二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Re: 第六章 暁美ほむらの午後① ( No.109 )
- 日時: 2012/05/28 15:53
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
ここ最近の学校内の様子は普段より慌しかった。
と言うのも、一週間後にはテストがあり、一ヵ月後には文化祭が待ち構えているのだ。
一部の、主に文科系の部活はテストそっちのけで文化祭の準備を行っているところもあるが、大体の生徒はテスト勉強に追われていた。
それは暁美(あけみ)ほむらも例外ではなかった。
周りから優等生と思われてはいるが、実際はかなり勉強をして何とか今の地位を保っている。
(ループしてたころは大体勉強の内容も同じだったから答えを知っているようなものだったけど……)
同じ時を繰り返していた時とは違う。
確かにこういう時は大変だと感じることもあるが、前に進んでいると実感できる瞬間でもある。
「ねぇ、ほむらちゃん」
「どうしたの?まどか」
帰り支度を進めていたほむらのところに鹿目(かなめ)まどかがやってきた。
「ちょっとお願いがあるんだけど……」
「まどかの為なら何でもしちゃうわよ」
まどかは苦笑しながらカバンから教科書を取り出した。
- Re: 第六章 暁美ほむらの午後② ( No.110 )
- 日時: 2012/05/28 15:53
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
「実は数学がわからないことだらけで……出来たら教えてくれたらなーって」
ほむらは少し拍子抜けした。
珍しく改まって言うものだから、もっと大変なことかと思っていた。
「そのくらいそんな改まって言わなくてもいいのに。私で良かったらいくらでも付き合うわ」
ほむらは笑顔でそう返した。
まどかはホッとしたようで安堵の表情を浮かべた。
「どこでする?図書室行く?」
ほむらがそう問うと、まどかは「うーん」と唸った。
「きっと他に勉強している人たちでいっぱいだと思うんだよねー。ほむらちゃんが良かったらなんだけど、私の部屋で勉強しない?」
「まどかの……部屋?」
実は今まできちんとした形でまどかの家を訪れたことがなかった。
お邪魔できたらなーと思うことは何度もあったが、何となく一歩引いてしまい口に出せなかった。
「嫌だったら別の場所でも———」
「そ、そんなことないわ!」
思わず大きな声を出してしまった。
「ほ、ほむらちゃん?」
周りの視線を浴び、まどかは困惑した顔であたふたしていた。
「あ、いや……じ、時間がもったいないし、早くいきましょう」
「え?あ、うん」
2人は半ば逃げるように教室を後にした。
- Re: 第六章 暁美ほむらの午後③ ( No.111 )
- 日時: 2012/05/28 15:55
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
「ただいま〜」
「まどか、お帰り。おや?お友達?」
まどかの帰りを出迎えた父の鹿目知久(かなめともひさ)は、ほむらのことを見て笑顔を向けた。
「お、お邪魔します」
ほむらは少し照れながらお辞儀をした。
「今日はほむらちゃんに勉強を教えて貰おうと思って」
「そうなんだ。それは心強いね。あとで何か持っていくよ」
「うん、お願い。それじゃあ、私の部屋にいこっか」
まどかとほむらは知久に見送られ、まどかの部屋に向かった。
部屋に入ったまどかは荷物を置いた。
「ほむらちゃんも好きなところに座ってね。自分の部屋だと思ってくつろいじゃってよ」
「初お呼ばれでさすがにそこまで出来ないわ」
ほむらは苦笑しながら適当なところに腰を下ろした。
「ほむらちゃんと私の仲なんだから、気にしないでよ〜」
まどかは冗談を言いつつ、ほむらの隣に座った。
(こんな密閉空間で2人きりなんて……何だかドキドキするわ……)
勉強の準備をしながら、あまり良くないとは思いつつもまどかの部屋を観察した。
(女の子らしい部屋……まどかの可愛らしさが滲み出ているわ———って何を考えてるのかしら)
ほむらは頭を振って邪念を吹き飛ばした。
まどかに悟られないようにそっと息を吐いた。
- Re: 第六章 暁美ほむらの午後④ ( No.112 )
- 日時: 2012/05/28 15:56
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
「どこから始めましょうか?」
今回のテストの範囲は少し広かった。
すべてを網羅するには少し無理があった。
「わからないところってどこなの?」
「全部……かな!」
「……そんなドヤ顔で言うことでもないと思うわ」
「てへへ」
「……」
ほむらがどこから手をつけるべきかと考えていると、扉をノックする音が聞こえた。
「まどか、入るよ?」
「どうぞ〜」
知久がトレーに飲み物とおやつを乗せて部屋に入ってきた。
「あまり大したものではないのだけど、良かったらどうぞ」
まどかとほむらの前にアイスココアを置き、クッキーの入った皿を真ん中に置いた。
「あ、ありがとうございます」
繰り返した時間の中で幾度となくまどかの両親の顔は見てきたというのに、こうやって面と向かうと何だか緊張した。
「くつろいで行ってね。って、ボクが居たらダメか」
知久はそんな冗談を残し、まどかの部屋を出て行った。
- Re: 第六章 暁美ほむらの午後⑤ ( No.113 )
- 日時: 2012/05/28 15:57
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
「まどかのお父さんって優しそうな人ね」
「うん、とっても優しいよ。お母さんと正反対だからたまに何で夫婦になったのかって思っちゃうくらい」
両親のことを話すまどかは嬉しそうだった。
たまに2人で話していても話題に出るくらいだ。
きっと自慢の両親なのだろう。
(まどかのご両親に私ってどう思われているのかな?)
