二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re: プロローグ ( No.1 )
日時: 2012/04/24 10:46
名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)

「あっれ〜?キュウべぇ先輩じゃないっすかぁ」

「ん?確かキミはゴンべぇくんだったかな?」

 ビルの屋上に白い小動物が2匹。

 一見するとぬいぐるみのようだが、それらは当たり前のように動き回り、人の言葉で会話をしていた。

 インキュベーター。

 彼らはそう呼ばれている。

 魔法少女という特異な存在の人間にしか見ることの出来ない生き物だ。

「いや〜、今日は暑いっすね」

 今は7月。

 日中は30度を越えることもあった。

「そんな涼しそうな顔してよく言うよ」

 キュウべぇは表情を変えることなく言った。

「人間たちはこういう時期に『暑い』ってよく言うじゃないですか?だからオイラもそれに習って……あぁ〜暑い」

「人間観察も結構だけど、ちゃんと契約はとれているのかい?」

「ぼちぼちっすよ。こんな暑いんじゃやる気もなくなりますよー。有給申請したいっす」

 ゴンべぇはゴロゴロと甘える猫のように地面を転がった。

 キュウべぇはその姿を見て溜め息をついた。

「そんなんじゃその『新型』が泣くよ?」

「新型って言っても、この触角くらいなもんっすよ。あ、ちなみに人間のあいだではこれをアホ毛っていうみたいっすよ」

 ゴンべぇは耳の間に生えた触角をピョコピョコ動かした。

 触角と言っても、毛で覆われており、先はくるくると巻いている。尻尾をくっつけているかのようだ。

「キュウべぇ先輩みたいに才能を見抜く力があれば一番ですけど、オイラみたいな未熟者はコイツがないと効率が悪いんすよね」

「キミたちは量産型だからね。しかしキミは量産型の中でも異質だと思うよ」

「そうっすか?」

「キミの思考はどうも人間よりだ。まるで感情があるかのように感じるよ」

「———そんなわけないっすよ〜。あったらこんな面倒なことしなくていいじゃないっすか。そんなことより……」

 ゴンべぇは下を見下ろした。

 ちょうど下校時間らしく、たくさんの中学生が賑やかに歩いていた。

「誰か逸材いないっすか?たまには仕事しないと怒れちゃいますからね〜」

「その触角で探せばいいじゃないか。魔力が数値でわかるだろ?」

「それはそうですけど、なかなか良い娘は見つからんすわ。例えばあの娘とか———魔力…たったの5…ゴミっすね…」

「その触角はどれくらいの範囲まで探せるんだい?」

「そうっすねぇ〜」

 ゴンべぇは触角をピンと上にあげ、巻いていた部分を真っ直ぐに正した。

「この状態でだいたい2、300メートルくらいですかね。通常時だと100メートルくらいっすね」

「へぇ。意外と狭いんだね」

「そうなんすよ〜。だからなかなか良い娘見つけられないんすよぉ」

「……なら、良い娘がいるよ。もうすぐここを通るんじゃないかな?」

 キュウべぇはゴンべぇの隣に座り、一点をみた。

「えっ!?なんすか、この魔力!!測定できないほどなんて!!」

 ゴンべぇの触角は震えだしたまま止まらず、狂ったコンパスのように不規則に回りだした。

「感知したかい?すごいだろ?この力さえあればボクらの目的達成に大いに貢献できるだろうね」

「あの娘……いったい何者なんすか?いち中学生にこんな魔力ありえないっすよね?」

「まぁ、いろいろね。どうだい?ボクの代わりに彼女と契約してみないかい?」

「先輩が見つけたのに、なぜオイラに?」

「どうもボクは彼女に信用されていなくてね。ワルプルギスの夜という切り札をもってしても契約できなかったよ」

 キュウべぇはやれやれと首をふった。

「手強い相手ってことっすね……」

「怖気づいたのかい?」

「いや……」

 ゴンべぇはニヤリと口元をゆがめた。

 作り笑いとは到底思えない悪意に満ちた表情だった。

「久々に燃えてきたっすよ。何より、あの娘マジでオイラのタイプっす」

「やれやれ……どこまでが冗談かわからないね、キミは」

「へへ。ところであの娘の名前はなんて言うんすか?」

「彼女かい?彼女の名前は———。鹿目まどか、さ」