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Re: 第十二章 絶望は死を纏いて狂い踊る 第6話 ( No.487 )
日時: 2012/11/13 11:30
名前: icsbreakers (ID: WV0XJvB9)

■もう何も恐くない⑱

「アタシは魔女化したが、こうやって自我を保つことが出来て、そしてアンタに伝えることが出来た。まぁ、きっとこれがアタシの運命なのだろうなぁ」

「夜科さんを魔女にしたのは一体誰なんですか?」

「九条更紗……。アイツはこの世に存在してちゃいけない。倒さなくちゃいけなんだ」

「九条更紗……」

少し前に出会った魔法少女の名。

マミと麗夏の関係を知っていてあの時話しかけてきたのだろう。

「マミ、アイツは危険だよ。気をつけるんだよ」

マミは頷くと、消えようとしている麗夏の手を握った。

「魔女になっても人の温かみって感じるもんなんだね。アタシたちが倒していた魔女もこうやって最後の瞬間に思いを馳せたのかね……」

「夜科さん……」

マミが握っている麗夏の手には温かみなどなかった。

最早今の消え行く麗夏の身体には体温など無く、マミの体温など感じることなど出来ないはずだ。

おそらく記憶という残留思念が麗夏にかつての温もりを思い出させているのだろう。

「泣くなって……。やっぱり未熟者、だな……。でも———」

麗夏はマミの手を握り返し、死に行く者とは思えない安らぎに満ちた表情を浮かべた。

「こうやって涙で送られるのも、悪くないね」

マミの手の間から光の粒子が零れ落ち、そして麗夏の身体は消えた。

残されたマミは嗚咽を噛み殺し、力強く立ち上がった。

「きっとこの街を守って見せます。きっと———」

マミは二度と振り向くことなく、その場を去った。

風に飛ばされてきた名も無き花が、麗夏の墓に引っかかった。

それはまるで死者を弔うかのようだった。