二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Re: 第四章 21話 ( No.49 )
- 日時: 2012/05/09 13:14
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
「こ、これは!?」
ほむらは突如一変した世界に一瞬戸惑った。
「魔女結界!これが佐倉さんたちが言っていたものね!」
ビルの上にいたはずの2人はいつの間にか空の上に立っていた。
「魔女の気配はまだ遠いわ。その前に……」
マミがほむらに視線を送る。
ほむらは頷くと一気にマミの横まで走り、マミの手を握った。
そして盾を構え、能力を起動させた。
一瞬にして世界は静止した。ほむらとマミを覗いて。
漆黒の騎士は今まさにマミたちに襲い掛からんと地を蹴ったところだった。
「悪いけどこれで終わりにさせて貰うわ。手加減はちゃんとするから」
マミは今までのマスケット銃とは比較にならないほど大きな銃を出現させた。
大砲ほどある砲口には魔法エネルギーが凝縮されていく。
「ティロ・フィナーレ!!」
凝縮された魔法エネルギーが巨大な弾となって放出された。
そしてそれは少し飛んだところで静止した。
「これで時間停止を解除すれば私たちの勝ちね」
マミは笑顔でほむらに言った。
対照的にほむらは訝しげな表情を浮かべていた。
「暁美さん?」
「何か……変だわ」
「どういう……え……?」
マミとほむらはありえない事態に目を疑った。
漆黒の騎士が停止した時間の中で放出されたエネルギーの塊に向かって歩いていたのだ。
- Re: 第四章 22話 ( No.50 )
- 日時: 2012/05/09 13:15
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
「あ、暁美さん!どうして!?」
「こ、これは……!」
ほむらの盾に装着された砂時計が減るどころか増えていた。いやむしろ……。
「も、戻っていってる!?」
砂時計は時間停止するまえの状態に戻り、時間停止が解除された。
そしてそれと同時にマミの放ったエネルギー弾は漆黒の騎士の左手に吸収されるかのようにして消滅した。
「わ、私の攻撃まで……」
「マミ!!」
「え?」
いつのまに漆黒の騎士がマミの目の前に迫っていた。
「くっ!」
マミはなんとか後方に飛んで避けたが、巨大な大剣の先がマミの身体を掠った。
「うあっ!」
肩から腹にかけて裂かれたマミはその場に倒れこんでしまった。
「マミ!」
ほむらが再び時間停止をしようとしたとき、風を切る音が近づいていることに気がついた。
「しまったっ!」
ほむらは突進してきた鳥の姿をした魔女をなんとか盾で防御した。
しかし衝撃までは消すことが出来ずに吹き飛ばされてしまった。
「あ、暁美さん!!ひっ!」
マミの顔の横に大剣が突き刺さった。
そして馬乗りになった漆黒の騎士に身体を押さえつけられた。
「ま、まさか!」
漆黒の騎士が大剣に力をこめた。
(わ、私の首を斬るつもりだわ!!)
抜け出すために魔法を使おうとするがなぜかそれが出来ない。
(こ、このままじゃ……)
マミは目をつぶった。
次に聞くのは首を切断される音。そう覚悟していた。
- Re: 第四章 23話 ( No.51 )
- 日時: 2012/05/09 13:16
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
「マミさん!!ほむらちゃん!!」
聞こえてきたのはまどかの声だった。
「鹿目さん、来てはだめよ!」
そうマミが叫んだ時には漆黒の騎士の姿は無かった。
「うあぁ!?」
瞬時にまどかに迫った漆黒の騎士はまどかの首を掴んで持ち上げた。
そしてまどかを視線の高さまで上げた。
「!!」
そこで漆黒の騎士は初めてまどかの姿を確認し、なぜか動揺した。
「うぅ……」
「まど……」
漆黒の騎士が何か言いかけたその時、耳を突くような激しい音が辺りに響き渡った。
そして漆黒の騎士はその音と共に吹き飛び、雲の形をしたオブジェに突っ込んだ。
「げほっ。いったい何が……?」
漆黒の騎士から解放されたまどか事態が飲み込めずにいた。
「まどか!大丈夫!?」
ほむらがショットガンを片手にまどかのそばに駆け寄ってきた。
「今のほむらちゃん……?」
「ええ。でも本当にタフだわ。これで撃たれて装甲が砕けるくらいだなんて———」
粉塵の向こう側、漆黒の騎士が瓦礫の中からゆらりと立ち上がるのが見えた。
「なぜ……君がここにいる?」
漆黒の騎士が始めてまともな言葉を発した。
そしてその声にまどかは聞き覚えがあった。
舞い上がった粉塵が薄れてゆき、その中から兜を破壊され、頭から血を流す漆黒の騎士の姿が現れた。
- Re: 第四章 24話 ( No.52 )
- 日時: 2012/05/09 13:17
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
「え……嘘?」
まどかが兜から覗く顔を見て目を疑った。
まったくもって想像にもしていない人物がそこに居たからだ。