毎日まどかの家まで迎えに行くので、両親共ほむらのことを知っている。
少しだが話もしたこともある。
まどかの口からは悪いことも聞かない。
そうは言っても、美樹(みき)さやかと比べればほむらは『友達なりたて』なわけで、両親から見てもその程度なのかもしれない。
(さやか……どこまでも私の邪魔を!)
「そういえばさやかちゃんなんだけど……」
「!!?」
内心でさやかに嫉妬を燃やしているのがばれたのか。
そう思いほむらは心臓が口から飛び出しそうになった。
「今日誘ったんだけど断られちゃったんだよね」
「え?あら、そ、そうなの?」
どうやらほむらの思い違いのようだった。
(まどかって勘がいいから気付かれたのかと思ったわ)
ほむらは安堵のため息をついた。
- Re: 第六章 暁美ほむらの午後⑥ ( No.114 )
- 日時: 2012/05/28 15:58
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
「別のクラスの子との用事があるんだって。さやかちゃんモテモテだからなぁ」
さやかは確かにまどか以外との交友も多い。
女子問わず男子友達も多い。
ゆえにたまに他の子と出かけていったりすることもあった。
そういう時は決まってまどかはちょっとした愚痴をこぼすのだ。
まどかにとってさやかは『一番の親友』なのだろう。
(一番の親友と最高の友達ってどっちが上なのかしら……)
ふとそう考えてみると、さやかに接する時と少し違う気もする。
「あ、ここちょっと教えてっ」
「うん、ここはね……」
そんなことまどかに聞くわけにもいかない。
(聞く必要なんてないわよね。さやかはさやか。私は私なんだから)
少なくともまどかはほむらのことを大切な存在だと思ってくれている。
そう思ってくれているだけでもほむらにとっては充分だった。
「なるほど……さすがほむらちゃん。すごくわかりやすかったよ!」
「まどかの飲み込みが早いのよ」
笑顔のまどかがやはり一番素敵で好きだ。
この笑顔を救いたいと思い、そして今は守りたいと思う。
「きっとここもテストに出ると思うわ。ついでにやっちゃいましょうか」
「うん、お願いしまーす」
2人はそのあとも雑談を交えつつまったりと勉強をした。
- Re: 第六章 暁美ほむらの午後⑦ ( No.115 )
- 日時: 2012/05/28 16:01
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
少し前に知久に呼ばれて出て行っていたまどかが戻ってきた。
「ねぇ、ほむらちゃん」
「何?」
「パパがうちでご飯食べていかないかって」
鹿目家に大接近のチャンスだが、初お呼ばれでご飯を頂くのは少々図々しい気もした。
「ありがたいけど、まどかのお父さんに手間をかけたら悪いし……」
「気にしないでよ!パパが私に勉強教えてくれたお礼がしたいって。それにママもほむらちゃんとお話がしたいって言ってるしね」
30分ほど前に帰ってきたまどかの母である鹿目詢子(かなめじゅんこ)はほむらが来ている事を知るなり部屋に乗り込んできた。
そのときもゆっくり話が出来たらと言っていた。
「ママがこんなに早く帰ってくるなんてほんと珍しいんだよ?こんな機会あんまり無いし、せっかくだから食べていってよ」
「まどかがそこまで言うのなら……」
「やったー!じゃあパパに言ってくるねっ」
そういい残しまどかは走り去っていった。
その後、まどかが知久に伝えに言ってすぐにほむらはリビングに呼ばれた。
「すみません。わざわざ私の分まで用意してもらって……」
「いいって、いいって。気にすんなって!」
改まるほむらに詢子はいつもの調子でそう言った。
「もー、用意したのパパだし。あんまりほむらちゃんのこと困らさせないでね」
まどかが釘を刺すと詢子は「わかってるって」とヘラヘラ笑って返した。
夕飯を用意し終わり、知久が席に着くと皆で「いただきます」をして食事を始めた。
「しかし近くで見るとほんと美人だねぇ」
ほむらは初め誰に対して言っているのかわからなかった。
しかし詢子がほむらに対しニヤニヤしているのを見て、自分のことだと理解した。
