二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Re: 第七章 眠り姫の存在証明 3日目 13話① ( No.250 )
- 日時: 2012/07/05 13:42
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
「あ、彰さん!!?」
まどかは突然、胸を押さえて苦悶の表情を浮かべながら苦しむ彰に駆け寄った。
しかしそれを千里が止めた。
「今、ししょーに近寄っちゃ駄目!」
「で、でも!」
「今、ししょーは『痛みの翼』をコントロール出来てないの!近づいたらあの世につれてかれちゃうよ!」
「訳がわからないよ……。一体何が起きているの!?」
まどかと最後別れた後に手に入れた能力だ。
当然そのことを知らないまどかは今起きているこの事態にまったくついていけていなかった。
「マスターの『痛みの翼』は対象の持つ深層に眠る最も深い傷を共有し理解してあげることで魂を浄化して理(ことわり)……わかりやすく言えば天国に導く能力」
「でもその力と彰さんが苦しそうにしている関係って……?」
双樹の説明で大まかなことはわかった。
だが今なぜあんなにも彰が苦しんでいるのか、それがやはりわからなかった。
「あんた、マジでわからないの?」
千里がイライラしながらため息をついた。
- Re: 第七章 眠り姫の存在証明 3日目 13話② ( No.251 )
- 日時: 2012/07/05 13:43
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
「傷となった記憶を共有するんだよ?傷は人それぞれだけど、どれもその人が傷になってしまうくらい嫌な事。目も背けたくなるような傷だってあるんだよ。それを何十人分も見せられてるんだから、普通の人だったらおかしくなるに決まってるじゃん!」
「そ、そんな!」
『痛みの翼』は諸刃の剣なのだ。
本来は魔女になってしまい、救いの無い魔法少女たちのために生み出された魔法。
グリーフシードが手に入らず、魔女化するものもいるだろう。
だが恐らく、それ以上に負の感情に支配されてソウルジェムを濁らしたがために魔女化する魔法少女のほうが多い。
なぜならそういった感情の爆発が起きた瞬間に生まれるエネルギーがインキュベーターたちにとって『上質』なのだから。
だからこそ感情を持つ生命体を選んだのだ。
負の感情を持って魔女化した魔法少女の傷は相当のものだろう。
魔女化するほどの傷を共有するということは、己自身も魔女化するリスクを背負わなくてはならない。
それはすなわち死を覚悟していなければ出来ない。
今、彰が相手にしているのは魔女ではない。
だが魔獣にされたという傷は大きいに違いない。
悔しさ、悲しさ、憎しみ。
ありとあらゆる負の感情を、彰は今一人で受け止めているのだ。
- Re: 第七章 眠り姫の存在証明 3日目 13話③ ( No.252 )
- 日時: 2012/07/05 13:44
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
(そんなの……辛すぎるよ!)
まどかの瞳から涙があふれた。
まどかを助けたい———その気持ちが今の彰を動かしている。
それを知っているからこそ涙があふれた。
そして泣くことしか出来ない自分が情けなかった。
「悔やむ……ことはないよ……まどかちゃん」
「彰さん……!」
「俺は、君たちに救われたんだ。あの時……ほむらちゃんが俺が間違っていることに気が付かせてくれた。そしてまどかちゃんとの約束が……俺に生きる希望を与えてくれた……」
肉体を傷つけれられているわけでも無いのに、見るからに衰弱しているのがわかった。
「っ!!」
彰の左手のひらに埋め込まれたソウルジェムが半分濁っていた。
「今度は俺が二人を助ける……番でしょ?」
彰は力なく笑った。
「やめて……このままじゃ、彰さんが……」
彰は首を横に振った。
「これは明奈との約束でもあるんだ。痛みを背負った魔法少女たちを救うってさ」
『痛みの翼』がさらに大きくなった。
死を覚悟してでも救いたいという彰の意思を受け取ったかのように。
時間にしてみれば五分と経っていない。
とても長いと感じたその瞬間が終わりを告げたとき、『痛みの翼』の消滅と共に、彰はその身を沈めた。
- Re: 第七章 眠り姫の存在証明 3日目 14話① ( No.253 )
- 日時: 2012/07/05 13:45
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
彰が目を覚ますと見渡す限り真っ暗な世界が広がっていた。
身体は横になっているのだが、背中が地についている感覚は無く、まるで海の中を漂っているかのようだった。
(ここは……?)
