二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Re: 第四章 11話 ( No.39 )
- 日時: 2012/05/07 16:32
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
「ここだよ、マミ」
佐倉杏子たちが漆黒の騎士と戦っているのとほぼ同時刻。
巴マミとキュゥべぇはとあるビジネスホテルの一室にいた。
ビジネスホテルは市内の割と栄えた場所に位置し、週末となれば満室になるほどの利用頻度だ。
「予想はしていたけど……実際に見てみるとなんだか不気味ね」
マミはベッドに仰向けで寝ている同じくらいの年齢の少女を見てそう言った。
「この子は確かにボクが契約した魔法少女だ。ソウルジェムはまだ破壊されてないね」
「わかるの?」
「当然さ。ボクたちインキュベーターはソウルジェムの状態を感知できる。でないと魔女化する兆候などを読み取れないからね」
キュゥべぇは表情一つかえずに、だがとても自慢げに語った。
「ただ……実に奇妙な現象だ」
「どういうこと?」
「肉体はしっかりと修復されている。なら、修復された時点で目覚めてもいいはずなんだけど……」
マミは美樹さやかのソウルジェムが一時的に失われた時のことを思い出した。
あの時はすぐに暁美ほむらが機転を利かし、ソウルジェムをさやかの手元に戻したことで大事には至らなかった。
「ソウルジェムが一定距離離れていると駄目なのよね?」
「そうだよ。でもソウルジェムが破壊されていないところを見ると、犯人がこの子の肉体と一緒に持っていたと考えるのが自然だろ?」
「そうね……となると、何かしらの魔法でソウルジェムと肉体の繋がりを絶っていた?」
「その可能性は高いね。しかしわからないなぁ。なんでこんな見つかりやすい場所に置いておくんだろう?」
キュゥべぇは首をかしげた。
確かにこの場所なら、明日には掃除の人なり、ホテルの人なりが来た際にこの子を発見するだろう。
- Re: 第四章 12話 ( No.40 )
- 日時: 2012/05/07 16:33
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
「犯人なりの優しさ……かしらね」
「どういうことだい?」
「感情の無いあなたにはわからないかもしれないけれど、例え死んでしまったとしても1人で居なくなったことになるのは寂しいことよ。友達なり、両親なり、せめて誰かのもとに返してあげたい———そういうことじゃないかしら」
「罪悪感というやつかい?」
「どうでしょうね。それは本人しかわからないわ」
マミも今の仲間達に出会うまではいつか誰にも知られずに1人朽ち果ててしまうのではないかと考えていたことがあった。
だからなんとなく1人にさせたくないという気持ちが伝わってきた。
(犯人の目的はわからない。でも何か深い理由があるのかもしれないわね)
そう考えた時、マミは一つの可能性にたどり着いた。
「肉体を修復したのが犯人のせめてもの行為だとするのなら、肉体自体は目的じゃないってことよね?」
「マミのいう通りなら、そうなるね」
「もし縄張り争いやグリーフシードが目的なら、ソウルジェムを破壊して完璧にしとめるはず。でもソウルジェムは破壊しなかった……」
「もしかして犯人の目的はソウルジェム、そう言いたいのかい?」
マミは頷いた。
「そう考えるのが自然じゃないかしら。未だに破壊されずにいるのがこのことを裏付けてない?」
「確かに。でもソウルジェムを持っていく意味がわからないよ。グリーフシードみたいに穢れを浄化してくれるわけでもないし」
「それは犯人に聞いてみるしかないわね。キュゥべぇ、あなたなら追えるわよね?この子のソウルジェムを」
「なるほど。そこに犯人がいる———というわけだね」
「行ってみる価値はあるわ」
マミとキュゥべぇはソウルジェムの気配を追ってホテルを出た。
そしてこの後、漆黒の騎士に敗北を喫した杏子たちと合流することとなる。
- Re: 第四章 13話 ( No.41 )
- 日時: 2012/05/08 11:24
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
漆黒の騎士との戦いから一夜明けた日の昼。
鹿目(かなめ)まどか達は佐倉杏子(さくらきょうこ)の住まいとなっている教会に集まっていた。
