二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Re: 第六章 天音リンの午後① ( No.154 )
- 日時: 2012/06/07 10:45
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
「ほわぁぁ〜」
天音(あまね)リンは大口開けてあくびをした。
寝起き顔のリンは居候している屋敷の廊下をフラフラと歩いていた。
(今日はどーしようかな)
いわゆる暇人のリンは毎日やることを探すのが起きてからの仕事だった。
「あー!リンちゃん居た!!」
「うげっ」
後ろから大声上げて走ってきたのは屋敷のメイドをしている良子(りょうこ)だった。
良子とリンは性格が似ているせいか気が合う。
だが良子は超がつくほどの世話焼きだ。
自分のほうが年上だと思っている良子はリンに立派なレディになって貰いたいようで、だらしないリンによく文句を言いにきたりする。
「リンちゃん!起きたらちゃんと布団は畳んでって言ってるでしょ!」
「いいじゃん。どうせ帰ったらまた使うんだからさぁ」
「そーいうのがダメなの。起きた瞬間からきっちりしてないと、一日もだらしないものになっちゃうよ」
「オレは見ての通りだらしないヤツなんだ。今に始まったことじゃねーだろ」
「ダメダメ!そういう問題じゃない!それにそんな男っぽい話し方もだーめ!」
こうなってしまうと手がつけられない。
どこかチャンスを見計らって逃げ出さなければ。
そう考えていると向こう側から人が歩いてくるのが見えた。
「おー!クロード!」
「えっ!クロード様!」
気楽に手招きするリンに対し、良子は頭から足の先までピーンとして固まった。
「おやおや、またリン様にお説教ですか?」
「いやぁーそういうわけじゃないんですけど……」
良子の視線はあらぬ方を見ていた。
- Re: 第六章 天音リンの午後② ( No.155 )
- 日時: 2012/06/07 10:46
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
クロードはメイドたちを取り仕切る一番偉い存在だ。
クロードたちの仕えている鷺宮(さぎみや)家は前の主が亡くなり、その娘である千鶴(ちづる)が事実上の当主となっている。
クロードは千鶴のお抱え執事で、千鶴の次にこの屋敷で権力を持っている。
だが今は当主である千鶴は昏睡状態で眠ったまま。
つまり今現在、この屋敷で一番の権力を持っているのはクロードということになる。
またクロードは執事としても一流で、屋敷の者からは一目置かれる存在なのだ。
あらゆる点において良子はクロードに頭が上がらないのだ。
「そうだ、良子さん。お庭の掃除係りが一人体調を崩してしまいましてね。手伝いに行ってあげて頂けませんか?」
「は、はい!よろこんで!」
良子は猛ダッシュで行ってしまった。
リンはいい気味だと笑った。
「リン様、あなたは大事なお客様なので口うるさく言うつもりはありませんが、あまりメイドたちに迷惑はかけないでくださいね」
「わかってるよ。ん?どこか出かけるのか?」
リンはクロードが外出用の執事服に着替えていることに気が付きそう聞いた。
「えぇ。お嬢様に手紙を頼まれまして。お渡しに行くところなのです」
「お嬢様の手紙……ねぇ」
リンは訝しげな表情を浮かべてクロードを見た。
「そこには悪魔のささやきでも書かれているのかい?」
「まさか。お友達に送る純粋な気持ちで書かれたお手紙ですよ」
「ふーん」
リンはクロードから視線をはずした。
「まぁいいわ。オレは行くぜ」
クロードの横を抜け、リンは歩き出した。
「あなたが本気になればこの街一つくらいどうにでもできるでしょうに……」
「そういうのには興味ないんだ。欲しいものさえ手に入ればそれでいい」
そう言ってリンは手をひらひら振って行ってしまった。
- Re: 第六章 天音リンの午後③ ( No.156 )
- 日時: 2012/06/07 10:46
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
リンは正門を抜け、外へとでた。
「あらぁ、リンちゃん。奇遇ねぇ」
「更紗(さらさ)か。こんなとこで何してんだよ」
門前でフリフリの日傘をさし、フリフリのドレスを纏った九条更紗(くじょうさらさ)が立っていた。
「冷たいわねぇ。同じ目的を持った仲間じゃないの」
リンは嫌そうな顔して更紗から顔をそらした。
「目的は同じでもお前と仲間になったつもりはねーよ。虫唾が走るぜ」
「相変わらずねぇ。そんなに嫌わなくてもいいじゃない。私はリンちゃんのこと好きよぉ」
更紗はクスクス笑った。
「好かれても困るぜ。特にお前にはな」
「そう?それは残念だわ。私、リンちゃんのお人形欲しかったのに……ふふ」
更紗は睨みつけるリンのことなどお構いなしにゆっくり歩き出した。
「今日も可愛いあの子たちのケアをしてあげなくっちゃ」
独り言をブツブツ言いながら去っていった。
「気持ちわるい野郎だ」
リンは思わずそう愚痴っていた。
- Re: 第六章 天音リンの午後④ ( No.157 )
- 日時: 2012/06/07 10:48
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
それから適当に街をブラブラし、夕飯と暇つぶしにデカ盛りメニューの店荒らしをした。
「お、おとといきやがれーー!」
膝を落とし落ち込む店の店主を背にリンは鼻歌混じりに店を後にした。
「この界隈じゃすっかり出禁の常連になっちまったなぁ」
暴食クイーンの肩書きを持つリンはその手の世界では超有名人で、顔を見た瞬間にお断りする店も多い。
少し程度を考えればよかったか。などと今更ながら思った。
「まぁ、今日はこれぐらいにするか」
リンはその足である公園を目指した。
(ここでお前は死んだのか?)