確か自分は『痛みの翼』を使用した。
そして『痛みの翼』を通して伝わる痛みに心が捻りつぶされそうになった。
とても苦しくて、悲しかった。
ただそれしかわからなかった。
そのあと自分がどうなったのか全くわからなかった。
(死んだのかな?それとも魔女に?)
どちらにせよ、行き着く先が何も存在しない暗闇の世界ではあまりにも寂しいではないか。
『痛みの翼』で導かれた者たちは、せめて希望ある世界に行ってくれていたら良いのだけど———彰はそう思った。
彰は首にかかっているはずの鳥のガラス細工があることを確認しようと胸元を探った。
そしてそれがあることを確認すると安堵の息を漏らした。
(あれ?)
ふとおかしなことに気が付いた。
(感覚がある……)
胸に触れたとき、確かに触れたという感覚があった。
死んだ人間には五感というものが存在しないと思っていたのだが……。
- Re: 第七章 眠り姫の存在証明 3日目 14話② ( No.254 )
- 日時: 2012/07/05 13:45
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
(身体はただの入れ物で、実際に感じるのはソウルジェム———つまり魂だったよな……。ソウルジェムも手元にあるし、死んで魂だけになっても魔法少女は魔法少女のままなのかな?)
彰は身体を起こして立ち上がった。
こんな上も下もないような世界で『立ち上がる』というのも変な話だが。
とりあえず辺りを見回してみた。
「あれは……?」
遠くに光が見えた。
この真っ暗な世界においてその光は希望に見えた。
(希望……か。もしかしたら三途の川の向こうから手招きする死神だったりしてな)
苦笑しつつも、その光しか手がかりない今の状況ではそれにすがるしかなかった。
歩を進めるが、地面を踏んでいる感覚が無いため本当に進んでいるのかわからない。
だが着々と光に近づいているため、とりあえず進んでいるのは確かなようだ。
光は段々と大きくなり、そしてそこに何があるのかが見えてきた。
「これって……鳥かご……?」
それはとてつもなく大きな鳥かごだった。
一周するのに1時間はかかりそうだ。
「あの世にしては洒落てるなぁ」
彰は鳥かごに近づき、魔力で強化した目で格子越しにかごの中を覗いてみた。
- Re: 第七章 眠り姫の存在証明 3日目 14話③ ( No.255 )
- 日時: 2012/07/05 13:46
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
「!!」
見開いた目と開いた口が塞がらなかった。
鳥かごの中央には椅子がポツンと一つ置かれており、そこには少女が座っていた。
穏やかな波のようにゆらゆらと長い髪を泳がせ、光を纏った純白のドレスを着ていた。
女の子というには失礼かと思ってしまうほど神々しく、その様はまさに女神だった。
しかし彰が驚いたのはその神々しさにでは無かった。
その子の顔が彰の知っている人物にあまりにも似ていたのだ。
「ま、まどかちゃん……?」
思わず口から漏れていた。
椅子に座った女の子は彰の声に反応し、驚きの表情を浮かべた。
女の子は立ち上がると突然音も無く消えた。
そして消えた時同様、突然彰の前に現れた。
「———!!」
突然のことに彰は言葉を失った。
強化した目で見ていたから近くにいるように見えていたわけであり、実際は歩いて近づけば数十分はかかる。
それを一瞬で近づいて見せた。
それはこの女の子には距離や時間という概念がまるで関係ない———自分が概念そのものだからと言わんばかりだった。
