二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Re: イナGO天国から聞こえる〜出逢うべき双子〜 ( No.20 )
- 日時: 2012/04/18 18:13
- 名前: 冬ノ華 神ノ音 ◆Ui8SfUmIUc (ID: 4fy95xCZ)
4話 頼む…
「ホラ、水。大丈夫か?顔色悪いけど…」
拓人はテーブルの上に置かれた水を飲んだ。
豹牙が心配そうにしている。それもそうだ。豹牙は拓人を心から尊敬しているのである。
これは数年前の話である。
豹牙が住んでいたムラは一割にも満たない小さな小さなムラであった。豹牙はある苦しみと闘っていた。
チカラが体の中で膨張し、それが体に異変を齎していた。
小さなムラではチカラの事を知っている者がいなく、
生まれたときに儀式も行われなかったのである。
この儀式が行われないと、チカラが抑えきれないため最悪の場合
死に至ることがある。しかも儀式が行われていないとチカラの所為で
激痛が奔るのである。
そんな苦しみと闘っていた豹牙が住むムラに、火が放たれた。
燃えさかる炎が家、畑を包んでいく。
豹牙は動けなかった。痛みが全身に奔り、体の自由が利かなくなっていく。
「うっ…ゲホッゲホッ…」
煙を無意識に吸い込んでしまう。
赤い炎が家の家具から何もかもを包み、燃えてゆく。
豹牙の思い出が何もかも失われてゆく。
それを豹牙はただ見ていた。
「ゲホッ…うっ……」
一酸化炭素を吸いすぎてしまい、豹牙がその場に倒れる。
眼から光が失われていく。
「大丈夫ですか—っ!!生存者はいませんか—っ!!!」
炎の赤に包まれていた部屋に光が差す。
ドアが外から何者かによって壊される。
外から人が数名現れた。
「あそこに人が!助けるぞっ!」
その掛け声と共に豹牙に向かって人が来る。
「大丈夫か?俺の声が聞こえるか?」
豹牙の体を揺らす。豹牙がうっすらと眼を開く。
「んっ…」
少し開いた眼から見えたのは、ウェーブがかった髪だった。
「生きているぞっ!救助だっ!!」
豹牙を抱き抱え、出ていく。その人物こそ
拓人であった。
拓人達、狩人は女王の手によってまたムラが燃やされていると
噂を聞きつけ、駆け付けたのである。
「…少し駆け付けるのが遅かったな…
もう少し早ければ防げたものを—」
「起きてしまったものは仕方ない…言うだけ無駄だ」
狩人達は生存者を見ながら呟いた。
拓人は頭に包帯を巻いていた。豹牙を助けるときに落ちてくる
落下物を避けれなかったのである。
拓人は火傷している豹牙の治療にあたっていた。
「これくらいなら、治るか…」
そう呟いた瞬間、豹牙が眼を覚ました。
そして体を起こす。
「うっ…」
だが激痛に顔を歪ました。
「駄目だよ!今動いては…」
拓人が無理やり起きようとする豹牙を止める。
痛みに耐えながら豹牙が口を開く。
「…アンタが俺を助けたのか…?」
「え?」
思いがけない質問に拓人が驚いた表情を浮かべる。
「チカラがあれば…あんなこともできるのか?
俺は…強くなりたい…!強くなって…ある人を見返したいんだ!!
お願いだ…俺を強くしてくれ…!」
それを黙って聞いていた、拓人がおもむろに口を開く。
「このムラを焼いたのは…女王だ…
俺はそいつを殺したいと思っている。
お前がそう思うなら俺たちは歓迎するが…
お前はそれでいいのか?」
豹牙は迷いもなく答えた。
「士郎を見返せるならそれでも構わない——」