「杏子ちゃん、本当にもう大丈夫なの?」
まどかはここに訪れてからずっと杏子の腕の怪我を気にしていた。
「ほんと大丈夫だって。ほら、この通り」
杏子は手のひらをグーパーさせた。
「一時はどうなることかと思ったけどさぁ。ほんとゆまちゃんが居てくれてよかったわ」
美樹(みき)さやかは昨晩のことを思い出して身震いした。
「お前ら学校サボっちゃっていいのかよ?」
「もう学生は夏休みなのよ、佐倉さん」
巴(ともえ)マミがそういうと杏子は「もーそんな時期か」とつぶやいた。
「でも杏子がやられるなんてかなりの手練(てだ)れね」
暁美(あけみ)ほむらの言葉に杏子は舌打ちした。
「実力はあたしのほうが上だったんだけどさぁ。おかしな魔法使いやがるんだよ」
「おかしな魔法?」
マミは視線を鋭くした。
「そうなんだよ。あたしの槍がアイツの手に触れそうになった瞬間粉々に砕けちゃったんだよ」
「こ、こなごな?」
まどかはゴクリと生唾を飲んだ。
「武器を破壊する魔法?でもそうすると辻褄(つじつま)が合わないわね」
マミはキュゥべぇと顔を合わせた。
キュゥべぇも首をかしげている。
- Re: 第四章 14話 ( No.42 )
- 日時: 2012/05/08 11:26
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
「マミさん、どういうこと?」
さやかは身を乗り出してマミに迫った。
「皆は朝のニュース見た?」
「5人目の被害者がでたって……」
まどかがそういうとマミは頷いた。
「その5人目の子が発見された場所に私とキュゥべぇで行ったの。残念ながら手遅れだったけど……」
まどかは俯いて「そうですか」と嘆いた。
ほむらは落ち込むまどかの手を握ってあげた。
そしてまどかの代わりに問うた。
「分かったことがあるの?」
「えぇ……犯人の目的がね」
「目的?」
「あくまで私の推測なんだけど、犯人の目的はソウルジェムよ」
マミとキュゥべぇ以外の皆が驚きで顔を染めた。
「どういうことだ?何の意味があるんだ、そんなこと?」
「そこまではわからないわ。佐倉さんたちは昨日戦ってみて何かわかったことはない?」
「わかんねぇことばかりさ。ったく」
杏子が毒づいているとさやかが「あっ」と声をあげた。
「そういえばさ。昨日の黒いヤツ、魔女を操ってたみたいなんだよね」
「何かの見間違いじゃないの?さやか」
ほむらがさやかに疑いの眼差しを向けた。
「さやかの言ってる事はほんとだよ。アタシもそう感じた」
「そう」
杏子の言葉を素直に信じて、自分だけ疑われたさやかはキーキー奇声をあげてほむらに反発した。
もちろんほむらは無視した。
「ま、まぁ、それがほんとなら厄介ね」
「でも謎すぎるよ。魔女を操るなんて並大抵の力じゃ出来ないし、杏子たちが体験した力と共通点も見当たらない」
キュゥべぇはそう言い終ったところでほむらに睨まれている事に気がついた。
- Re: 第四章 15話 ( No.43 )
- 日時: 2012/05/08 11:27
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
「ど、どうしたんだい?暁美ほむら」
「本当に何もしらないのかしら?」
「どういうことだい?」
「ソウルジェムは魂……魔力の塊よ。つまり犯人は魔力というエネルギーを集めている。どこかの誰かさんみたいね」
ほむらの推測にみんなハッとなった。
確かに魔女化するときほどでは無いにしろ、ソウルジェムからもエネルギーを回収できる。
そしてそれをして得するのは他ならぬインキュベーターなのだ。
「ほんとうはまだまどかを諦めていなくて、刺客を使ってまどかを魔法少女にしようとしてるんじゃないの?」
みんな一斉にキュゥべぇを睨む。
「ちょ、ちょっと待ってよ。ほんとに今回は何もしてないんだ。してるとしたら他の……」
「ほ、他にもキュゥべぇみたいのがいるの?」
まどかの問いにキュゥべぇは口をつぐんだ。
感情が無くとも、口がすべったー!と内心で言ってるのがよくわかる。
「どうなの?キュゥべぇ……」
マミが笑顔でキュゥべぇに迫った。目が笑っていなかった。
「まぁ……その……個人情報ってやつが」
「てめぇがそれを言うんじゃねー、淫獣!」
杏子はキュゥべぇの頭を鷲づかみにした。
「た、確かにボク以外にも仲間がいるよ。でもみんな個々に動いているからボクは他のインキュベーターが何をしているか知らないんだ!本当だよ!」
