二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re: イナGO天国から聞こえる〜出逢うべき双子〜 ( No.27 )
日時: 2012/04/23 11:55
名前: 冬ノ華 神ノ音 ◆Ui8SfUmIUc (ID: hAeym9pF)



   8話 協奏曲を奏でる男
 
  拓人と京介はトレインに乗り、2時間乗車した後
  降りて歩いていた。京介のムラまではあと2時間も歩かなくてはいけない。今は森を抜けている。
  この森はよく猛獣が出るという噂が立っており、実際に猛獣に咬まれて死に至った者もいる。
  まぁ拓人はチカラを持っているため問題ないと…
  思ったのだが。
  「チッ…アンタ強いんじゃないのかよ」
  「五月蠅い…子供がいるのに本気出せるか…!」
  いきなりになるが仕方がないと思ってくれ。
  文字数の問題なんだよ!by作者
  拓人・京介の前には一匹の猛獣。二人の後ろには少女が座っている。この少女の所為で動けないのだ。もし二人が動いてこの児に何かあれば…と考えると動けないのである。
  少女を護りながら戦う。その戦況は辛いものであった。
  この猛獣は動きが俊敏なため防戦一方となってしまう。
  (どうするか…あまりこの子に怖い思いはさせたくない…)
  いきなり猛獣が牙を剥きながら拓人のほうへ突っ込んでゆく。
  拓人は迫ってくる牙を腰に携えていた剣で受け止めて弾く。
  後ろへ下がり、距離を置いた瞬間。
  猛獣がその場から姿を消した。
  「なっ…」
  『少女の処だ。拓人!』」
  頭から奏人の声が響き拓人は少女を見る。
  少女は気付いていない。後ろに猛獣がいることを——
  拓人はチッと舌打ちをし、猛スピードで少女の処へ向かう。
  (間に合わない——)
  猛獣は牙を剥き、少女に近づく。
  拓人が諦めた瞬間——
  『ったくよお!世話の焼ける奴だぜッ!!』
  ソウトが呆れ顔でそう言う。ソウトは具現化し、少女の方へ向かう。ソウトはギリギリで少女を助けたのである。
  「お前…」
  『ほうらッ!ボケっとしてねェでさっさと倒せ!!』
  バンッと背中を叩かれる。拓人はフッと微笑み、真剣な表情をする。
  「いくぞ…」
  奏人とソウトが顔を見上げ、笑う。
  「奏人の重み。ソプラノ」
  拓人がそう詠唱すると、猛獣の上に小さな音符がたくさん現れ、
  猛獣の体に纏わりつく。
  纏わりついた後、その音符たちが猛獣の体を締め付ける。
  猛獣は呻き声を上げた。
  「アルト」
  また詠唱する。すると、さっきより強く猛獣の体を締め付ける。
  猛獣は痛みに耐えられず、叫ぶ。
  拓人はその声を聞き、また詠唱する。
  「テヌート」
  やはり前より強く体を締め付ける。
  この技は音が低くなるにつれて、体を締め付ける。
  其の者は痛みに耐えられず、動けなくなるという———
  「さて…最後の音楽としようか」
  動けなくなった猛獣を見、手を指揮者の様に滑らかに動かす。
  「協奏曲 〜終わりの果て〜」
  滑らかに動く指から旋律が溢れ出る。
  旋律は猛獣の体に降り注ぐ。
  美しい旋律が猛獣に痛みを与える。
  拓人は指を動かす。
  そして2小節が終わり、3小節目に行こうとしたとき
  「リピート」
  拓人が詠唱する。また一小節目から曲が始まった。
  さらに旋律が猛獣の体に降り注ぐ。
  猛獣が叫ぶ。でも旋律は鳴り止まない。
  2小節目が終わると拓人が不敵に微笑んだ。
  「コーダ」
  溢れんばかりの旋律が猛獣の体の自由を奪っていく。
  旋律が猛獣の体を埋め尽くしたとき、曲は終わりを告げた。
  猛獣は息絶え、倒れる。
  「コーダは曲の終わりを告げる。でも俺のコーダは曲の終わりと
   命の終わりを告げる。どうだった?
   終わりの協奏曲のお味は」