二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Re: 第七章 眠り姫の存在証明 3日目 6話① ( No.225 )
- 日時: 2012/06/26 11:30
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
クロードは自身の腕時計に目を向けた。
「3分、経ちましたね」
半錯乱状態にあったまどかはその言葉で少し現実に引き戻された。
クロードは再び懐から解毒剤を取り出し、それを親指と人差し指でつまんだ。
「私は戦闘タイプではありませんが、これくらいを握りつぶすことは造作もないことですよ?」
まどかの位置からでもクロードの指に力が加わるのがわかった。
「や、やめて!」
「約束の時間が過ぎたではありませんか。ならば私がすることは———」
「言うとおりにするから!だから……お願い……」
クロードは口元を吊り上げ、視線をまどかの足元に向けた。
「はいはい、オイラに用っすか!?」
いつのまにかまどかの隣にゴンべぇが居た。
ほむらのときと変わらず、営業スマイルを浮かべて座っている。
「ずっと待ち構えていたでしょうに。まぁ、それはどうでも良い事ですね」
視線をまどかに戻した。
「では、まどか様……。願いをどうぞ」
まどかは胸元で手を握るとグッと力をこめ、心を落ち着かせるように、決心が揺らがないようにと一息ついた。
- Re: 第七章 眠り姫の存在証明 3日目 6話② ( No.226 )
- 日時: 2012/06/26 11:31
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
「私は……私はあなたになんか負けない……!。このあと、私がどうなるかわからないけど、それでも負けない!」
「支離滅裂ですよ。死んでしまったらそれで負けではありませんか」
まどかは首を横に振ってそれを否定した。
「私が負けを認めない限り、あなたはずっと勝てない。どんな結果になっても、それはあなたの自己満足でしかないんだよ!」
「何を今更……。そんな屁理屈で私が揺れるとでも思っているのですか?」
そう言いながらクロードは動揺していた。
クロードがまどかに持っていた印象はどこにでもいる普通の少女であり、逆に言えば力なき一人の少女だった。
だがそんなまどかがこうやって屁理屈とはいえ力強い言葉を向けてくるとは思いもしなかった。
誰が聞いても戯言を……と笑い飛ばす程度のことなのに、まどかが口にするだけでそれは神を相手にしているかのような威圧があった。
(内に持つ潜在能力の高さがこの雰囲気を醸し出しているのか?それとももっと別の何かを?)
クロードは今考えても仕方が無いこと———と割り切った。
「さぁ、ゴンべぇくん。よろしくたの……」
言いかけたとき、クロードはこの空間に発生した違和感に思わず周囲を見渡した。
- Re: 第七章 眠り姫の存在証明 3日目 6話③ ( No.227 )
- 日時: 2012/06/26 11:32
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
「どうしたんすか?」
「風が……吹いている!」
「風……っすか?」
この空間はクロードが作り出した結界の中だ。
クロードが作り出せるのは風景のみで、風や雷など自然現象は作り出せない。
もし風がこの空間に吹いているとしたらそれは———。
(結界を破られた?)