「どうしてここに……?」
「やっぱりその声……まどかちゃんなのか?」
彰がそう言うと、女の子は困った顔をした。
「あなたは……?」
「……」
確かにまどかの顔をしているが、自分が知っているまどかでは無い———そう彰は悟った。
- Re: 第七章 眠り姫の存在証明 3日目 14話④ ( No.256 )
- 日時: 2012/07/05 13:47
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
「俺は蒼井彰……。気付いたらここにいたんだ」
「あなたが彰さん……?」
「俺を知ってるの?」
女の子は優しい笑顔で微笑んで頷いた。
「たくさん彰さんのこと聞かされたから。聞いたとおり、すごく優しそうな人……」
「君はその……まどかちゃんなのか?」
「彰さんの知っている私とは違う私。でも本当なら一つになるはずだった私なんだよ」
「どういう……」
『まどか』が彰の手を包み込んだ。
たくさん聞きたいことはあるはずなのに、その手が暖かくあまりに心地がよかったたせいかどうでもよくなってしまっていた。
包み込まれた手の隙間から黒いもやが蒸気のように上がっていた。
(俺のソウルジェムが浄化されてる!?)
本来グリーフシードでしか出来ないことを、この『まどか』は顔色一つ変えずにやってのけた。
彰のソウルジェムを浄化し終わると、『まどか』は手を離した。
「ここは彰さんの居るべき場所じゃないよ」
「え?」
「それって……」
なぜか目の前にいる『まどか』がとても儚く見えて、もう二度と会えないのではないかと思えて、彰は思わず手を伸ばした。
だがそれは叶わず、彰の身体は動かなくなっていた。
「まだここに来るには早いよ」
突然、背後から声がした。
(この声……嘘……だろ?)
視界が揺らいでだんだんと目の前が真っ白になっていった。
どこか悲しそうにしている『まどか』。
そして格子越しに『まどか』の隣に立つもう一人の少女、それは———。
「———っ!!」
既に言葉を発することが出来ず、少女の名を口に出来ぬまま、彰は再び暗闇へと沈んでいった。
- Re: 第七章 眠り姫の存在証明 3日目 15話① ( No.257 )
- 日時: 2012/07/06 15:55
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
どこか遠くから声が聞こえてきた。
次第にその声は大きくなり、それが自分の名を呼んでいるのだと彰はようやく認識できた。
「彰さん!!」
「まどか……ちゃん?」
朦朧とする意識の中、自分のことを泣き崩れた顔で見下ろすまどかを見た。
(ああ……俺、気を失ってたのか。何か夢を見ていたような……。でも何にも思い出せない)
思い出そうとしてもまるでカギをかけられてしまったかのように、記憶を引き出すことは出来なかった。
しかし目の前で安堵の笑顔を浮かべるまどかを目の当たりにして、彰は夢のことなどどうでも良くなった。
「やっぱ笑っているほうが可愛いよ」
「そんな冗談ばっかり言って……心配したんだよ……」
「ごめん、ごめん」
彰はなんとか自力で立ち上がると、クロードのほうに向き直った。
「俺はどれくらい気を失ってた?」
「1分くらいです」
双樹がそう答えた。
双樹と千里は、彰とまどかの前に壁になるようにして立っていた。
辺りに魔獣の姿はなく、どうやらすべて浄化することに成功したようだ。
(って言っても、あまり状況は変わらないか……)
魔獣は居なくなったが、彰の身体は満身創痍で戦うことなどほとんど出来ない。
(ここは俺を囮にしてでも逃げる……。それしかない!)
