二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re: 第二章 1話 ( No.15 )
日時: 2012/04/25 17:06
名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)

「38度……こりゃ完全に風邪だわ」

 体温計を放り投げ、美樹(みき)さやかはベッドに倒れこんだ。

「魔法少女でも風邪なんてひくんだ……」

 痛覚を消す感覚で感覚操作を行えば、頭痛やだるさは消せた。

 だが風邪をひいていることには変わりない。

 このまま学校に行けばクラスメイトにうつしてしまうだろう。

「今日は休もう……」

 両親は仕事で居ないため、さやかは仕方なく自分で学校に連絡した。

 一応、親友である鹿目まどかにもメールで休むことを伝えた。

「はぁぁぁー。暇だなー」

 仰向けになって天井をぼーっと見つめた。

 感覚を操作しているので身体自体は普段と変わらない。

「私は元気だって思ってても何も出来ないなんて……不憫すぎるわぁ」

 さやかは近くに置いてあったゲーム機を手に取り、電源を入れた。

「……」

 ゲームがスタートするまで約2分。

「よし、双剣使いのさやかちゃんがいっちょ狩りまっくちゃいますかね〜」

 ザシュ!ザシュ!

「……」

 テレッテレ〜♪

「よっしゃぁ!さっすが双剣使いさやかちゃん!」

 ブチッ!

 さやかはゲームの電源を落とした。

「1人でやって何が面白いんだか……はぁ〜」

『お〜い』

「ん?この声は……」

 さやかは窓を開けた。

「やっほ〜♪」

「なにやってんのよ、バカ杏子!!」

「なんだよ、せっかく見舞いに来てやったのに」

「アンタが?」

「アタシじゃ悪いかよ」

「……まぁいいや。上がりなさいよ」

「おっじゃましま〜す」

 佐倉杏子(さくらきょうこ)はジャンプして二階の窓からさやかの部屋に上がりこんだ。

「アンタ、なんで私が風邪だって知ってんのよ?」

「まどかのヤツから聞いたんだよ。んで、どうせ暇してんだろーなって思ってさ」

「……」

 まさにその通りだったため言い返す言葉も見つからなかった。

Re: 第二章 2話 ( No.16 )
日時: 2012/04/25 17:07
名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)

「そういやさやかの部屋来たの初めてだな」

 杏子はポッキーを咥えながらさやかの部屋を見渡した。

「そんなに見ないでよ。あっ!アンタお菓子落とした!!」

「わりぃ、わりぃ」

 全然悪びれる様子もなく、落としたお菓子のカケラを拾った。

「はぁ〜。アンタといると余計熱があがりそうだわ」

 さやかはベッドに腰掛けた。

 杏子も適当な場所に腰を下ろした。

「そういえば、ゆまちゃんは?一緒じゃないの?」

「ゆま?あぁ、アイツなら織莉子んとこさ」

「織莉子さん?なんでまた?」

「勉強教えてもらってるんだよ。アタシと居たんじゃ学校なんて行けないからさ」

「……」

「なんだよ、しんみりするなよ。らしくないぞ」

「私だって感傷にくらいひたるわ!」

「へへ。おっとそうだ」

 杏子は持ってきた紙袋からリンゴを取り出した。

「風邪つったらこれだろ?食うかい?」

「アンタまた!!」

「安心しろって。ちゃんと買ったもんだからさ」

「買ったって……お金はどうしたのよ?」

「そりゃあもちろん働いて稼いだに決まってるだろ」

「ん〜〜。わたしゃ耳が遠くなったのかぁ!?なんて言った?もう一度言ってみておくれ!?」

「ちょーうっぜー。だから稼いだんだって」

「なん……だとっ」

「なんでそんなに驚くんだよ」

「意外だったからに決まってるでしょ!で、何の仕事よ?」

「何って言われると……ん〜」

 杏子は腕を組んで考え出した。

(考えなきゃならない仕事ってなによ……)

「何でも屋?かな」

「はい?」

「なんでもやるから、何でも屋」

「なにそれ……」

「ほらさ、アタシってぶっちゃけるとホームレスじゃん。だからバイトなんて出来ないし。でも魔法って力はあるからさ。なら魔女の影響受けて悩んでるヤツの悩みを解決して、お金をもらっちゃおうって思ったんだよ」

「まぁ確かに魔女相手にできるのは魔法少女だけだしね。だからって商売にする?」

「いいじゃん。無職よりはさ。で、食うのか?」

「あ、うん。食べる」

「ほらっ」

 杏子はリンゴをさやかに投げ渡した。

 リンゴは綺麗に弧を描き、見事さやかの手の中に落ちた。

Re: 第二章 3話 ( No.17 )
日時: 2012/04/25 17:09
名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)

