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Re: 第十二章 絶望は死を纏いて狂い踊る 第5話 ( No.465 )
日時: 2012/11/09 09:46
名前: icsbreakers (ID: WV0XJvB9)

■歌声の魔女③

その魔女は口以外の部分を包帯のような物で包み込んだ、まるでミイラのような魔女だった。

地面から伸びた紐によって固定され、魔女は宙に浮いていた。

全身を護るため、あるいは絶望を自らの内から出さないために封印している———そのようにさやかは思った。

不気味な姿とは裏腹に、その口から奏でられる歌声はまるで天使だった。

人を魅了する歌声とはまさにこの事を言うのだろう。

そしてさやかはこの歌声を持つ人物を実際に知っている。

(知ってるよ……。忘れるはずなんてない……。この歌声———)

白井雪良。

ついこの間、共に魔女と戦った仲間。

さやかに新たな道を進むための道しるべを与えてくれた人だ。

この魔女から放たれている魔力、そして歌声。

それは雪良と同じものだ。

つまりこの魔女はかつて雪良だったのだ。

(なんで……どうして!?)

希望を人に与えることを使命として戦っていた雪良がなぜ絶望に負けて魔女となってしまったのか。

さやかと別れた後、一体何があったというのか。

さやかが思い悩んでいると、そんなことお構いなしに魔女は硬化させた布をさやかたち目掛けて放ってきた。

「リン!!」

隣のリンの攻撃がきたことを知らせた。

しかしリンはまったくその場を動こうとしなかった。

さやかはとっさにリンを抱えてその場から離れた。

そしてとりあえず身を隠した。

「な、何ボーっとしてんのよ!」

「……」

さやかが何を言ってもリンは反応を返さなかった。

そしてようやくさやかは気付いた。