この考えを皆に言えば当然反対されるだろう。
だから彰は自身の内の中で決意を固め、人知れず拳を握り締めた。
- Re: 第七章 眠り姫の存在証明 3日目 15話② ( No.258 )
- 日時: 2012/07/06 15:56
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
(こんなことが……)
30体近くいたはずの魔獣が一つ残らず消え去ったこの現状にさすがのクロードも動揺を隠せなかった。
彰がどのような魔法を使い、どのようにして魔獣を消し去ったのか、クロードには何が起こったのかまったく理解出来なかった。
(こんな魔法があって良いのですか?こんなのまるで神の所業……。先ほど蒼井彰の仲間が『傷となった記憶を共有する』と言っていた。それが本当だとしたら、蒼井彰は化け物……!)
痛みを共有するということは相手の辛い出来事を共有するということだ。
普通の魔法少女ならソウルジェムが真っ黒になり、魔女化してもおかしくない。
にも関わらず、彰は30体近くの魔獣たちの痛みを共有し、クロードの前に立っている。
(精神力の強さも異常だが、それをやってのける魔力のキャパシティも恐ろしい。一体何者なのですか、あなたは?)
苦虫を噛み潰したような表情を浮かべたが、すぐに笑みへと変わった。
(しかしこちらが有利なの変わりません。このまま一気に終わらせて勝利を手にするのです)
まどかさえ生きていればいい。
その前提で行けば、他の者に容赦する必要は無い。
弱っている彰とほむら。
戦闘力皆無の千里。
唯一戦える双樹にさえ気をつければ戦闘力の低いクロードでも充分に戦えるはずだ。
(色々イレギュラーが起きましたが、今度こそ終わりです!)
クロードが戦闘体勢を取る。
クロードそして彰。
二人の決意が揃った時、それぞれにとって意外な展開が前触れもなく訪れた。
- Re: 第七章 眠り姫の存在証明 3日目 16話① ( No.259 )
- 日時: 2012/07/06 15:57
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
鷺宮千鶴(さぎみやちづる)はクロード越しに見える蒼井彰(あおいあきら)の力を目の当たりにして言葉を失った。
「はは……」
自然と乾いた笑いがこぼれた。
「希望って信じる者には応えてくれるんですね」
千鶴の人生は諦めばかりだった。
自分という存在が何のためにあるのか?
その答えを求めていた。
だが目の前に壁があればすぐに折り返し、前に進むことをやめていた。
父の時もそうだ。
勇気が無かったんじゃない。
鷺宮千鶴という人間が意味もなく失われてしまうのを怖かったのだ。
希望など一度も抱いたことなど無かった。
もし彰のように希望を信じることが出来れば、恐れを断ち切り救える者もあったかもしれないのに。
今もある人の助けになろうと決めていたはずなのに、諦めかけていた。
- Re: 第七章 眠り姫の存在証明 3日目 16話② ( No.260 )
- 日時: 2012/07/06 15:58
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
(彼が私に希望をくれた。ならやっぱり私も果たさなくちゃ……)
千鶴は窓のから空に浮かぶ月を見た。
あの時もこんな夜だった。
「織莉子さん……。私の役目は伝えることなんです」
「千鶴さん?」
「私たちは運命の奴隷……逆らうことなんて出来ない。でも奴隷だって王にささやかな抵抗くらい出来ます。いずれそれは大きな亀裂となる」
「それが伝えること……?」
「そうです。言うなら、私たちにはそれしか出来ないんです」
これから織莉子に伝えることは、千鶴も伝えられたことだ。
少しずつ、そして確実にそれを伝えていかなければならない。
それは千鶴が魔法少女になって少し経ったころに聞いた話。
千鶴にとって運命を変えた出会い。
物語はワルプルギスの夜が現れる少し前にさかのぼる。
- Re: 第七章 眠り姫の存在証明 3日目 17話① ( No.261 )
- 日時: 2012/07/06 15:59
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
