二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Re: 第九章 ほのぼのアフター⑤ 第一話 ( No.323 )
- 日時: 2012/07/30 17:40
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
鹿目まどかは水に映る自分の姿を見て絶句した。
(ど、どうしてぇぇ!?)
頭には三角形の耳。
地に着く短い手足。
そして尻尾。
どう見てもネコだった。
(えぇ!これって夢!?)
頭を抱えようとしたが、思うようにいかなかった。
その代わり目にピンク色の肉球が映った。
「まどか……」
「にゃにゃにゃー!(キュゥべぇ!)」
「まさかこんなことになるとは思いもしなかったよ……」
「にゃにゃー!にゃにゃにゃ?(何にも覚えてないよー!どうなってるの?)」
「実は……」
- Re: 第九章 ほのぼのアフター⑤ 第二話 ( No.324 )
- 日時: 2012/07/30 17:40
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
まどかは一人———正確には一人と一匹のときに魔女と遭遇してしまった。
「ど、どうしよう!キュゥべぇ!!」
「魔女結界に取り込まれてしまったんだ。もう助けを呼ぶことは出来ないよ。だから助かるにはまどかが契約するしかないね」
「お断りだ!!」
「えっ!?まどか!?そんなこと言ってる場合じゃないよ!」
そうこうしている間に魔女が二人の前に姿を現した。
「あ、あいつは!!」
キュゥべぇが驚きの声をあげたその魔女の姿は今までの魔女とは一味違っていた。
「く、くまさん?」
まどかの眼にはどう見てもくまのぬいぐるみにしか見えなかった。
それも普通に店に並んでいるようなテディベアだ。
「あれは『悪戯の魔女、バウム・クウェーレン』だ!普通の魔女とは違うんだよ!」
「普通の魔女と違うって……。はっ!」
いつの間にかまどかの前にバウム・クウェーレンが立っていた。
バウム・クウェーレンは首を傾げながら丸い手をまどかに差し伸べた。
『遊んでくれる?』
「え?う、うん」
まどかは思わずそう答えてしまっていた。
「あー!駄目だよ!そいつの誘いに乗ったら!」
「え?」
キュゥべぇの注意はすでに遅く、バウム・クウェーレンの手から放たれた光線がまどかを包み込んだ。
「きゃああああ!!」
「ま、まどかーーー!!」
まどかは身体に違和感を感じながらも、抵抗することも出来ずにそのまま気を失った。
- Re: 第九章 ほのぼのアフター⑤ 第三話① ( No.325 )
- 日時: 2012/07/30 17:39
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
「にゃにゃ〜。(なんとなく思い出したかも)」
まどかはガックリと肩を落とした。
「バウム・クウェーレンは植物から生まれた魔女なんだ。本来は魔法少女になってもらうために願いを叶えるんだけど……ある子の願いを肩代わりしてもらったんだ」
前に出会った女の子の母親の病気を治すという願いを、女の子からもらった花に代わりに願ってもらったことがあった。
「にゃにゃん?(お花でも契約できるんだ?)」
「生命のあるものだったら基本的には契約出来るんだ。ボクらはどんな生命体であろうと会話出来るしね。今、ネコになっているまどかと話せているのもインキュベーターだからなんだよ」
「にゃっにゃにゃ。(それだったら人に頼むよりお花にお願いしたほうがいいんじゃないの?)」
「そうでもないよ。植物や動物は人間と比べると大した感情を持ち合わせてないんだ。それこそちょっとイタズラしてやりたいなぁーくらいしか考えてないんだよ。だから効率が悪いんだ。そもそも動物や植物じゃ魔女と戦えないしね」
たいしたエネルギーも回収できず、むやみやたらに魔女を増やしてしまうことになる。
だからインキュベーターたちは人間をターゲットにするのだ。
- Re: 第九章 ほのぼのアフター⑤ 第三話② ( No.326 )
- 日時: 2012/07/30 17:39
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
「ただ……バウム・クウェーレンは特殊な環境下で生まれた魔女だからちょっと特別なんだ」
「にゃにゃ?(特別?)」
「バウム・クウェーレンは人を殺めるような呪いは広げない。その代わり、人の姿を変える程度の無害な魔女……と言っても今のまどかを前にしたら説得力ないね」
「にゃーーー!(どうすればいいのーー!)」
まどかはゴロゴロと地面を転がった。
「バウム・クウェーレンをつかまえて、『つかまえた』って言えば呪いが解けるんだけどね」
「にゃ〜。(魔法少女じゃない私に魔女なんて捕まえられないよー)」
「だよね。そこで考えたんだけど、蒼井彰にお願いしてみるのはどうかな?」
「にゃー!(彰さん!)」
蒼井彰の『無かったことにする』魔法なら、今まどかにかけられている呪いを解くことが出来る可能性がある。
バウム・クウェーレンを探すより手っ取り早そうだ。
