二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Re: 【inzm】殺人鬼少女 第二章プロローグ更新 ( No.76 )
- 日時: 2012/06/09 23:37
- 名前: 音愛羽 (ID: bJXJ0uEo)
任務1
スピーカーからチャイムの音が鳴り響いた。
学校中にその音が伝わると、廊下にいた生徒も教室にいた生徒も全員自分の席に着いた。
ガタガタと椅子を引く音が鳴りやんで、声もやんだ。
雷門中学校1−D組の教室の前にその少女、琉美音はいた。
今、先生に連れられて職員室からここまで来たのだ。
もう誰もいなくなった廊下からは、何の音も声もなくしん…と静まり返っていた。
もちろん教室からも同じように音や声はしない。
ここは金持ちが通う、というだけでなく、学力そして、運動神経…
人間性のすべてが問われる学校なのだ。
中にはスポーツだけでとおっている子もいるみたいだが…。
彼女を連れてきた先生は中で何やら話こんでいるようだ。
D組からだけ声が聞こえるようになった。
ざわめきのなか、先生が彼女のほうを向いて手招きをする。
それにこたえるかのように彼女はうなづくとガラリ、と音を立てて扉を開け、中に入った。
もともとざわついていた教室がさらにざわつく。
男子の大半が顔を赤く染めた。
女子生徒でさえ、見とれてしまうような転入生だったのだ。
淡いピンク色のふたつにまとめた長い髪を揺らしながら彼女はゆっくりと、優雅に教室へはいってきた。
教室をゆっくり見まわし、生徒側へ向きをただした。
うつむき加減な顔の角度は、長いまつげをより一層きれいに見せた。
「転入生だ。みんなの知っているような大手会社の娘さんだ。
そのあたりは本人にあとで聞くとして。自己紹介してもらう。さぁ、言って」
先生に促され、彼女は小さなピンク色の唇を動かした。
「は…じめまして…。宝野琉美音といいます…仲良くしてくださればうれしい…です」
しどろもどろに言っているが、その声は透き通ったソプラノの声。
聞いているだけで心地よいくらいの。
まさに、“天使”だと皆が思った。
「席は後ろから二番目のあの席に座っておけ。後で用意するからとりあえずだ」
そこは今日の欠席者の席らしく、まだ彼女の席は用意されていなかった。
その席の隣は女子で、驚いた表情を隠せないまま彼女をじっと見つめている。
その席まで-----優雅に-----歩いていくと、椅子を引いて座った。
何気ないその動作に見とれてしまう…という何とも信じがたい光景だった。
教室の中のざわめきはいつまでも絶え間なく続いていた…
今日二回目のチャイムがスピーカーから流れた。
と、同時に教室のほとんどの生徒が琉美音に向かってくる。
あっという間に彼女の周りは人だらけになってしまったのである。
…お願いだから、どっかいってよ…一人にさせて…
そんな願いもむなしく、質問の嵐が彼女を襲ったのだ。
それはとても彼女にとっては苦痛だった。
人、それも同年代くらいの人間を最も苦手とする、彼女にとっては…
ねぇ、どこの会社の子?どっからきたの?どこに住んでるの?
家族は?兄弟はいるの?それとも姉妹?部活はどうするの?好きなタイプは?
好きなスポーツは?得意分野は…
彼女の耳にはもはや何も届いていない。
ただの“雑音”として認識されてしまっている。
聞き流すだけの行為。
なんとか、抜け出せないかな…
チャイム、早くなってよ…
むなしい願い。
その時だった。教室に彼女の味方となる人が現れたのだった。
「ちょっと、宝野さん、困ってるでしょ!!」
かわいい声の持ち主は、人込みをかき分け、彼女の前に立った。
「ほら、かわそうよ。みんな。転入したばっかりなんだから!」
そういうと彼女のほうをふりむいた。
そうしてニコ、とほほ笑むと、
「ごめんね、びっくりしたよね」
そういって頭を下げる。
蒼い、ウェーブがかったショートの髪がサラリ、とゆれた。
顔を上げたその少女は、ほら、かえって。といって人を追っ払った。
頭にのった赤いメガネがキラリ、と光って見えた。
「はじめまして、だね。自己紹介しとくね!」
元気いっぱいに、何のためらいもなくその少女は満面の笑みとともに言った。
「私、音無春奈。よろしくね」
琉美音にとってその少女、春奈はとても輝いて見えた。
(((私だって、輝いていたはず)))
つられて琉美音も春奈に向かってほほ笑んだ。