二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Re: 第六章 魔法少女?の午後① ( No.161 )
- 日時: 2012/06/08 10:03
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
暁美(あけみ)ほむらは鹿目(かなめ)まどかの家を出た後、ソウルジェムが感じ取った魔女の気配を追っていた。
(魔女の気配……でもなんだか異質ね)
何となくそう思った。
長い間魔女と戦ってきた経験というべきか。
感じ取った魔力の質で相手がどの程度の力を持っているのかがおおよそわかるようになっていた。
今回の相手はそれが言ってしまえば曖昧だった。
強いとか、恐ろしいとかそういったものではない。
本当に存在しているのか?
そう思わせるくらい儚いものだった。
ほむらは魔女の存在が近いことを察知し、盾の中からハンドガンタイプの銃を一丁取り出した。
(あそこね)
場所を確認するとほむらは大きく跳躍し、その場所に降り立った。
そして拳銃を構えた。
だがそこに居た思わぬ人物にほむらは驚愕し、硬直した。
「あ、蒼井彰……!!」
そこにはかつてほむらたちを苦しめた漆黒の騎士、蒼井彰(あおいあきら)が立っていたのだった。
- Re: 第六章 魔法少女?の午後② ( No.162 )
- 日時: 2012/06/08 10:04
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
蒼井彰はもの凄いスピードで暗闇を駆けていた。
屋根伝い、屋上伝いに先へと飛んで進み、ある場所へと到着した。
(感じる……この辺りだ)
ここ最近ずっと感じていた奇妙な気配。
ずっと昔から知っているような気がしていて気になっていた。
その気配をついに掴み、ずっと追ってきたのだった。
到着した場所には誰も居なかった。
もちろん魔女の姿もない。
だがソウルジェムは淡い光を放っており、何かに対して反応はしているようだった。
彰は周りを見渡すと、ある一点に歪みのようなものが生じているのに気付いた。
そしてそれは良く見るとどこか人型をしていた。
「そこに誰かいるのか?」
彰はとりあえずそう口に出してみた。
『!!?』
驚いたような気がした。
『蒼井彰か!なぜ生きている?お前はあの時あの場所で死ぬはずだっただろう!』
その歪みは彰の姿を見るなりそう言った。
「どういう意味だ?」
彰は歪みが言うことが何なのかまったくわからなかった。
『……そうか。お前、既に半概念化しているな?死にかけた時に理(ことわり)に導かれたのか?ありえんことではない……あのタイミングでならば』
「何を言ってるんだ?」
歪みは唸るような声をだした。
『死ぬはずの人間が死なずに、ましてや我々の領域に足を踏み込んできている。飛んだ置き土産を残したものだな……【女神】め。』
そう一人で納得している。
彰はもちろん反発した。
- Re: 第六章 魔法少女?の午後③ ( No.163 )
- 日時: 2012/06/08 10:05
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
「何を言っているんだと聞いてる!お前は何者なんだ!?」
『私は【概念】。どこにでも居てどこにも居ない。だから好きなように呼ぶがいい』
「概念?」
いよいよオカルトな話になってきた。
なんて思ったが魔法という存在自体ファンタジーのようなものなのだから、オカルトも変なことではないのかもしれない。
『蒼井彰、君は今見ているものがすべてだと思っているのかね?』
「え?」
『目で見ている限りすべてを視ることは出来ない。ありえないことをありえないと思っている限り救いなど見出せない』
【概念】は独り言呟くかのような調子でそういった。
『まぁつまりだ。今のお前では結局のところ……何も救えないということだ。ましてや鹿目まどかという絶対的な存在をな』
「なんだと……?」
彰は一瞬で【概念】を敵と判断した。
彰は大剣を出現させた。
『やめておけ。私は本当のことを言ったに過ぎん。鹿目まどかの力とお前らを対比すれば、所詮お前らはゴミくず同然……』
「あの子はそんな風に力で人を見下したりはしない」
『心か?くだらん……。そんなものは何の腹の足しにもならん』
「それはお前が心の無い者だからだ。俺たちは心の在り方で強くなれるんだ」
【概念】は彰の言葉を笑い飛ばした。