リンは人気の無い公園の中心にあるジャングルジムの頂上で空を見上げた。
叶(かなえ)ゆかりという魔法少女がいた。
リンにとって一番の友達。
些細なすれ違いで別々となり、それ以来会うことはなかった。
嫌いになったわけではない。
出来ることなら会いたかった。
でも今の自分をゆかりに見てもらいたくない———その気持ちのほうが強かった。
一年ほど前くらい。
突如ゆかりの気配が消えた。
自作の結界に身を隠すゆかりを探し出すのはリンでも無理だったが、ゆかりはまるで自分が生きていることを知らせるかのように魔力を流していた。
それを感じ取れなくなった。
不安がよぎり、リンは無我夢中でゆかりを探した。
だが見つかったのは残り香程度の魔力だった。
この公園で見つけたその魔力をその身に感じた時、やはりゆかりは死んだのだと思った。
前に突如として溢れた涙はそれを無意識に悟っていたのだと。
リンはその日を命日と自身の中で決め、ちょうど一年後の今日ここにやってきた。
- Re: 第六章 天音リンの午後⑤ ( No.158 )
- 日時: 2012/06/07 10:49
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
「よくこうやって三人で月を見たよな。オレとゆかりとあと———」
突如魔女の気配と、魔法少女の気配を感じた。
魔法少女の気配にリンは覚えがあった。
(ありゃ、美樹さやかか)
さやかがサメ型の使い魔相手に剣を振るっていた。
結構な数居たが、さやかはそれを見事に退けた。
(へぇ、中々やるじゃん。あとは……)
あとは魔女を倒すだけ。
だがどういうわけかさやかは警戒を解いてしまっていた。
(あいつ……魔女の気配に気が付いてないのか?使い魔だけとか思ってんか?)
背後からさやかを狙う魔女の姿がリンの位置から見えた。
だがそれにさやかが気付く様子はない。
「あのバカ!」
リンは思わず魔女とさやかに向かって飛び掛っていた。
- Re: 第六章 天音リンの午後⑥ ( No.159 )
- 日時: 2012/06/07 10:50
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
さやかを魔女から助けた後、リンは少しの間さやかと話をした。
「いるわよ。そこまで寂しい女じゃないわよ」
そう笑顔で言うさやかの横顔を見て、リンはなぜかドキッとした。
「へへ、ならいいじゃんか。悩んだ時はそいつらにぶちまければいい。オレと話すよりもっと楽になれるぜ」
リンは平静を装ってそう言うとジャングルジムから飛び降りた。
そして二言三言交わすと半ば逃げるようにさやかから離れた。
(そうか、わかった……。オレ、あいつに惚れちまってる)
リンは照れるような、苦虫を噛み潰したような微妙な表情を浮かべた。
(似てるんだ。さやかと小夜(さよ)は……。くそ……恋する乙女って年齢でもねーだろ)
チリン———。
「ん?」
リンはつま先で何かを蹴り飛ばしたことに気が付いた。
「鈴?」
どこにでもあるような鈴だった。
だがそれを見たリンの顔は見る見る強張っていった。
「更紗のやつ!まさか鈴音を!」
リンの影が見る見るうちに広がっていく。
そして広がっていった影はバスケットボールほどの大きさに分裂し、それらは影の猫となった。
影の猫たちは一斉に飛び出していった。
リンの索敵用魔法だ。
数分と経たないうちにリンの元に影の猫からの報告が入った。
(鈴音は今、佐倉杏子といるのか?まずいな……)
杏子が居なくなればさやかが悲しむ。
一番に浮かんだのはそれだった。
リンは急いで杏子のもとに向かった。
- Re: 第六章 天音リンの午後⑦ ( No.160 )
- 日時: 2012/06/07 10:50
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
(ふぅ……事なきを得たか)
リンは立ち去っていく杏子を別のところから見送ると一息ついた。
『慣れないことをするじゃないか』
「神出鬼没。奇奇怪怪。摩訶不思議……。どれで例えるのが一番なんだ?」
『好きに言うがいい。して……私の先ほどの問いの答えはなんなんだ?』
リンはどこからとも無く響くその声に対し、少し考えてから口を開いた。
「なんとなくさ。オレはオレのしたいようにやる。ただそれだけ。それより……」
リンは振り向き、ある一点に視線を向けた。
「お前こそ何を企んでる?女神ってなんなんだ?そもそもお前は何なんだよ」
『私は【概念】だ。女神もまた【概念】』
「それ答えになってんのか?」
『【女神】にとって私は無くてはならない存在であり、もっとも居て欲しくない存在なのだ」
「それがお前ってわけか……。はぁ、わけわかんねぇ」
『いずれそのときが来ればわかる』
気配が消えた。
リンはため息をついた。
(オレは目的のために何でもやってきた。でもなんだろうなぁ……。最近はなんか揺らぐ)
【概念】が言うように普段のリンにしてみれば慣れない行為だ。
自分ですらなぜそんなことをしたのか理解できない。
「オレの行く先には何が待ってるのかな……ゆかり」
リンは空を見上げた。
自分の心の中を表すかのように、空は曇っていた。
