2013/01/09 23:37
名前: 世梨果 ◆t4bgREaztQ (ID: ekp2OEpi)




風丸、染岡…お前達のサッカーって、こういうものだったのか!?

俺達は戦う…俺達のサッカーを取り戻す為に、お前達に勝つ!



次回イナズマイレブン、

「激突!雷門vs雷門!!」

これが超次元サッカーだ!!



キャプテン、今日の格言!

「サッカーを続けていれば、必ずまた会える!」

以上!!