「アンタ病人の私にこのままかじれっていうの?デリカシーがないわねぇ」

「そんな食えないもん持っててどーすんだよ」

 杏子はリンゴを丸かじりしながら言った。

 さやかはため息をついて同じようにかじった。

 それからしばらく何てことのない会話をして過ごした。

 そうしているうちに時計の針は16時をさしていた。

「しかし寒いなぁ」

 杏子はふとそう言った。

「そんな薄着してるからでしょーに」

 さやかはカレンダーに目をやった。

「もう12月か……。アンタと出会って、ワルプルギスの夜を倒して、だいぶ経ったね」

「ほんとにな。あん時アタシが助けてやらなきゃ、さやかは死んでたな〜」

 杏子は最後の一本となったポッキーを口に放り込んだ。

「そうだね、何だかんだでアンタには助けてもらってばかりだわ。感謝してるよ」

 杏子は口を開けたまま固まってしまった。

「な、なんだよ。らしくねーじゃん」

 そういって顔をそらした。

「恥ずかしがってるの?かわいいやつめ!」

「からかうんじゃねーよ。ったく」

「へへーんだ。でもほんと寒いわ」

 さやかは布団の中にもぐりこんだ。

「うーん、やっぱりマイベッドは気持ちいいね〜」

「あ!さやか、ずるいぞ!」

「えっ!?ちょ!!」

 杏子は無理やりさやかのベッドの中に潜り込んだ。

「ほんとだ、あったかいな」

「ちょっと杏子!出なさい!せまい!」

「いいじゃん。減るもんじゃないし」

「アンタが使うと減るのよ!」

「いて!さやか、今蹴ったな!お返しだ!」

「え……って!アハハハハハ!!」

 杏子はベッドの中でさやかを思いっきりくすぐった。

「ちょ!わかった!ギブ〜!」

「わかればいいんだよっ」

「私、病人なんだからもう少し気を使って欲しいわ〜」

「どれどれ?」

「!!?」

 杏子は自分の額をさやかの額に当てた。

「もう熱さがったんじゃん?顔赤いけど」

「わかったから!あとで計ってみるよ!」

 さやかはそうやって無理やり杏子を引き剥がした。

 そして深呼吸して仰向けになった。

(なんでアタシドキドキしてるんだか……)

 横目で杏子を見た。

 杏子は1人でベッドの感触を堪能していた。

(はじめは絶対に仲良くなれっこないって思ったけど、何だかんだで気があうんだよね。それに杏子は杏子で色々苦労してるんだろうし……)

「ねぇ、杏子」

「ん?」

「アンタ私のことどう思ってるのよ?」

「はぁ?なんだよ、急に」

「何となくよ」

「友達だと思ってるよ」

「!」

 杏子の口から出た友達という言葉は何だか特別で、むずがゆく感じた。

Re: 第二章 最終話 ( No.18 )
日時: 2012/04/25 17:10
名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)

「さやかはどう思ってんだよ」

「私は———」

 ピンポーン。

 玄関のチャイムが鳴った。

「ちょっと出てくる!」

 さやかは駆け足で玄関に向かった。

 そして玄関用のテレビ画面に移った訪問者の顔をチラっと見てすぐに玄関を開けた。

「あ、さやかちゃん!風邪大丈夫?」

「わざわざ来てくれたかぁ〜。さすがは私の嫁だなぁ、まどかは!」

「その様子なら大丈夫そうね、さやか」

「あ、ほむらも一緒か」

「……ついでみたいな言い方はよくないと思うわ」

「まぁまぁ、さやかちゃんに悪気はないから……」

 鹿目(かなめ)まどかは苦笑しながら暁美(あけみ)ほむらに言った。

「気にしてないから大丈夫よ」

 ほむらは自分の髪をすくい上げながらそう言い放った。

「あはは。さやかちゃん、明日は学校これそう?」

「まあね。立ち話もなんだし、上がっていきなよ」

「えーでも、さやかちゃんに負担かけたら悪いし……」

「大丈夫だって。ささ、あがりたまえ〜」

 さやかは2人分のスリッパを出して、2人を中に促した。

「じゃあお言葉に甘えて……おじゃましまーす」

「お邪魔します」

 さやかは2人が上がったのを確認し、リビングに通した。

「杏子も来てるのよ。呼んでくるから待ってて」

「やっぱり杏子ちゃんも来てたんだ。わかった、ここで待ってるね」

 さやかはまどかの笑顔に見送られて再び2階に上がった。

「杏子?って、ありゃ」

 さやかは自室の扉を開け、杏子の姿を見て苦笑した。

「まったく……ほんとデリカシーないなぁ」

 杏子はさやかのベッドの中で熟睡していた。

 いつものとがった感じは無く、どこにでもいる子供の寝顔だった。

「杏子、私もアンタのこと友達だと思ってるわよ」

 そう寝ている杏子に囁きかけ、さやかそっと扉を閉めた。