クロードがその思考に至ったとき、突然それは起こった。
グシャァ!と音を立ててゴンべぇが木っ端微塵に弾けとんだのだ。
クロードはすぐに何が起きたのかを悟った。
「狙撃だ!お前達、口さえきければ構わない!鹿目まどかを拘束しろ!!」
クロードの命令と共に魔獣たちが一斉にまどかに迫った。
「ひっ!!」
まどかは襲い来る魔獣の気迫に気圧され、瞬き一つすることすら出来ずに固まった。
だが次の瞬間、まどかを援護するかのように銃弾の雨が魔獣たちを襲い、まどかに届く前に吹き飛んだ。
しかしその銃弾の雨をも潜り抜け、数体の魔獣がまどかの目の前へと迫った。
もう駄目だ———まどかは心の中でそう思った。
「もう駄目って顔に出てるよ。負けないんじゃなかった?」
「え!?」
どこからともなく、この場に不釣合いな優しい声がした。
その声がまどかたちの頭上から聞こえたことに気付いたのは、空から落ちてきた黒い塊が魔獣たちをなぎ倒した後の事だった。
「まどかちゃんを負けさせなんかしない。絶対に……」
この混沌渦巻く世界に嵐のように降り立ったのは漆黒に包まれた一人の騎士だった。
- Re: 第七章 眠り姫の存在証明 3日目 7話① ( No.228 )
- 日時: 2012/06/27 16:16
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
「バカな……?」
クロードの動揺が伝わったのか、魔獣たちの動きが止まった。
動揺しているのはクロードだけでは無かった。
目の前に立つ漆黒の騎士の姿にまどかも言葉を失っていた。
この瞬間までとても現実とは思えない出来事がたくさんまどかに起きた。
そんな非現実的なものを見てきてもなお信じられなかった。
会いたいと願った。
だがきっとその願いは叶うことは無いだろうと心の中で思っていた。
その思いが目の前に存在するその人が現実なのか、まどかを惑わせた。
だから確かめずにはいられなかった。
その名を呼ばずにはいられなかった。
「彰……さん?」
騎士は顔だけまどかに向けて縦に一度頷いて見せた。
「あとで話そう。今はここから逃げよう」
それだけ言って騎士は再びクロードに向きなおった。
まどかは言いたいことをグッと胸の奥にしまって、騎士に従った。
「あなた……なぜ生きているのですか?」
クロードの問いに騎士は答えなかった。
「話す必要は無い……。そういうことですか?ならば……」
クロードが右手を上げ、魔獣たちに合図を送った。
「お前達、あの男は殺して構いません。まどか様をとらえ———」
クロードの言葉を一発の銃声が遮った。
「え?」
まどかが間の抜けた声をあげ、そして何が起きたのか把握しようとした時には全て終わっていた。
気付いた時には騎士が自身の左肩に気絶したほむらを抱え、まどかも右肩に抱えられていた。
そのまま騎士はジャンプしてその場を離れていく。
離れていく最中、まどかは銃弾で頭を射抜かれて倒れているクロードの姿を見た。
先ほどの銃弾の狙いがクロードであったことにこの時まどかは気が付いたのだった。
- Re: 第七章 眠り姫の存在証明 3日目 7話② ( No.229 )
- 日時: 2012/06/27 16:17
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
建物の屋上にたどり着いた騎士はまどかを降ろし、ほむらをそっと寝かした。
「ほむらちゃんは?」
「大丈夫。気を失っているだけだよ」
騎士———蒼井彰(あおいあきら)は兜をはずしてそれを消した。
彰の顔を見て、まどかは一瞬ためらった。
嬉しい反面、この三日間の経験がまどかを疑心暗鬼にしていたのだ。
「本当に……彰さんだよね?」
「正真正銘、本物さ。足もあるし、操られてるわけでもないよ」
彰はおちゃらけた雰囲気で笑顔を見せると、数回足踏みをして足が地に着いていることをアピールした。
まどかはその様子を見て目を吊り上げて怒りを露わにした。
「なんで教えてくれなかったんですか!!?」
彰はまどかの怒りの原因が生きていることを黙っていたことだとすぐに理解すると、笑顔を苦笑いに変えた。
「ずっと待ってたのに……。全然、彰さんが来てくれないから私……」
「ごめん……」
何か気の利いた言い訳を言おうと思っていたのに、まどかの瞳に溜まる涙を目にしてその言葉しか口に出来なかった。