『それは弱点にもなる。弱くする可能性を内に秘めて何の意味がある?心……慈悲など自己満足でしかないのだ』
「証明してみせるさ。『人間』として!」
『くくく。やってみるがいい。楽しみに待っているよ』
【概念】の気配が遠のくのを彰は感じた。
「待て!」
『また会うことになる。いずれお前は始末しなくてはならないのだから。それよりお客さんだ、蒼井彰』
「え!?」
【概念】の気配が完全に消えた。
その代わりに現れた気配を彰は知っていた。
「あ、蒼井彰……!!」
「ほむらちゃん……!」
自分が苦しめた少女の名を彰は口を震わせながら言った。
- Re: 第六章 魔法少女?の午後④ ( No.164 )
- 日時: 2012/06/08 10:06
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
ほむらは悩んでいた。
彰との戦いの後、目覚めた時は魔女結界の崩壊寸前でまどかを救い出すので精一杯だった。
あとからまどかに彰のことを聞いたが、事情を聞いたところで彰のやったことを許す気にはなれなかった。
まどかは彰が帰ってきて欲しいと願っている。
実際に交わした約束を守るために待っている。
まどかのためを思えば、彰が生きていることは喜ばしいことなのだろう。
だがほむらはそんなまどかを見ながら、彰が生きていないことを望んでいた。
彰の存在が今の幸せを崩してしまいそうだから。
まどかが魔法少女と関わるのはなるべく避けたい。
自分が繰り返してきたことで肥大したまどかの力。
それに囚われるまどかをもう見たくないのだ。
今、彰がどう思っているのかはわからない。
だがもしまだまどかの力を狙っているのだとしたら、また争いになる。
それがきっかけでまた悲しい現実を目の当たりにすることになるかもしれない。
ほむらの拳銃の銃口はぴったりと彰の額を狙っていた。
誰かと話でもしていたのか、兜を取り外している。倒すならば今が絶好のチャンスだ。
ほむらが思い悩んでいると、真横から殺気を感じた。
「!!?」
ほむらは動けなかった。
銃口がほむらの頭に突きつけられていたからだ。
- Re: 第六章 魔法少女?の午後⑤ ( No.165 )
- 日時: 2012/06/08 10:07
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
「撃ちますか?」
女の子の声だった。
女の子は彰に向かってそう聞いていた。
「やめろ、双樹(そうじゅ)。その子は敵じゃない」
彰がそう言うと女の子はすぐに拳銃を降ろした。
「ほむらちゃんも出来れば降ろしてくれないか?俺は出来ればもう君とは争いたくないんだ」
ほむらは悩んだ。
信じていいものかどうか。
「ししょー!早すぎですって!」
また別の女の子が現れた。
千歳(ちとせ)ゆまと同じくらいの年の子だった。
「あれ?もしかして修羅場?」
女の子は緊張感の無い調子でそう彰に聞いた。
彰はため息をついた。
「別に争ってるわけじゃないよ、千里(ちさと)。まぁ……俺が悪いんだけど」
千里と呼ばれた女の子は「ふーん」と言って近くの廃材に腰掛けた。
「ほむらちゃんが俺を信じられないのはわかる。でも俺はもうまどかちゃんを狙ったりはしない」
「保障がないわ」
ほむらがそう言い放つと彰は困った顔をした。
「それを言われると困るなぁ。態度で示すしかないんだよな。でもそれも今すぐここでは出来ないし」
彰に戦う気は無い。
それは理解していた。
銃を降ろせない理由は信じられないこともあるが、一番はほむら自身整理がついていない事だった。
- Re: 第六章 魔法少女?の午後⑥ ( No.166 )
- 日時: 2012/06/08 10:08
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
「あなた……まどかに会いにいかないの?」
「っ!?」
彰は苦虫を噛み潰したかのような渋い顔をした。
「約束したんでしょ?」
「顔向けできない……」
「え?」
「まどかちゃんはきっと待っていてくれてるんだろうね。でもだからといってヒョイヒョイ会いに行くわけにはいかない。なぜなら———」
彰はほむらを見た。
「俺はまどかちゃんの一番大事な人を傷つけてしまった。それなのにどんな顔して会えばいいのか……」
「あなた……それを気にして?」
なんというか意外だった。
まどかほど彰と交流のないほむらは、彰のことを勝手に冷淡な人間だと思っていた。
それは彰が目的のためなら人を殺めることすら厭わない覚悟を持っていたことが理由だ。
