二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re: イナGO天国から聞こえる〜出逢うべき双子〜アンケ実施中 ( No.294 )
日時: 2012/08/26 19:18
名前: 冬ノ華 神ノ音 ◆Ui8SfUmIUc (ID: aHBp6JXa)
参照: http://mb1.net4u.org/bbs/kakiko01/image/610jpg.html




典人の物語









 「ああ、面倒くせ〜何が楽しいんだよ」

 
 
 
 
 
 
 
 




 
 何時もそんな事ばかり言っていた。何もする気がなく、只遊び呆けていた。勉強もせず、遊んでいた。遊んではいたが理由などなかった。暇だから遊ぶ。そう言う暮らしだった。その為、真剣に何かに取り組むと言う事を知らなかった。知る機会を得なかった。
 勿論親はそれを許しはしなかった。叱り、言い続けた。だが、聞く耳を持たなかった。無視し続けた。ある時は反抗した。そんな倉間に親は頭を抱えた。そんな悪い子に育てた覚えはない、育てられた覚えなんかねぇ、何時も聞く言い合いだった。そんな状態が続くと親も呆れ果てて何も言わなくなった。倉間は何も思わなかった。寧ろ良い機会だと思い、親に何も言わず出て行ったのだ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 特に、する事はなかった。友達の家を転々とし、夜の街を練り歩いた。楽しくはなかった。でも、あの家に戻る気はなかった。戻っても居場所などある筈がないから。自分の居場所など作っている筈がないから。
 「ああ、だりぃ。何か無い訳?」
 「何がよ。こんなに人に迷惑かけてよく言えるね、典人ちゃんよ」
 友達もワルではあったが、此処まで自由な倉間に呆れを覚えていた。だが、こんな暮らしをやめる気などさらさ無い倉間は何かを求めていた。
 「例えばさー強い奴とか居ない訳?」
 「知らないよ。自分で探しなよ、典人ちゃん。子供じゃないんだからさ」
 少しの間。何も答えない、幼い倉間。
 「………ハァ」
 友達は溜息を零し、部屋から出て行ってしまった。一人になってしまった倉間はぐうたらに過ごしていたが、それは友達の家。居心地が悪くなったのだろうか、金を置いて出て行った。これで何軒目であろうか。居ては捨てられる。毎度の事だった。
 「どうっすかなぁ……」
 金を置いていった為、無駄遣いは出来ない。バイトをするか。そうは考えたが長続きする筈がないなと思い、やめた。倉間はこれまで幾度とバイトを試みたが長続きはしなかった。客の些細な言葉に苛立ち、殴った事もあった。店長がムカつく、そう言う理由などで。
 我儘である。いつまでも子供な倉間。
 そんな理由から、又居候を始めた。今度の友達はバイトをしている奴だった。ワルではなかったため、腹が立つことも多かったが、出て行く訳にはいかなかった。タダで飯が食え、しかも美味しい。出て行きたくなかった。
 その友達の名前は速水鶴正と言った。メガネをかけており、茶髪を結っている少年だった。水色の髪をぶっきらぼうにハネさせている倉間とは違い、真面目なやつだった。
 「倉間くん、家に帰らなくていいんですか?」
 「うるせぇな、いいんだよ」
 速水は倉間の事を心配していたが、倉間は聞き飽きたのかわずらわしそうに返した。速水はそんな倉間に文句一つ言わず、飯を出していた。
 だが、そんな生活はまた直ぐに終わりを告げた。
 速水の愚痴を聞いてしまったからである。
 それは、電話で話していた。盗み聞きは悪いと分かりながらも聞いてしまった。
 「ねぇあの人どうにかならないんですか?」
 電話先の相手は誰なのかまではわからなかった。声も聞こえない。
 速水は溜息をして、こう話していた。
 「正直、僕は毎日二人分のご飯作れる程裕福じゃないんですよ!? ハァ、僕が苦労しているのに……」
 そんなのを聞いてしまったら、出て行くざるを得ないだろう。「出て行け」を遠まわしに言っているのだ。
 
 
 
 







 「また、一人か……」
 どうすればいいのか、解らなかった。誰も自分を見てはいない。ああ、こんなにのけ者扱いか。嫌気がさしてしまった。死んだほうがマシかもしれない。
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 「じゃあな、最低な人生」