「本当は会いに行きたかったんだけど、やっぱり自分がまどかちゃんたちにしてきたことを思うと出来なかったんだ。出来ればちゃんとした形で再会できればよかったんだけど……ごめん」
彰は取り繕うように何とか伝えたいことを言葉にした。
まどかはそれに泣きながら頷いた。
お互い、言いたい事がたくさんあるはずなのになぜかそれが言葉に出来なかった。
- Re: 第七章 眠り姫の存在証明 3日目 7話③ ( No.230 )
- 日時: 2012/06/27 16:18
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
「お取り込み中のところすみませんけどー」
沈黙を破ったのは千里だった。
「えっと……いつの間に?」
まどかは涙を袖で拭くと、いつの間にか自分達の横にいた千里と双樹の二人に視線を向けた。
「ずっといたよ」
そんなまどかを千里は目を細めて半ば睨むようにして見つめた。
「えっと……」
なぜ睨まれているのかわからないまどかは助けを求めるように彰を見た。
「この子は綾女千里(あやめちさと)。もう一人が樽咲双樹(たるさきそうじゅ)。二人とも仲間だよ」
千里は「ふん」とそっぽを向き、双樹は礼儀正しく一礼をした。
「わ、私は———」
「知ってるよ。だから別に名乗らなくていい!」
千里が語尾を強めてそう言った。
まどかは困惑してどうしたらいいかわからずに立ち尽くした。
「気にしなくていいよ。いつもあーだから」
そう彰がフォローをいれた。
そして彰はまどかの頭に手を乗せ、「ちょっと待ってて」と言って千里たちのほうに足を向けた。
「まだ奴らは俺たちの場所を把握出来てないよね?」
「ですねー」
千里は地図上に溢れかえる点が無闇やたらに動いていることを確認し、そう言った。
「よし、ならもう一度奴らに向けて一斉狙撃してくれる?俺は二人を連れてここを一旦離れるから」
「わかりました。すぐにマスターのあとを追います」
「頼むよ、双樹。千里もね」
双樹と千里はタイミングぴったりに親指を立ててグーサインをした。
彰もそれに返すようにグーサインをした。
- Re: 第七章 眠り姫の存在証明 3日目 8話① ( No.231 )
- 日時: 2012/06/27 16:20
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
樽咲双樹(たるさきそうじゅ)の主な武器はほむら同様に銃器だ。
だがほむらと違い、魔法で銃器を生成する。
そういう点においてはどちらかといえばマミに近い。
双樹は配置されたバレットM82を模した狙撃銃にあわせ、身体を寝かせた。
対物ライフルに分類されるオリジナル同様に、魔法で生成したこの銃も軽車両くらいなら貫ける。
銃同様に魔法で生成した弾丸は発射された瞬間に分裂し、複数の位置に狙撃することが出来る。
だがこれはあくまでオプションとしての能力で、双樹自身はスナイパーでもなく、魔法少女であることを除けばただの女の子だ。
この狙撃銃を使用しているのもただ本で目にしただけという理由だし、魔法で生成した銃であればどんな形状だろうと飛距離や威力などいくらでも好き勝手に可変可能だ。
それでも双樹は狙撃する時はこの銃だし、近接戦闘ではいつもデザートイーグルを模した物を使用している。
それには双樹が持つ本来の能力に起因している。
- Re: 第七章 眠り姫の存在証明 3日目 8話② ( No.232 )
- 日時: 2012/06/27 16:21
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
双樹の魔法の性質、それは『依存』。
とにかく依存することでしか生きられない双樹はモノや人に対して異常な執着を持っている。
それを能力にしたのが『コ・ディペンデンシー』だ。
共依存の名を持つその能力は魔法少女を対象に依存することで発揮する。
能力が発動するとソウルジェムとソウルジェムが精神的リンクをはり、『依存状態』を作り出す。
依存状態に入ると双樹の精神は対象と融合し、相手が受けたダメージを代わりに請け負う。
そのかわり双樹は相手の能力を一部借り受けることが出来るようになる。
相手に自覚はなく、無意識のうちに頼り頼られの関係を作り出すのだ。
ただこの能力にも限界がある。
依存率により身代わりになるダメージも大きくなる。
