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Re: 第十二章 絶望は死を纏いて狂い踊る 第3話 ( No.456 )
日時: 2012/11/08 10:47
名前: icsbreakers (ID: WV0XJvB9)

■捜し求める者②

(速度に関する魔法か?どちらにせよ、今がチャンスだ!)

彰は向かってくるキリカの腕を掴み、そのまま地面に叩き付けた。

「っ!!」

キリカが声にならない悲鳴をあげ、一瞬の隙が出来たことを確認すると彰はキリカを押さえ込んだ。

「は、離せっ!」

「そういうわけには行かないよ。離したらまた襲ってくるだろ?」

「当たり前だっ!言いたくなるまでいくらでも痛めつけてやる!」

「言いたくなるまで?」

「そうだよ!織莉子を……織莉子を……!」

キリカは実に悔しそうな表情浮かべ、だが瞳に涙を溜めて叫んだ。

「織莉子を殺したヤツことをさ!!」

「し、死んだ!?」

キリカの言葉に思わず耳を疑ってしまった。

だが苦痛に歪むキリカの表情はそれが覆らない事実であることを示していた。

「でも何で俺なんだ?」

キリカが復讐のために犯人を捜そうとしていることはわかった。

だがなぜ犯人の手がかりが彰にあるとキリカが思ったのか、まるでわからなかった。

「織莉子が最後に出した手紙……その宛名がお前だったんだ……」

「お、俺?」

「織莉子はきっと近い未来、自分がこうなるってわかってたんだ。だからそうなる前に何かをお前に伝えようとしていた……。何か関係が無かったら、そんなことしない!」

「……」

そういった根拠があるのなら、キリカがそう思うのも無理はないだろう。

しかし彰からしてみれば、織莉子が最後に何かを伝えたい相手として自分を選んだことが理解出来なかった。

面識がある程度の仲でしか無かったのだから。

だが無関係であるとは言い切れないことも事実なのだ。

何より———。

(大切なものを失ってしまったこの子の痛みは計り知れない……。この子にこんな思いを、織莉子ちゃんの未来を断ち切ったヤツを許すわけにはいかない)

悲しみを、痛みを背負うものを放っては置けなかった。

彰は力を緩め、キリカを解放した。

「その犯人探し、俺も手伝うよ」

「え?」

キリカは自由になった身体を起こし、彰を見た。

「そいつを放っておくわけにはいかない。それに君や織莉子ちゃんが報われない」

「……」

キリカは彰に言葉を返すことはせずに押し黙り、うな垂れた。

そしてうな垂れたまま、小さく嗚咽を漏らした。

彰はそんなキリカをただ黙って見つめていた。