「にゃぉ〜。(でもどうやって私ってわかってもらえれば……)」
見た目はただのネコだ。
しかも話すことが出来ない為、彰にあってもまどかだとわかってもらえないだろう。
まどかが思い悩んでいると、突然キュゥべぇは器用にまどかの首にリボンを巻いた。
「まどかのリボンだよ。これを見たらわかってくれる人もいるかもしれない。ボクがついて行って説明するから大丈夫だと思うけどね」
「にゃにゃにゃにゃ?(どうしてそこまでしてくれるの?)」
「ネコになったせいでせっかくの力が半減してしまっているみたいだ。完全な状態のまどかと契約しないと意味がないからね」
キュゥべぇは相変わらず無表情でさらっとそう言った。
「……にゃぁ。(なんだかなぁ)」
まどかは何だか複雑な気持ちだった。
- Re: 第九章 ほのぼのアフター⑤ 第四話① ( No.327 )
- 日時: 2012/07/30 17:39
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
夕日が沈み、もうすぐ夜が訪れようとしていた。
「ほうふぐらよ、まろか(もうすぐだよ、まどか)」
ネコになったまどかを口にくわえたキュゥべぇが駆けながら言った。
人間の時はテレパシーで会話することが出来たが、ネコ化してからはそれが出来なくなっていた。
彰に関しては意図的にインキュベーターからのテレパシーを遮断しているようで遠隔会話が出来ない。
そのためこうして直接向かう他なかった。
「あほまんほんら(あのマンションだ)」
視界の先にあるマンションを目指して再び駆けだそうとしたその時、銃声が耳を貫いた。
「ひでぶっ!!?」
「にゃぁぁぁ!?」
銃弾は見事にキュゥべぇに着弾し、木っ端みじんに砕け散った。
「にゃにゃにゃー!(キュゥべぇー!)」
見るも無残なキュゥべぇの姿にまどかは青ざめた。
- Re: 第九章 ほのぼのアフター⑤ 第四話② ( No.328 )
- 日時: 2012/07/30 17:38
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
(一体、誰が……?)
「おいおい、こんな所で発砲するなよ……」
(こ、この声っ!)
買い物袋を持った彰と、拳銃を構えた樽咲双樹が立っていた。
「ネコを捕食しようとしていたインキュベーターを見つけたものですから。ついついやっちまいました」
「いつからそんな危ないキャラになったんだよ……。ん?」
まどかと彰の目があった。
「にゃにゃ……(彰さん……)」
「なんだノラ猫か?それしてはずいぶん綺麗だし……。首に巻いてるリボンどこかで見たことあるような……」
彰はしゃがみこみ、まどかのリボンに手を触れた。
「もしかしてどこかの飼い猫かもしれません」
「そうだね。飼い主が探してるかもしれない」
彰はまどかを抱き上げた。
「にゃっ!?(わわっ!?)」
「とりあえずこのままにしておけないし、うちに連れて帰ろう」
「にゃ、にゃにゃー!(私だよ、彰さんー!)」
いくらまどかが訴えようと彰にはネコ語にしか聞こえない。
「にゃぉ〜!(だれか〜!)」
「家が恋しいのかな?ちゃんと探してあげるから」
「にゃにゃ〜。(違うよ〜)」
話が噛みあうはずもなく、まどかは彰に抱えられたまま連れて行かれてしまったのだった。
- Re: 第九章 ほのぼのアフター⑤ 第五話① ( No.329 )
- 日時: 2012/07/31 13:15
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
まどかはリビングのソファーに下ろされた。
「今日はもう遅いから明日から君の家をさがしてあげるからね」
そう言うと彰は台所に向かって行ってしまった。
一人残されたまどかはソファーから周りを見渡した。
(男の人の家に来たの初めてかも……)
そう思うと少しドキドキした。
(変なこと考えてる場合じゃないっ。なんとかして彰さんに私だってわかってもらわないと……)
何か伝える手段は無いかと思い、部屋の中を探してみることにした。
人の姿であれば何てことないマンションの一室なのだろうが、ネコの姿だと見えるものすべてがどこか新鮮だった。
(なんだか小人になった気分……。ちょっと楽しいかも♪)
ネコの姿にも慣れてきたのか、少し余裕が出てきた。
普段では出来ないような体験をすると心躍ってしまうのは人……というか子供の性なのだろう。
(彰さん、明奈ちゃんとここで暮らしてたんだよね……)
彰の妹である明奈が亡くなってからは一人で暮らしている。
だがこうやって歩き回ってみると、二人で暮らしていた思われる痕跡がそこら中に見受けられた。
- Re: 第九章 ほのぼのアフター⑤ 第五話② ( No.330 )
- 日時: 2012/07/31 13:16
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
(あっ……)
部屋の扉に『明奈』と書かれたプレートが下げられていた。
(ここ、明奈ちゃんの部屋だ……)
彰から話だけは聞いているが、明奈とは面識が無かった。
もし知り合っていたら何か変わっていたのだろうか?