精神的な融合であるため、受けたダメージは肉体ではなく精神———つまりソウルジェムに行く。
依存率があがれば借りられる能力の度合いも大きくなるが、それに固執してしまうと一瞬で魔女化してしまう可能性もあるのだ。
(私自身がそうして滅びるのは構わない。私は依存することでしか生きられないから。でも私の全てを受け入れてくれる人が居ない……)
どの程度依存できるかは相手との相性による。
双樹の望みは100パーセント依存できる、受け入れてくれる人を見つけ出すことなのだ。
- Re: 第七章 眠り姫の存在証明 3日目 8話③ ( No.233 )
- 日時: 2012/06/27 16:22
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
(マスターは今まで出会った誰よりも私を理解してくれる。命を投げ出しても良いほどに依存できる。それでも私の求めている人ではない……)
彰と一緒に居るのは心地がいいし安心する。
実際に今はマスターと呼び『依存』している。
そんな彰でさえ、何か足りないと感じる。
(私は一体何を求めているのだろう……)
スコープの先に見える自我無きモンスターを見ていると、まるで自分のようだと思う。
今はこうして彰のために戦っているが、そうしようと決意したのは双樹ではない。
彰がそうして欲しいと望んでいるからだ。
双樹はそれが嫌だとか思ったことはないし、そうすることが幸せだとさえ感じる。
(なのに何か物足りない……)
双樹のソウルジェムが一瞬ぶるっと震えた。
リンクが確立された証だ。
(考えてもしょうがない。今はマスターのために……)
双樹がリンクした相手は綾女千里(あやめちさと)だ。
千里の千里眼による追尾能力と組み合わせれば自動追尾弾の完成だ。
二人の能力の相性は抜群に良い。
それに気がつき、実践化させたのは彰だ。
- Re: 第七章 眠り姫の存在証明 3日目 8話④ ( No.234 )
- 日時: 2012/06/27 16:23
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
「そーちん、準備オッケー?」
「いつでもいいわ」
双樹の『コ・ディペンデンシー』は無意識のうちにリンクされるため、千里は双樹と繋がっているのかわからない。
だがこのように意思疎通をすればその問題も解消できる。
リンクされていることさえわかれば、意図的に敵の位置情報を双樹に送ることも出来るのだ。
「送るよ!」
千里は一度見た相手の魔力を記憶し、それを追跡する能力だ。
その魔力情報を双樹と共有すれば、千里とリンクし、一時的に千里の能力を使用できる双樹は千里の同じ相手を追跡可能になる。
双樹が覗くスコープの先に千里と同じ地図が展開された。
追跡するのは双樹たちではなく、弾丸。
双樹は引き金を一回引いた。
魔法で生成された弾丸は発射された瞬間、分裂して地図にマーカーされた敵に向かって飛んでいった。
今回のように複数相手にする場合は狙う場所を指定できない。
あくまでマーカーされた相手に当てるだけで、当たったということは認識できても、どこに当たったのか、倒せたのかはわからない。
故にこの攻撃は殲滅するためではなく、逃げる時間を稼ぐためのものなのだ。
- Re: 第七章 眠り姫の存在証明 3日目 8話⑤ ( No.235 )
- 日時: 2012/06/27 16:24
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
(何か変だ……)
双樹は違和感を感じた。
地図上のマーカーが次々に消えている。
だが当たった感覚が無い。
双樹は千里に視線を向けた。
千里も困惑の表情を浮かべていた。
マーカーが消えるということは対象の魔力の消失を意味する。
消失のパターンは二つ。
対象が死亡した場合。
もう一つは意図的に魔力を消した場合。
(この攻撃方法ではこんなに効率よく敵を殲滅なんて出来っこない。相手が人ならまだしも切っても焼いても死なないような化け物ならなおさらオカシイ)
双樹はスコープから敵の姿を確認した。
やはり姿が見えなくなっている。
魔獣も、クロードの遺体も———。
「え!?」
クロードの遺体も無い。
そんなことはありえない。
ありえるとすれば……。
「マスター!!」
「ししょー!!」
双樹と千里が同時に叫んだ。
地図には彰たちのもとに向かう一つの反応が示されていた。