二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re: イナGO天国から聞こえる〜出逢うべき双子〜 ( No.22 )
日時: 2012/04/20 16:57
名前: 冬ノ華 神ノ音 ◆Ui8SfUmIUc (ID: tf4uw3Mj)



   5話 憎しみに打ち勝つ。
  
 俺はアンタを見返す。俺は強くなってアンタを倒す。
 憎しみは日々豹牙の中で大きくなっていく。
 よっぽど士郎という男の存在は豹牙にとって大きな存在だったんだろう。だが拓人は復讐をあまり快く思っていなかった。
 「豹牙…思うんだが、復讐じゃなくてもいいんじゃないのか?」
 「どういう意味だ…?拓人。ちゃんと言ってくれ」
 拓人は痛む傷を抑えながら、重い口を開く。
 「士郎という男はお前がチカラで苦しんでいるときに何処かへ
  行ってしまった——そう言っただろ?それって偶然じゃないのか?
  大体、士郎さんがチカラを持っているという確証も何もないじゃないか——…」
 豹牙の顔が歪んでいく。そして、強く机をたたき叫ぶ。
 「五月蠅いっ!!俺は決めたんだ!確かにあの人は俺を
  置いて行った!数日前から様子がおかしかったんだ!
  俺にはわかる!彼奴は——…」
 感情的になる豹牙を見た拓人もまた感情的になる。
 「俺はチカラはどう使おうと構わないとは言った。だが 
  こんなしょうもないことに使うなんて無駄だ!
  大体士郎さんが仮にも狩人だったらどうする?
  そうでなくても、無駄な血が流れるのを俺は見たくはない!!」
 豹牙が立ち上がり、自分の座っていた椅子をガンッと蹴る。
 椅子が倒れ、鈍い音がする。
 「アンタなんて大ッキライだ!!」
 出て行こうとする豹牙がそう吐き捨てる。
 そしてバンッとドアを開け、出て行ってしまった。
 拓人はその様子を黙ってみていた。
 それから酒場は沈黙に包まれていた。
 豹牙がこうやってキレることはしばしあったが、豹牙が慕っている
 拓人と喧嘩することは一度もなかったからである。
 何より今、拓人の機嫌が悪い。
 「…酒、貰えるか…?」
 沈黙を破ったのは拓人であった。マスターの処へ行き、酒を注文する。この国では14歳から酒が飲めるのである。
 「ヤケ酒はダメだぞ。ただでさえ酒弱いんだから」
 「わかっている」
 忠告するマスターが酒を出す。拓人はそれを受け取り、席に着く。
 拓人は酒癖がはっきり言って悪い。こうイライラしているときは
 なおさらである。
 拓人は貰った酒を啜る。酒の匂いが口いっぱいに広がる。
 そしてもう一回酒に口を付けた。
 

 「ここに『拓人』っていう奴がいるって聞いたんだが
  誰だそいつは」
 ガチャ…とドアを開き、現れたのは少年だった。
 薄汚れた上着にズボン、上着の中には赤色のTシャツを着ているようだ。その少年は店内を見渡している。
 「拓人は俺の事だが。キミは誰だ?名乗ってもらおうか」
 「アンタか…噂の拓人ってのは」
 拓人を無視し、少年が拓人が座っているテーブルに近づく。
 「だから名前を…」
 「助けてほしい人がいる」
 言いかける拓人の言葉を遮り、少年がぶっきらぼうにそういう。
 「頼む…助けてほしい奴がいるんだ…
  


  俺の名は京介。頼む…
  
  天馬を助けてくれ………!」