(彰さんも苦しまずに済んだのかな……)
そう思うと少し哀しい気分になった。
まどかは明奈の部屋から離れた。
ここは特別な場所。
彰の許可なしに近づくのは気が引けた。
明奈の部屋を過ぎたすぐ近くの扉が開いていた。
(あ、ここおふろ———)
まどかは開いた口がふさがらなかった。
「ん?ネコ……?」
(あわわわわ……)
洗面所にはバスタオルを巻いたお風呂上がりの小学生くらいの女の子がいた。
「千里。また勝手に風呂使ってぇ……。え?」
「え?」
彰と綾女千里の間の抜けた声が揃った。
「にゃにゃにゃ!にゃ!にゃ!!(彰さんの変態!ロリコン!バカぁ!!)」
「ぎぇえええー!」
まどかの肉球から伸びた爪が彰の顔をザクザクっと引っ掻きまわした。
「し、ししょー!?」
「な、なぜ……俺が……」
倒れこみ顔を抑えて悶える彰に見向きもせず、まどかは走り去って行った。
- Re: 第九章 ほのぼのアフター⑤ 第六話① ( No.331 )
- 日時: 2012/07/31 13:23
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
(うぅ……。彰さんが小学生を連れ込むような変態さんだったなんて……)
まどかはソファーの下でビクビクと震えていた。
人は見かけによらないと言うが、あんな『よらない』はまったくもって期待していない。
「あー、いたいた」
「にゃ!?」
さっき風呂場で見かけた女の子だった。
そしてその女の子を改めて見てみると知っている子だった。
(千里ちゃんだったんだ……。あんまりビックリしたものだから気付かなかった)
千里はソファーの下に隠れるまどかを引っ張り出し、抱きかかえた。
お風呂上がりのため、身体が火照っていて暖かい。
髪の毛から良い匂いがした。
「いきなりあんなことするからビックリしたよ。可愛い顔して結構やるねー、君」
千里はまどかの耳を引っ張っりながら笑った。
「まぁ、いきなりたくさんの人に囲まれたらビックリするよね。しょーがない」
千里がこんなに笑っている姿をみるのは初めてだった。
どういうわけか、まどかの前ではいつもブスっとした顔で素っ気ないのだ。
(これが自然な千里ちゃんなのかな?)
