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Re: 第十一章 ほのぼのアフター⑥ 第2話④ ( No.426 )
日時: 2012/08/30 13:46
名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)

「こんな所座っていると風邪ひくよ?」

千里が見上げると、藍色の大きな傘を千里の上にかざした男の人が居た。

「そんなに悲しそうな顔してどうしたの?」

普通の人なら腫れ物を触るような目で見るであろうこの状況で、優しい顔を向けてその人は言った。

「もう良いかなって……。もうパパを探すのは———」

「なら一緒に探そうか?」

「へ……?」

千里は男の人の言葉に呆気に取られてしまった。

まるで心を読んだかのようなその言葉の意味が理解できなかったからだ。

「君のお父さん、探すの手伝うよ」

「で、でも……パパはもう……」

「そんなのわからないだろ?わからないからこそ、君が信じてあげないと」

「だってわかっちゃうんだよ?魔法なんかがあるから……」

千里がそう言うと、男の人はフフと笑った。

「どんなに結果が見えていたって諦めなきゃ、信じてれば終わりなんかしないんだよ。そう、それこそ『無かったこと』にしちゃえばいい」

「信じれば?」

「そうだよ。君一人で辛いなら、俺が手伝ってあげるよ」

「ううぅぅっ」

涙が止め処なく流れた。

まだ諦めなくて良いという安心感。

ずっと一人で寂しかった千里にかけてくれた優しい言葉。

千里は我慢できずにその人の胸で泣いた。

男の人は嫌がることもせず、ただ黙って抱きしめてくれた。

それは久しく忘れていた父親のぬくもりに近かった。

これが千里と、蒼井彰の出会いだった。