二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re: 第三章 1話 ( No.20 )
日時: 2012/04/26 10:06
名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)

 デパートの中は色とりどりの電飾や、多彩なオブジェなど普段以上に明るく陽気な雰囲気で包まれていた。

 もうまもなく12月24日。

 クリスマスという一大イベントに向け、世間は大いに賑わっていた。

「どーしようかなー」

 鹿目(かなめ)まどかは大量のぬいぐるみを前にして首をかしげた。

(ほとんどの人のプレゼントは買ったし……あとは———)

 ぬいぐるみ売り場を軽く歩いた。

「あ!」

 まどかはあるぬいぐるみを手に取った。

 そのぬいぐるみはどことなくキュゥべぇに似ていた。

「ボクと契約して魔法少女になってよ!なんちゃって」

 まどかはぬいぐるみを手で動かしながらモノマネをした。

「でもこんなのあげたら怒られちゃうかも……」

 ぬいぐるみを元の場所に返し、ぬいぐるみ売り場を出た。

Re: 第三章 2話 ( No.21 )
日時: 2012/04/26 10:07
名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)

「ぬいぐるみって感じじゃないよね……うーん」

 まどかは雑貨売り場に足を運んだ。

「変なのも売ってるくらいだし、意外と掘り出し物あるかも」

 デパート内にはいくつも雑貨店があるが、ここはちょっと変わった物を多く扱っている店だった。

 親友の美樹(みき)さやかはこの店をヘンタイショップと呼んでいた。

「これとか森の奥深くに住んでる人がもってそう……」

 この店は物の数が多いのも売りなのだが、その割りに店の広さはさほどないため、陳列棚を高くして商品を展示していた。

(見たいけど届かない……)

 まどかは周りを見渡し、目的のものを見つけるとそれを手に取った。

(この踏み台があれば届くかな?)

 まどかのような背の低い人用に設置された踏み台だが、手作りなのか少し安定感がなかった。

 まどかはそんなことお構いなしに踏み台に乗り上を見上げた。

(まだちょっと届かない……。マミさんみたいに大人っぽかったらなぁ)

 まどかは内心で自分に毒づきながら手を伸ばした。

Re: 第三章 3話 ( No.22 )
日時: 2012/04/26 10:08
名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)

(もうちょい……!)

 バキッ!!

「へ……?」

 突然身体を支えることが出来なくなり、まどかの身体は後ろへと傾いていた。

 ここで身体を空中で止めて見事に床と激突を防ぎました!なんてことは魔法でもない限り無理な話で———。

「きゃああ!!」

 当然まどかの身体は床に叩き付けられた。

「お、お客様!!大丈夫ですか!?ど、どこかお怪我は!!」

 女性の店員が半混乱気味にまどかに駆け寄ってきた。

「いた……くない??あれ?」

「あわわわ……」

 店員が可笑しな声を出してまどかの真下を指をさした。

 まどかは指のさされた方向に首を向けた。

「え……!」

 男の人がまどかの下敷きになっていた。

「す、すみません!!だ、大丈夫ですか!!」

「大丈夫だから、とりあえずどいて貰えると助かるかな……」

「ひゃあ!ご、ごめんなさい!」

「間一髪ってところだったね……ってあれ?君は……」

「え?あっ!」

 まどかは目の前にいる男の人に見覚えがあった。

「確か公園で俺が倒してしまった女の人を助けてくれた子だよね?」

 そう、彼はかつて公園で出会った兄妹のお兄さんだった。

「俺のこと覚えてるかな?もうだいぶ前のことだし———」

「もちろん覚えてます!」

 叶ゆかりとの出会いのきかっけでもある彼のことはある意味印象に残っていた。

「それは光栄だなぁ。あ、とりあえずここ出ようか?」

 まどかたちは店員に詫びを言って店を出た。

Re: 第三章 4話 ( No.23 )
日時: 2012/04/26 19:23
名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)

 店を後にした2人はとりあえず休憩スペースにやってきた。

「あの……ほんと怪我とかないですか?」

「ああ、大丈夫だよ。君こそ大丈夫?」

「はい、私は大丈夫です。えっと———」

 まどかは彼の名前を知らなかった。まだ自己紹介の一つもしていなかった。

「ああ、そうだ。自己紹介してなかったね」

 まどかの表情から悟ったのか、彼はそう言った。

「俺は蒼井彰(あおいあきら)。見滝原(みたきはら)高校の1年だよ」

「私は鹿目まどかって言います。見滝原中の2年生です」

 まどかの自己紹介を聞いた彰の表情がパッと明るくなった。

「やっぱり!明奈(あきな)と同じ制服だからそうだと思ったよ!」

「明奈さんってあの時一緒に居た妹さん?」

「そうそう。明奈のことも覚えてくれてるなんて嬉しいな」

「明奈さんは何年生なんですか?」

「1年生だよ。と、言ってもほとんど通えてないけどね」

 彰は苦笑した。

 まどかも車椅子姿の明奈を見ていたため、身体が悪いことはわかっていた。

「明奈は俺の親父の再婚相手の連れ子でね。出会った時から車椅子に乗ってたんだ。生まれつき身体が弱いらしいけど、せめていつか一緒に歩けたら良いなって思うよ。血はつながってなくても、俺たち家族は2人しか居ないから……」