「あんた、そう言っていつも大事なこと隠すからねぇ」
鷲づかみにされたキュゥべぇの目を疑いの目でさやかが睨んだ。
「ね、ねぇ。キュゥべぇもほんとに知らないみたいだし、許してあげようよ」
「ま、まどか!」
キュゥべぇ目を潤ませていた。
「やっぱりまどかは優しいね!女神のようだ!」
- Re: 第四章 16話 ( No.44 )
- 日時: 2012/05/08 11:28
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
キュゥべぇは杏子の手から抜け出してまどかの胸に飛び込んだ。
「ほんとにコイツ感情ないの……?」
さやかはジト目でまどかに甘えるキュゥべぇを見た。
ほむらは嫉妬に満ちた目でキュゥべぇを睨んだ。
「ボクは女神まどか様に誓って言うよ。本当に何も知らないんだ!」
「変なこと言わないでよぉ。恥ずかしいよ」
みんな納得はしていないようだったが、まどかに免じてこの場は納めた。
「でももし他のインキュベーターが別の方法でエネルギーを集めているのだとすれば、当然まどかも狙われる」
「そうね、その可能性も考えなくちゃね」
ほむらはまどかの手をとり両手で握り締めた。
「安心して、まどか。あなたは私が絶対守って見せる」
「うん、ほむらちゃんのこと信じてるから」
まどかとほむらは別の世界に入り込んでいた。
「うーん。わたしゃ、まどかの将来が不安じゃ〜」
さやかが変顔で2人を見て言った。
「鹿目さんのことは暁美さんに任せるとして、私たちも単独行動は控えましょう」
さやかと杏子は頷いて同意した。
「ゆまにはアタシから言うとして……。大丈夫だと思うけど、とりあえず織莉子(おりこ)にも注意を促しておくよ」
「じゃあ私が杏子についていくわ」
杏子とさやかは2人でその場を離れた。
2人を見送りながらマミは何となく嫌な予感を感じていた。
ワルプルギスの夜の時とは違う嫌な予感を。
- Re: 第四章 17話 ( No.45 )
- 日時: 2012/05/09 09:53
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
昼下がりの公園のベンチに少女が1人で座っていた。
少女は夏用の着物に身を包み、片手にアイスキャンディを持ったままボーっと空を眺めていた。
「あっちぃーなぁ」
通りすぎる人たちはそんな少女の姿をチラチラと見ていた。
と言うのも、少女の姿はとてもだらしなかったのだ。
右肩の着物はずれ落ち、肩のみならず胸元までさらけ出していた。組んだ足の間からは下着が露わになっているにも関わらずお構いなしだった。
しかしその姿はどこか妖艶で、華奢な少女という印象を不釣合いなものにしていた。
「とんでもない姿っすね、リンちゃん」
「んあ?なんだ、ゴンべぇか」
少女———天音(あまね)リンはとけ始めているアイスを一口かじった。
「なんだとはひどいっすよ。せっかく良い話を持ってきたのに」
「いい話?」
「騎士さんが佐倉杏子を返り討ちにしたんすよ」
リンはやる気の無い目でアイスを一口、さらに一口と口に運んだ。
「佐倉、杏子……。あぁ、あの菓子ばっかくってるヤツか」
「そうっす。あのチーム中で佐倉杏子は1位、2位を争う実力者。それを返り討ちにしたんすから、ちょっとは喜んだらどうっすか?」
「別に殺すことが目的じゃねーだろ。問題はだ……」
リンが言いかけたところで正面から男が2人、こちらに向かってくるのが見えた。
- Re: 第四章 18話 ( No.46 )
- 日時: 2012/05/09 09:54
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
「やっぱ近くで見るとかわいいね!お譲ちゃん、いくつ?」
「……」
リンはとけてほとんど無くなったアイスをなめ取った。そしてアイスの無くなった棒を口に咥えて男たちを観察した。
2人ともどこにでも居そうないわゆるチャラ男だった。
こんな昼間から遊びまわっているのだからろくな暮らしもしていないのだろう。
「ねぇ、ねぇ。いくつ?」
チャラ男Aの言葉にリンはニヤリと笑って言った。
「100歳」
「へ?ああ、冗談うまいね。ねぇ、暇なら遊びいこうよ。おごるよ?」
チャラ男Bははだけたリンの胸元をジロジロ見ながら言った。
「ふーん。あんたらオレの身体が目的?」
「えー、何?俺らそんな風にみえる?お譲ちゃん、そういうの好きなの!?」
2人は勝手に舞い上がっている。
