二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Re: 第六章 佐倉杏子の午後① ( No.129 )
- 日時: 2012/05/30 15:04
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
佐倉杏子(さくらきょうこ)は1人で街中を歩いていた。
片手には大量のリンゴが入った袋が握られいた。
「さすがのアタシでもこの量は食えないよなぁ」
このリンゴは馴染みのお店で貰ったものだった。
ひと月ほど前からちょっとした縁でバイトをさせて貰っていた。
バイトと言っても堅苦しいことはなく、身内が家の仕事を手伝うようなものだ。
一応仕事終わりに一日の成果をお店の店主(おやじ)さんから貰う。
そのときにお店で出せない不揃いな野菜や果物をくれたりするのだ。
そして今日の頂き物が大量のリンゴというわけだ。
「ゆまのやつはあんまガツガツ食うほうじゃないし……さやかは体重ばっか気にしてるからなぁ」
ちょうど下校の時刻なのか、所々に見滝原中の生徒を見かけた。
(さやかたちも学校を出た頃かな)
ふとそう思うとついつい周りを見てしまう。
「おっ」
冗談半分で周りを見ただけだったのだが、意外にも知り合いの姿があった。
「よー、マミじゃんか」
「あら?佐倉さんじゃない」
偶然そこに居たのは魔法少女仲間の巴(ともえ)マミだった。
下校途中なのか、服装は制服だった。
「寄り道か?」
マミが居たのは茶葉の専門店だった。
日本産の物から外国産の物まで幅広く取り扱っている店だ。
- Re: 第六章 佐倉杏子の午後② ( No.130 )
- 日時: 2012/05/30 15:04
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
「ええ。これから美国(みくに)さんのところにお邪魔することになってるの」
「織莉子(おりこ)んとこ?珍しい組み合わせだな」
「そう?美国さんとはお茶友達なのよ」
杏子は内心「なるほど」と納得した。
確かにどこか似ているところもある気がした。
「佐倉さんこそそんな大荷物でお買い物?」
「いや、これは貰いもんでさ。そうだ、少し持っていかない?多くて困ってるんだよね」
杏子は袋に入った大量のリンゴをマミに見せた。
「今はちょっといらないわね……。美国さんなら欲しがるかも。お菓子作ったりしてるみたいだから」
「そっか。どうせ織莉子のところにはゆまを迎えに行かなくちゃいけなかったし、ちょっと顔だしてみるか」
「ならせっかくだし一緒に行きましょうか?」
マミはそういうと足早に目的のものを購入し、杏子のところに戻ってきた。
そして2人は並んで美国織莉子の自宅を目指した。
- Re: 第六章 佐倉杏子の午後③ ( No.131 )
- 日時: 2012/05/30 15:05
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
織莉子の自宅に着くと、マミはチャイムを鳴らした。
インターホン越しにマミと織莉子が一言二言会話をして、織莉子がすぐに行くと言って会話は切られた。
「しっかし相変わらずデカイ家だな」
「有名な政治家の娘さんだもの。これくらい当たり前よ」
織莉子の父親は有名な政治家らしいという話と、何かしらの原因で亡くなったという話は聞いた。
「いらっしゃい。あら、杏子さんも一緒?今日は訪問者の多い日ね」
迎えに来た織莉子は杏子を見て意外そうな顔をした。
「マミと一緒になってね。ついでだからゆまを迎えにきたんだ」
「あの子ならちょっと前に帰ったわ。大事な用事があるとか……」
「帰った?」
同居人の千歳(ちとせ)ゆまは織莉子に暇があるときは勉強を教えて貰っていた。
そういう時は決まって杏子が迎えに行くまで待っているのだが———。
「何も聞いてないの?」
マミがそういうと杏子は最近の記憶を引っ掻き回した。
しかし何か特別な用事があるなどと聞いたことはなかった。
「まぁいいや。帰ったらどうせ会うし」
「そう?どうせなら一緒にお茶してく?」
マミが誘うと杏子は首を横に振った。
「うまい菓子には惹かれるけど、お前らのオシャレトークにはついていけないからさ」
織莉子とマミはクスクスと笑った。
杏子も苦笑いを浮かべる。
「ま、そういうことだからさ。じゃーな」
杏子は2人に別れを告げ、とりあえず自宅に戻ることにした。