ネコが相手だからか、千里は年相応の表情を見せてくれた。
こうやって無邪気に笑えるのだと思うと、何となくホッと出来た。
- Re: 第九章 ほのぼのアフター⑤ 第六話② ( No.332 )
- 日時: 2012/07/31 13:24
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
(そういえば双樹さんも一緒に住んでるみたいだし……。そもそもどういう理由で彰さんと二人が知り合って一緒に居るか、全然知らないんだ……)
聞くのも野暮な感じもするし、そもそも聞いて良いものかもわからない。
だから未だに訪ねられずにいるのだ。
「ししょーは良い人だよ」
千里は突然そんなことを言った。
「ししょーは妹さんを亡くしたばっかだって言うのにさ……。ちーやそーちんに行く場所も住む場所も無いって知ったら、『良かったら家来るか?』って言ってくれたんだよ」
「……」
「妹さんを亡くした悲しみとかあるだろうし……。それに大事な妹さんとの思い出が詰まった場所をちーたちみたいな見ず知らずの人に住むか?なんて言うんだから……お人よしというか、何と言うか……」
「にゃぁ……。(千里ちゃん……)」
千里が泣いていた。
「出会ってからまだちょっとだけど、そのちょっとの間にたくさん優しくしてくれた。いくら感謝してもしきれないくらい。だからちーたちはししょーと戦うって決めたの。命をかけたっていいって、ほんとに思うくらい」
千里や双樹が彰とどのように出会い、何があったのかはわからない。
だが彰は目に見えるもの達を救いたいと願い、そうすることを明奈に誓ったという。
その誓いの結果の一つが千里や双樹なのだろう。
- Re: 第九章 ほのぼのアフター⑤ 第六話③ ( No.333 )
- 日時: 2012/07/31 13:24
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
(どうしよう……。わけも知らずに引っ掻いちゃった。謝らないと……)
謝ると言っても言葉が話せるわけではない。
でもとにかく彰のもとに行かなくては。
まどかはそう思い、千里の膝の上から飛び降りた。
「ししょーならたぶん妹さんの部屋だよ」
「にゃにゃん。(ありがとう)」
まどかはお礼を言うと明奈の部屋を目指した。
部屋の扉は先ほどは閉まっていたのだが、今は少し開いていた。
「にゃー」
「ん?あー、君か」
彰はまどかを抱き上げた。
「さっきはいきなりでビックリしたよ」
「にゃにゃ〜。(ごめんなさい〜)」
彰はまったく怒っている様子はなかった。
顔の傷も魔法の力で塞いだのか、もう無かった。
彰はベッドに腰掛けると、横にまどかを下ろした。
「ここは妹の部屋でね。今はもう死んでしまって居ないのだけど……片づけられなくてね。女々しいとか思うかもしれないけど、まだ死んだような気がしないんだ」
彰は優しい笑顔をしてはいるが、瞳には確かに悲しみが浮かんでいた。
「こうやって部屋の電気を消して、ベッドから見る月が好きだって良く言っていた」
真っ暗な部屋が月明かりで明るくなった。
まどかは窓から差し込む月明かりを追って、空に浮かぶ月を見た。
- Re: 第九章 ほのぼのアフター⑤ 第六話④ ( No.334 )
- 日時: 2012/07/31 13:25
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
「ちょうどこの時間は明奈の薬の時間でね。それが習慣になっていたせいか、居なくなった今でもついついここまでフラフラっと来ちゃうんだよ」
人に心配させまいといつも彰は笑顔を絶やさない。
だがその笑顔の合間、合間に悲しさをちらつかせていた。
それをいつも見ながら、まどかは心を締め付けられるような気持ちになった。
今は一人ではない為、幾分かマシなのだろうが、それでも彰の悲しさを癒しきれるわけでは無い。
彰を癒せるたった一人の妹はもうこの世に居ないのだから。
(私も何かしてあげなくちゃ!)
彰は前に笑顔のまどかが好きだと言ってくれた。
まどかのことを護りたいと言ってくれた。
だからまどかも何かしてあげたいと思った。
「にゃーにゃー」
とりあえず甘えてみた。
ネコと言えば甘えるしぐさが可愛く、それを見ていると自然と穏やかな気分になる。
それを狙ったのだ。
「ほんと人懐っこい子だなー」
彰はまどかの頭を撫でた。
(撫でられると気持ちいい……)
自然とゴロゴロと音を出していた。
「お、いい感じみたいだなぁ」
さらに彰は背中を撫で、お腹を撫でた。
「にゃにゃ!(くすぐったいよぉ!)」
くすぐったさのあまり、まどかは身体を右、左とうねらせた。
「面白い子だな。ここがいいの?」
人から見れば猫が甘えてきてさらにねだっている様に見える。
彰も当然そう思い、さらにお腹を撫でてやる。
- Re: 第九章 ほのぼのアフター⑤ 第六話⑤ ( No.335 )
- 日時: 2012/07/31 13:26
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
(うぅー!くすぐったいし……なんだか変な気持ちに……)
言いようの無い感覚が次第に身体を支配し始めた。
このままだと可笑しくなってしまう!