千鶴は父が手を汚していたことを知った。
それを千鶴に教えたのは織莉子の父だった。
織莉子の父は汚職のことを公表すると伝えに来たのだ。
「千鶴ちゃん。私がこのことを君に伝えたのは、君の言葉ならお父さんを説得出来るかもしれないと思ったからだ。私は既に告発するための材料は揃えている。つまりいつでも行動を起こせるということだ。だがそうすることで一番苦しむのは君だ。だから私は事を起こす前に、君に希望を託したい」
そう言われたが千鶴は動くことが出来なかった。
父は千鶴をとても可愛がってくれていた。
千鶴が小さいときに母を亡くして以来、ずっと父は屋敷のものにほとんど手を借りることなく育ててくれた。
どんなに手を汚していようと千鶴にとっては大好きな父親なのだ。
千鶴という存在を認めてくれるのは父しか居ない。
父を失えば千鶴は自分を失うことになる。
それが怖くてたまらなかった。
「お譲様は旦那様を大切に思われているのですね。なら、そのお心をそのままにしておいてください」
悩む千鶴にそう言ったのはクロードだった。
そしてクロードは千鶴に代わって千鶴の父を告発した。
だが追い詰められ、精神を害した千鶴の父により道づれとしてクロードは殺害されてしまった。
その後、織莉子の父の死の原因が千鶴の父であることを知った。
あの時、もし自分が父を説得していれば死人が出ることは無かったかもしれない。
何ひとつ自分で決断することもできず、他人任せの人生。
織莉子の父を死なせ、クロードと自分の父を失った瞬間、千鶴は自分と言う存在を失った。
自分を失った瞬間、千鶴は自分を殺した。
- Re: 第七章 眠り姫の存在証明 3日目 17話② ( No.262 )
- 日時: 2012/07/06 16:00
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
「そうして君は自殺を図った。でも結局死ぬことは出来なかった」
目の前で表情を変えずにそう言うのは、まるでぬいぐるみのような容姿をした不思議な生物だった。
「そんな私を笑いに来たの……キュゥべぇは?」
「とんでもない。ボクは君の才能を生かしに来たんだ」
「才能……?」
「そうさ。君は魔法少女の才能があるんだ!」
魔法少女となって魔女という怪物と戦う代わりにどんな願いも叶えてくれる。
それがキュゥべぇが語った大まかな魔法少女についての話だ。
「こんな私にも魔法少女になる才能があるの?」
「もちろんさ。才能さえあれば君の肉体がこん睡状態に陥っていようと契約できる。心さえ生きていれば問題ないんだ」
「……」
現実から背を向けるため、自らの死を選んだにも関わらず、結局それすら出来なかった。
こんな中途半端な存在でしかない自分が魔法少女になることで何かできるのだろうか。
「さぁ、どんな願いでも叶えてあげる。言ってみるといいよ!」
「わ、私は……し、知りたい」
「ん?」
「私は、私自身の存在理由を知りたい!」
キュゥべぇは表情を変えずに千鶴を見つめた。
なんとなくキュゥべぇが何かを言いたげにしているような気がした。
- Re: 第七章 眠り姫の存在証明 3日目 17話③ ( No.263 )
- 日時: 2012/07/06 16:00
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
「———確か君は織莉子と知り合いだったね」
「え?」
「いやー……君の願いと、織莉子の願いがとても似ているものだから、ちょっと驚いたのさ」
「織莉子さんが……?」
織莉子が魔法少女であることにも驚いたが、織莉子も自分の存在価値を見いだせずに居たことに驚いた。
織莉子は千鶴にとってただ一人わかり合える友人だった。
同時に羨ましくも思っていた。
千鶴から見た織莉子はすべてを持った理想の人間像だったからだ。
理想にしていた織莉子は、自分と同じ悩みを抱えていた。
意外だったが、なんだか嬉しく感じた。
「千鶴。願いはそれでいいのかい?」
千鶴は頷いた。
織莉子は今も己の存在証明を探しているのだろう。
ならば自分も、自分自身の生きる意味を見出してみよう。
千鶴はこうして魔法少女になったのだ。