- Re: 第六章 暁美ほむらの午後⑧ ( No.116 )
- 日時: 2012/05/28 16:02
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
「そ、そんなことないです」
ほむらは慌てて否定した。
「ほむらちゃん、すっごい美人だと思うよ。実際、ほむらちゃんのファンいるみたいだし」
「まどかまで……」
ほむらは何となく恥ずかしくなって俯いてしまった。
「初々しいねぇ。そこがまたいいのかね」
「そうかもね!」
まどかと詢子がそろって笑った。
そのあともまどかと詢子にからかわれつつ夕飯は進んだ。
夕飯が終わり、まどかはタツヤを寝かし付けに、知久は食器の後片付けに席をはずしていた。
「1年前くらいだったかな?まどかのやつ、何だか色々抱え込んでた時があったんだよね」
詢子がほむらに向かってそう言った。
詢子がいう時期はちょうどまどかと出会った頃で、まどかが魔法少女の存在を知った時もあった。
ワルプルギスの夜を倒すまでの間、様々なことがあった。
同じ時間を繰り返してきたほむらにとっては、今の時間軸には希望があったため苦しいという感覚はいつもより少なかった。
しかしこの時間軸で生きているまどかにとってはとても苦しい出来事もあったはずだ。
- Re: 第六章 暁美ほむらの午後⑨ ( No.117 )
- 日時: 2012/05/28 16:03
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
「昔からまどかはほんとに良い子だったからさ。その良い子さが裏目に出て、自分で抱え込んじゃうことがあったんだ。まどかのやつは隠してるつもりなんだろうけど、やっぱりあたしにはわかっちゃうんだよ」
ほむらは何を言っていいのかわからなかった。
少なくともまどかを悩ませてしまった原因の中に自分も含まれていたはずなのだから。
「もどかしくてさぁ……何にもしてやれないのかなーって。でもね、ある時突然スッキリしたような顔して朝飯食ってるもんだから驚いたよ。あまりにバカ面だったからよく覚えてる」
詢子はそのときのことを思い出しているのか、クスクスと笑った。
「きっとまどかなりに答えを見つけたんだろうなとは思ったんだ。でもその答えを見つけるまでまどかを支えてくれたのは誰なんだろうなって気になってた」
手に持ったグラスを回した。
グラスの中の氷同士が当たり、心地の良い音をたてた。
「あんたが初めてうちにまどかを迎えに来てくれた時、あんたと楽しそうにするまどかを見て思ったんだ。きっとこの子だって……」
詢子はほむらを見て笑顔を作った。
「ありがと」
ほむらはそれに笑顔で返した。
「支えられていたのは私のほうです。まどかが居たから今の私がいるんです」
「そんなこと言われちゃうと泣いちゃいそうだよ。ほんと良い友達持ってるね、まどかは」
そういいながらグラスを傾ける詢子の表情はとても良いものだった。
その表情を見ていると、ほむらがまどかのためにしてきたことが無駄ではなかったんだと思わせてくれた。
- Re: 第六章 暁美ほむらの午後⑩ ( No.118 )
- 日時: 2012/05/28 16:03
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
「今日はほんとに楽しかった……」
ほむらは誰に言うでもなくそう呟いた。
詢子と話をした後、結構な時間になっていたことに気付いたほむらは帰ることにした。
詢子には泊まっていけばと言われたのだが、さすがにそこまで世話になるわけにはいかないと断った。
時間が遅いこともあり、まどかが心配していたが、「魔法少女はそう簡単にやられないわ」と言ってなだめた。
「こういう日常を望んでいたのよね……ずっと」
まどかを救うためと戦っていたあの頃にずっと夢見ていたことだ。
その1つが叶ったことが心底嬉しかった。
(このまま幸せが続けばいいのに……)
そう思った時、ほむらのソウルジェムが淡く光った。
「今の幸せを守るためには仕方の無いことね」
ほむらは魔法少女に変身すると、ソウルジェムの反応するほうに駆けて行った。