そう思った途端、願いが通じたかのように彰の動きが止まった———鈍い音と共に。
「危なかったわ……。危うくまどかが汚されるところだった!」
「にゃにゃ!(ほむらちゃん!)」
窓から入ってきたのは暁美ほむらとキュゥべぇだった。
「遅くなってごめん。たまたま身体のスペアが切れててさぁー。あとほむらを呼んでくるのに時間がかかったんだ」
「まどかの危機と聞いたら動かないわけにはいかないわ」
ショットガンを構えて見事なまでのドヤ顔を見せた。
「でもショットガン殴って気絶させることは無かったんじゃないかい?それこそ拳銃のグリップで充分じゃ……」
「重いほうが一撃も重たいでしょ?」
「殺す気かい……?というか、生きているかい?」
ほむらはキュゥべぇを無視し、さらに気を失う彰を無視してまどかを抱き上げた。
「……」
ほむらはまどかをジッと睨みつけるように見つめた。
「にゃにゃ……?(ほむらちゃん……?)」
「———いいかしら……」
ボソボソっとほむらが呟いた。
「にゃ?」
「撫でていいかしら……」
「にゃ、にゃにゃにゃ……。(べ、別にいいよ……)」
まどかがそう答えると、キュゥべぇが通訳した。
ほむらは抱きかかえたまどかを丁寧に撫でた。
だがすぐに辞めるとまどかから顔を逸らした。
窓辺に座るキュゥべぇからは疑問符を浮かべるまどかと、だらしない顔で笑みを浮かべるほむらの姿が映った。
- Re: 第九章 ほのぼのアフター⑤ 最終話① ( No.336 )
- 日時: 2012/07/31 13:29
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
翌日。
「ほむらちゃ〜ん」
まどかは自宅の少し先で待つほむらに手を振った。
「まどか、身体はなんとも無い———ぶっ!」
ほむらが突然顔を真っ赤にして顔を逸らした。
「ど、どうしたの!?」
「み、耳が……。し、しっぽもっ」
「へっ?」
まどかは頭とお尻を触ってみた。
生えていた。猫の耳としっぽが。
「えー!何これ!?」
まどかは大慌てでカバンでお尻を、空いた腕で頭を隠した。
「まどか、どうやら君はバウム・クウェーレンに好かれてしまったようだね」
いつの間にか居たキュゥべぇが耳でまどかの足元を指した。
まどかが足元に目をやると、足に抱きつくくまのぬいぐるみが居た。
「きっとまどかの力に引かれているんだろうね。大した悪さもしないし、大目にみてやってよ」
「そんなぁ〜。ほむらちゃん〜」
ほむらに助けを乞おうとほむらを見た。
ほむらは顔を赤くしてまどかから顔を逸らすと、バウム・クウェーレンに向かって「グッジョブよ」と親指を立てた。
「ほ〜む〜らちゃ〜ん!!」
まどかがほむらに抱きつく。
ほむらはまどかの頭を撫でた。
「朝から賑やかだね。二人とも」
二人の前に現れたのは制服を着た彰だった。
- Re: 第九章 ほのぼのアフター⑤ 最終話② ( No.337 )
- 日時: 2012/07/31 13:29
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
彰の姿を見たまどかは何となく緊張してしまった。
「あ、彰さん!?」
「な、なに?」
「そ、あの……」
今更、昨日の猫が自分だとは言いづらく、かといって言わなければ勝手に彰を騙すことになる。
その葛藤がまどかの頭を真っ白にさせ、その結果。
「あ、彰さんのこと、ロリコンだとか思ってないですから!!」
と、訳もわからないことを言ったあげくに逃げてしまった。
「え……?ろ、ロリコン?」
取り残された彰を、ほむらは見下すような顔で見た。
「ふふ。ロリコン」
鼻で笑ってほむらはまどかを追いかけていった。
「まどかちゃん?ほむらちゃん?」
知らぬ間にロリコンのレッテルを貼られていることを知った彰は茫然自失となった。
「蒼井彰……。君も大変だね」
キュゥべぇの同情の声も彰には届いていなかった。
呆然とする彰の後ろでバウム・クウェーレンがクスクスと笑った。
今日の天気は快晴。
見滝原は平和そのものだった。