- Re: 第六章 佐倉杏子の午後④ ( No.132 )
- 日時: 2012/05/30 15:06
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
自宅に戻る途中、杏子は道端にうずくまっている和服の少女を見つけた。
周りからすれば些か異様に見える光景だが、普段から魔女と戦っている杏子にはあまりそうは感じなかった。
「腹でもいたいのかい?」
少女は頭を振って否定した。
「迷子?」
その問いにも少女は否定した。
杏子は他に思い当たることを少し考えた。
「じゃー、落し物?」
杏子がそういうと少女は顔を上げて頷いた。
「……」
杏子は少女の顔をジーっとみた。
中々整った顔立ちで将来相当な美人になりそうだ。
だが肌に赤みがなく、病弱なのかもしれないなと思わせた。
このように観察するのも長年一人で魔法少女をやってきたクセだった。
「何落としたんだ?」
ほんの気まぐれで探してやろうと思った。
もうすぐ夕方六時を回るし、あまり遅くなれば何か危険なことに巻き込まれるかもしれない。
「鈴……」
少女はボソリとつぶやいた。
「鈴?」
少女が頷いた。
杏子は頭をかいてとりあえず周りを見渡した。
「そりゃぁ……ちょっと無理難題だな」
どのような形のものかわからないが、よく知る鈴のサイズならそうそう見つけられるものではない。
少女は再びうずくまってしまった。
杏子はため息をついて少女の手をつかんだ。
「そんなんしてたって見つからないよ。どこで落としたかくらいは見当つくだろ?」
少女はそう杏子に言われるとトボトボと歩き出した。
杏子はそれについていくことにした。
- Re: 第六章 佐倉杏子の午後⑤ ( No.133 )
- 日時: 2012/05/30 15:07
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
それから1時間ほど探し回ったが、結局見つからなかった。
少女はほとんどしゃべらない為、本当に行く先が目的の場所なのかすらわからない。
「お手上げだな……」
少女は杏子から手を放し、またその場にうずくまった。
どうしたものかと杏子が頭を抱えていると、どこからともなく鈴の音がした。
「ん?」
杏子と少女はそれに反応し、音のする方向を見た。
「おやおや、佐倉杏子。面白いもん連れてるじゃねーか」
「お前……」
目の前から歩いてきたのは少女同様に着物で身を包んだ天音(あまね)リンだった。
「まさかとは思ったが、これの落とし主はお前か……鈴音(りんね)」
リンは鈴を少女に投げ渡した。
「こいつと知り合いか?お前……あれ?」
少女にリンのことを尋ねようと視線を少女に向けた。
だがそこには誰も居なかった。
- Re: 第六章 佐倉杏子の午後⑥ ( No.134 )
- 日時: 2012/05/30 15:08
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
「お、おい!」
杏子は周りを探した。
だが気配すら感じなかった。
「くくく。諦めろよ、狐に化かされたんだ」
リンは意味深なことを残し、杏子の横をすれ違った。
「待て!お前、なんなんだ?」
「お前もさやかと同じこと聞くんだな」
美樹さやかの名がリンの口から出てきた瞬間、杏子は魔法少女に変身した。
「お前、さやかに何をした!!」
杏子の槍がリンの居た地面を抉った。
「おいおい、いきなり攻撃なん短気すぎるぜ」
杏子の攻撃を軽く避け、リンは後方に着地した。
「何もしちゃいないって。ちょっと人生相談してただけだぜ」
杏子はおちゃらけた様子で語るリンを訝しげな表情で見た。
(こいつまるで殺気がない。やる気がないのか、余裕かましてるのか……)
リンは両手を挙げて降参のポーズをとった。
「本当にやる気なんてないんだ。勘弁してくれよ。それに今日は大事な日で血なんて見たくないんだ」
そう言うリンに対し杏子は攻撃の体勢を解くことはしなかった。
「そういうならさっさと消えな。次会うときは容赦しないよ」
リンは薄ら笑いを浮かべてその場から姿を消した。
「……」
リンのこともあるが、突然消えた少女のことが気になった。
直感的に関わってはいけないようなモノに関わってしまった———そんな気がした。
(早く帰ってゆまの顔を見てやるか。それとさやかの所にも明日顔出すか)
不安が心を覆い、何となく仲間の安否が気になった。