 彰は独り言を言うかのように語った。

「えっと、あの……2人だけって……?」

 まどかは口にしてから聞いてはまずかったかな?と後悔した。

 しかし彰は不快な表情ひとつしなかった。

「ああ、この前あった原因不明の爆発事故に巻き込まれてさ。両親共にね———」

「!!」

 彰が言っている事故にまどかは心当たりがあった。むしろ直接的に関係があった。

(ワルプルギスの夜の日だ……)

 ほむらたちは必死の思いでワルプルギスの夜を倒した。

 だがそれには少なからず犠牲が出ており、その戦いの中で起きた破壊行為は一般の人には原因不明の爆発事故ということで認知されていた。

Re: 第三章 5話 ( No.24 )
日時: 2012/04/26 19:24
名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)

(あのとき彰さんのお父さんとお母さんが———)

 ワルプルギスの夜を倒せなければ、もっと甚大な被害が出ていたであろうことは理解していた。

 だからと言って多少の犠牲は仕方がないなどと割り切ることなどできるはずが無かった。

「ああ、こんな話を会ったばかりの人にするなんて非常識だな、俺は。まどかちゃんが気にかける必要なんてないよ」

「でも!」

『でも』なんだというのだろう。

 あれは魔女のせいなんですなどと説明するのか。

 魔女や魔法少女のことを知らない者に話をして理解してもらえるわけないのだ。

「?」

「え、あの……」

 どう言うべきなのか、まどかがそれを考えあぐねいていると、彰が笑みを浮かべた。

「まどかちゃん、優しいってよく言われるだろ?」

「ほぇ?」

「俺が今話したことに対して、何か真剣に考えてくれてただろ?それが出来るのは優しい人だからさ」

「そんな私は……」

「ほんと気にしないでよ。そうだ、それよりちょっと買い物に付き合ってくれないかな?」

「お買い物ですか?」

「実はさ、明奈にクリスマスプレゼントをあげようかと思ってるんだけど、どんな物をあげていいかわからなくてさ。そこでもし良かったらまどかちゃんの意見を貰えたらなーと思ってね」

 さっき助けて貰ったお礼が出来ればと思っていたため、彰の申し出は願ってもないチャンスだった。

「私で良かったら。それにさっき助けて貰ったお礼もしたいですし」

「そっかそれは良かった!是非ともよろしく頼むよ」

Re: 第三章 6話 ( No.25 )
日時: 2012/04/26 19:25
名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)

 彰の妹である明奈のプレゼント探しを始めて1時間が過ぎた。

 これといった物も見つからず、少々途方に暮れ始めていた。

「ごめんね、まどかちゃん。色々意見出してもらってるのに……」

「いえ、そんな……。あ、そういえば明奈ちゃんは何か好きなものとか無いんですか?」

「そうだなぁ。あんまり物を欲しがる子じゃないから……。あ、でも確かガラス細工は好きで集めてたな」

「それならいいお店しってます!」

「ほんと?」

「このデパートのすぐ近くにあるお店なんですけど、そこのお店の人がガラス細工が趣味で作っては売ってるんです」

「へぇ、それは中々期待できそうだね」

「はい!とっても綺麗で可愛いのとかいっぱいあるんですよ」

「なら早速行って見よう」

Re: 第三章 7話 ( No.26 )
日時: 2012/04/26 19:27
名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)