リンはそんな2人を心底面白うそうに見ていた。
「お譲ちゃんが好きならぁ、そういうとこ行ってもいいよ?」
「そうかい。んじゃあー、あんたらの身体をオレに喰わせてくれたらいいよ」
「え、ほんと!?いいよ!俺らのこと食べちゃってよ〜」
「やったぁ♪ありがと」
リンは満面の笑顔を2人に向けた。
それは純粋無垢な少女の穢れの無い最高の笑顔だった。
「あわわ!」
「ひぃいいぃ!」
しかし男2人はそんな最高の笑顔に見向きもせず、リンの背後に浮かび上がるモノをみて悲鳴を上げた。
リンの背後には黒い太陽のような球体が浮いていた。その球体には3つの切れ長な目がついており、球体から伸びた無数の手がモゾモゾとうごめいていた。
「ば、ばけもの!!」
「へへ……ごちそーさま」
球体は無数の手を伸ばし、2人を包み込んだ。
「———!!」
口をふさがれ、声なき悲鳴をあげながら2人は黒い球体に喰われてしまった。
「うぇ、マズ……。やっぱ喰うなら可愛い女の子がイイな」
黒い球体は渦巻いて消え、何事も無かったかのように静けさが戻った。
「相変わらずっすね。その『強欲』は……」
「欲張って何が悪いんだ?オレは喰いたいものを喰う。この世界だってね。そのために……」
ニヤニヤと笑いながらリンはアイスの棒を噛み砕いた。
「騎士には極上のスパイスになってもらわないとな」
リンは再び空を仰いだ。
空は雨雲に包まれていた。
- Re: 第四章 19話 ( No.47 )
- 日時: 2012/05/09 13:10
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
「……」
漆黒の騎士は物言わなくなった1人の少女をベッドの上に寝かせた。
そして手を合わせると窓から飛び出し、近くのビルの屋上に着地した。
「やっと見つけたわ」
振り向くとそこにはマスケット銃を漆黒の騎士に向けた魔法少女が立っていた。
「!!」
もう一つの気配に気付いた漆黒の騎士は、その方向に首を向けた。
「あなたの目的はわからないけれど、これ以上被害が大きくなる前に退場してもらうわ」
そう語りツインテールの魔法少女は盾から出現させたハンドガンタイプの銃を漆黒の騎士に向けた。
漆黒の騎士は2人をそれぞれ見るとまるでため息をつくかのような動作をした。
そして身の丈ほどの大剣を出現させると、それを構えた。
- Re: 第四章 20話 ( No.48 )
- 日時: 2012/05/09 13:13
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
(やっぱり降参なんてしてくれないわよね)
臨戦態勢に入った漆黒の騎士を見て、巴(ともえ)マミは内心で嘆いた。
キュゥべぇの力でソウルジェムの痕跡を追っていた。
常に移動するソウルジェムの存在を追うのはさすがのキュゥべぇも難しかったようで、中々場所を絞ることが出来なかった。
そこで二手に分かれて探していたのだが、その結果先に見つけたのがマミと暁美(あけみ)ほむらの2人だった。
(幸いといえば幸いかしら……)
別行動をしている佐倉杏子(さくらきょうこ)と美樹(みき)さやかには鹿目(かなめ)まどかの護衛も任せている。
相手の狙いがまどかだとしても、そうでないとしても戦闘となればまどかに危険が及ぶ可能性は充分にある。
そしてもう一つ。
杏子たちはすでに手の内を明かしているため、不利な部分もある。
さらに近接戦闘では武器の無効化という魔法の可能性も考慮すれば、遠距離から攻撃できるマミとほむらのほうが倒せる確立が上がる。
それにほむらの能力である『時間停止』は知られていようと防ぎようの無いある意味最強の魔法。
強大な破壊力を持つマミの必殺技と組み合わせればかなり強力だ。
『暁美さん。手の内がばれていない今がチャンスよ。一気に決めましょう』
『わかったわ』
ほむらは盾から出した手榴弾を漆黒の騎士に向かって投げた。
漆黒の騎士は爆発よりも早く爆発範囲から抜け出した。
「……」
爆発のせいで巻き起こった煙が漆黒の騎士の視界を奪った。
「!!」
どこからともなく銃弾が飛んでくる。
漆黒の騎士はそれを大剣でなんとか弾くが、数発が鎧に傷をつけた。
『さすがにこの程度の銃では装甲を破壊するのは無理ね。でもやはり銃撃は回避できていないわ』
『なら私の出番ね。私のマスケット銃で一気に押さえ込むわよ!』
マミがマスケット銃を大量出現させようとした時、異変は起きた。