だが今目の前にいるのはそんな冷淡さなど微塵も感じさせない普通の少年だった。
嫌がらせをした相手に顔を合わせずらい———そう言っている思春期の少年の考えなのだ。
そう思うとほむらの中で何か解けたような気がした。
言うならば、悪人というレッテルが剥がれ落ちたような感覚だ。
ほむらは銃を降ろした。
「私はもっと辛い目に遭ってきたわ。あなたにされたことなんて大したことじゃないわ」
「でも……」
あの時ほむらが見せた苦痛に歪む顔を思い出しているのだろう。
とても大丈夫なようには見えなかっただろう。
「本当よ。魔法少女だもの……傷を負うことなんて大した問題じゃない。それより……」
ほむらは依然鋭い視線のまま彰を見つめた。
- Re: 第六章 魔法少女?の午後⑦ ( No.167 )
- 日時: 2012/06/08 10:09
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
「まどかを悲しませないで。私のことを気にして会えないでいるなら、それは要らない心配だわ。待ってるのよ……あなたを」
ほむらは視線を落とした。
なんだか胸の奥がチクリと痛んだ。
「私はあなたがいるとまどかが不幸になってしまうのではないかって思ってた。でも今のあなたを見てわかったわ。あなたならまどかを守ってくれる。敵になるような人じゃないって」
「ほむらちゃん……」
「勘違いしないで。私はあなたのしたことを認めるつもりはないわ。あなたがもしまどかを悲しませるようなことをするのであれば私は容赦しない」
ほむらは背を向けた。
なんとなくわかってきていた。
自分は彰に嫉妬しているのだ。
まどかに思われている彰に。
過ごしてきた時間もまどかに対する思いも、彰よりは多いと思う。
だからと言ってまどかの一番大切なものになれるとは限らない。
それを決めるのはまどかなのだから。
そう考えれば考えるほど、ほむらの胸は痛みを増した。
「もう行くわ……」
ほむらは彰を見ることなくその場を去った。
今どんな表情をしているのかわからない。
だがろくな顔はしていないだろう。
それを見せる気には到底なれなかった。
- Re: 第六章 魔法少女?の午後⑧ ( No.168 )
- 日時: 2012/06/08 10:10
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
彰は薄々ほむらの思っていることがわかった。
だから去っていくほむらを止めることも、何か気に利いた言葉をかけることも出来なかった。
「師匠、今の人もあー言ってるんだし、会いに行っちゃったらどうです?」
千里は渋い顔をする彰を覗き込みながら言った。
「いや……今はだめだ」
千里はため息をついて少し離れたところに立っている双樹に視線を合わせた。
双樹は首を振って「それ以上は何も言うな」というサインを送った。
彰はそんな二人を横目に、ふと【概念】の居た場所を見た。
(まだ会えない。俺の予感が当たっているなら、まどかちゃんをめぐる戦いは終わってない。約束を果たすのはすべてが終わってからがいい)
影で支えられれば今はそれでよかった。
今起ころうとしている災厄を退け、本当に笑って会えるその日が訪れた時、交わした約束を果たせればいい。
それがほむらに対しての償いにもなる。
それがいつになるかはわからない。
だが一日は当たり前に過ぎていく。
きっと今日一日様々な物語があったのだろう。
その一つ一つがいずれ思い出となり、笑顔で語られる日を彰は空を見上げながら願った。
- Re: 第六章 魔法少女?の午後 おまけ ( No.169 )
- 日時: 2012/06/08 10:11
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
「ぐぬぬぬぬ!」
「し、ししょー?どうしたんですか?」
頭を抱えて唸る彰に千里は心配そうな顔で言った。
「どうすればいいかわからないんだ……」
「それってどういう……」
「どんな顔でなんて言ってまどかちゃんに会えばいいかわからないんだよ!」
「はぁ?」
「やっぱここはクールに『待たせたね……』がいいかな?それとも明るく『やぁ!お待たせ!』がいいかな!?」
「どっちでもよくないですかぁ?」
「いいや!やっぱ会ったときの印象は大事だろー」
「……」
そう言って思い悩む彰を千里は白い目で見た。
「ししょーも思春期なんだなぁ〜」
千里はしみじみとそう一人つぶやいたのだった。