「こりゃ凄いな……。店の隅っこにそっとあるくらいだと思ってた」

「ふふ、ここまでいっちゃうとこれがメインって感じですよね」

 一応、雑貨屋という風に外の看板に書かれてはいるが、店の大半はガラス細工で占められており、初めて来た客は専門店と勘違いしてしまう。

「しかし結構いい値段するな……貧乏学生の俺に手が出せるとは思えない……」

「それは私も同じですよ」

 まどかと彰は顔を合わせて苦笑した。

 2人はとりあえず比較的値段の安いガラス細工が展示されている場所にやってきた。

「これくらいなら出せそうだ。どれがいいかなぁ」

「どんなのを集めてるんですか?」

「色々だけど、特に鳥が好きで鳥のガラス細工を集めてるね」

「鳥かぁー。高いコーナーにはいっぱいあったんですけど……」

 形が複雑なほど値段が高いようで、鳥は値段の高い部類に含まれているようだった。

「これ……」

 彰はある鳥のガラス細工を手にした。

 親指の第一関節くらいの大きさで、2羽セットになったキーホルダーだった。

 1羽は羽を広げて飛ぼうとしている姿。もう1羽は羽を閉じ、身体を丸くしている姿。

「あ、可愛いですね!」

「そう思う?値段も全然手が届く範囲だし、それになんか惹かれるんだよな」

「一目ぼれしちゃったんですね、きっと」

「そうかもね。よし、これにしよう」

 彰は商品をレジに持っていった。

 そして包装をお願いした。

Re: 第三章 8話 ( No.27 )
日時: 2012/04/26 19:29
名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)

「別々に包装します?」

「え?2つで一つじゃないんですか?」

 彰は店員の言葉に思わずそう聞き返していた。

「商品としてはそうだよ。でも鳥としては別々なのさ」

「どういうことですか?」

「これはね、兄妹鳥っていうんだ。飛ぼうとしているのが兄鳥、そして縮こまっているのが妹鳥さ」

「兄妹鳥……」

「妹鳥は飛ぶことが怖くて殻に閉じこもってしまっているんだけど、兄鳥はその妹鳥を一緒に飛ぼう!と励ましているんだ。未来へ共に羽ばたこうって意味が籠められてるんだ」

「未来か……奥が深いんですね」

「まあね。これはお互いが1羽ずつ持って、いつか羽ばたくためのお守りとして持っていて欲しいんだよ」

「なるほど。何となく惹かれた理由がわかりました。じゃあ、別々に包装してもらえますか?」

 店員は笑顔で了承した。

 そして彰は会計を済まし、商品を受け取ると店を出た。

「ごめん、待たせたね」

「いえいえ。プレゼント買えて良かったです」

「うん、おかげで助かったよ。ほんとうにありがとう」

「もともと私が彰さんに迷惑かけちゃったんですから。気にしないでください」

「ほんと優しいな、まどかちゃんは」

 彰はそういってふと腕時計に目をやった。

「あ、もうこんな時間か……。そろそろ帰ってやらないと明奈が心配するなぁ」

「明奈ちゃん、彰さんが居ないと一人なんですよね?早く帰ってあげたほうがいいですよ!」

「でも周りもだいぶ暗いし……」

「ほんとに大丈夫ですよ。それにまだ友達にあげるプレゼントを買ってないし」

「そうなの?それなら俺なんかに付き合わなくて良かったのに……」

「助けて貰ったお礼って言ったじゃないですか。だからいいんです。それにこの後私に付き合ってたら、いつまでも帰れないですよ?」

「ずいぶん気合の入ったプレゼントなんだな。それほど大切な友達なんだね」

 まどかは頷いた。

「とっても大切で、特別な友達です。だから満足のいくプレゼントがしたいんです」

「そっか。とは言え、やっぱり何もせずにこのまま俺だけ帰るのも申し訳ない気がするな」

「じゃあ……どんなプレゼントが良いか意見をください。これでおあいこってことで」

Re: 第三章 最終話 ( No.28 )
日時: 2012/04/26 19:30
名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)

「そうだなー」

 彰は今まで見てきたものを思い返した。

 だがこれ!というものは出てこなかった。

「むずかしいなぁ」

 彰はふと個別包装された明奈へのプレゼントと、まどかの髪に巻かれたリボンを見た。

「リボン……」

「え?」

「リボンなんかどう?今まどかちゃんがしてるようなリボン。お互い同じものを持ってるのって特別な感じしない?」

 全然考えもしなかった。

 彰の言うとおり、同じものをお互いで共有するのは心が繋がっているようで何だか嬉しい気持ちになれそうだ。

 それにリボンをしている姿を想像してみると、抜群に似合いそうな気がした。

「うんうん!とても素敵かも」

 まどかの行く先は決まっていた。

 満足そうなまどかの顔を見て彰は微笑んだ。

「ありがとうございます。良いプレゼントができそうです、んふ♪」

「少しでも役に立てたなら良かった。それじゃあそろそろ……。これ以上遅くなったら明奈にもまどかちゃんにも悪いしね」

「またこうやって会えるといいですね」

「きっとまた会えるよ。次会うときは時は明奈も一緒に連れてくるよ」

「じゃあ私も友達と一緒に行きます」

「うん、また笑顔で会おう。お互い———」

 まどかはデパートへ。

 彰はそのまま帰路へ。


 この2人の再会は本当にただの偶然だった。

 だがこの偶然がこれから先の未来を少なからず変えてゆく。

 その始まりは少し先の話。