「彰さん……?」
漆黒の鎧をまとい、そこに立ち尽くすのは蒼井彰(あおいあきら)という名の少年だった。
「まどかちゃん……君も魔法少女だったのか」
「いいや、この子はまだ魔法少女じゃねーっすよ」
彰の横にキュゥべぇに似た生物がどこからとも無く現れた。
「ゴンべぇ。どういうことだ?」
「彼女こそ前に話した、とてつもない素質を持った子っすよ」
「なんだと……?」
彰は未だ困惑気味の表情を浮かべるまどかに視線を向けた。
「まどかちゃんが?そうか……」
彰は大剣を出現させた。
「彰さん!なんで……なんでこんなこと!」
彰は押し黙ったまま答えなかった。
「犯人が彰さんなんて嘘ですよね?何かの間違いですよね?」
彰はもの悲しげな、どこか諦めたような、優しい表情をまどかに向けた。
「全部、俺だよ。5人の魔法少女達を殺めて、君の友達を傷つけた。すべて俺なんだ」
「!!」
まどかは言葉を失い、その場に崩れ落ちた。
- Re: 第四章 25話 ( No.53 )
- 日時: 2012/05/09 13:19
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
「まどか!」
ほむらがまどかの肩を支えた。まどかの肩は震えていた。
「だって……次会うときは笑顔で会おうって。今度は明奈(あきな)ちゃんと一緒に会おうって言ったじゃないですか!こんなこと……明奈ちゃんが悲しむよ……」
涙を瞳いっぱいに溜めてまどかは叫んだ。
彰は首を横に振った。
「いるじゃないか……」
「え?」
彰の後ろに巨大な鳥の魔女が降り立った。
「明奈なら目の前にいるじゃないか」
まどかは彰が一体何を言っているのか、一瞬理解できなかった。
だがまどかたちと彰を除いて他に居るとしたら———。
「あ、ああ……」
魔女。
巨大な鳥の魔女。
「そんな、その魔女が……明奈ちゃんなの?」
彰は否定も肯定もしなかった。
だがその悲痛に満ちた瞳を見れば、言葉など無くとも目の前にいる魔女が明奈であると物語っていた。
「すべては明奈のためなんだ。そのためには必要なんだよ、強大な力を持ったソウルジェムが!」
呆然とするまどかに彰は微笑んだ。
「だからさ、まどかちゃん。魔法少女になってくれないか?」
彰にとっての最後の希望。
それが鹿目まどか。
その希望を追い求める戦いが始まったのはひと月前のことだった。
- Re: 第四章 26話 ( No.54 )
- 日時: 2012/05/10 14:31
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
蒼井彰(あおいあきら)が義理の妹である明奈(あきな)の異変に気付いたのは梅雨の真っ只中の日の夜だった。
彰と明奈は両親を亡くしてから2人で暮らしていた。
不幸中の幸いと言うべきか、彰の父は名のある実業家であったため、残された財産のおかげで両親の死後に金銭面で苦労することは無かった。
(だいぶ遅くなっちゃったな。明奈のやつ、寂しがってるだろうなぁ)
両親が亡くなり、病気のため1人では出歩けない明奈の面倒をみるために彰は高校を中退しようとした。
だが明奈がそれに対し強く反対し、根負けした彰は渋々今も高校に通っていた。
彰は自宅であるマンションを目指して雨の中を駆けた。
「あれ?」
マンションに着いたところで彰は妙なことに気がついた。
自宅には明奈が居るはずなのに、明かりが点いていないのだ。
不安感に襲われた彰は雨に濡れるのもお構いなしに自宅まで走った。
そしてすぐにカギを開けて部屋の中に入った。
「明奈?」
返事は無かった。
人の気配も無かった。
「居ないはずなんて……」
病気のせいで下半身が不自由な明奈は車椅子なしではまともに動くことも出来ない。
にも関わらず、車椅子はそのままで明奈の姿だけ無いのだ。
「まさか……誘拐!?」
彰の父は雑誌やテレビに出るほどの人だった。
金を持っていることを知っている人間は山ほどいる。
しかも事故で亡くなったことも世間に知られている。
そうなれば子供である彰たちに財産が渡った事だって容易に想像できるであろう。
大人よりも子供のほうが相手にするには楽に決まっている。
「明奈!」
彰は家を飛び出した。
どこに居るかも、手がかり一つもないという闇雲な状況であることはわかっていたが、それでも探さずには居られなかった。
- Re: 第四章 27話 ( No.55 )
- 日時: 2012/05/10 14:32
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
「明奈ぁー!!」
とにかく走った。
なりふり構わず探し回った。
「くそ!どこにいるんだよ……」
ズズズ———。
何か引きずるような音が背後でした。
「え?」
振り向くとそこには巨大なナメクジのような化け物がいた。
「え!な、なんだ!!」
彰は後ずさった。が、また背後———前後左右から同じような引きずる音がした。
(か、囲まれた!!夢でも見てるのかよ……)
彰は目の前で起きていることが受け入れられなかった。
だがただ一つわかったこと。それはこいつらが明らかな殺意を持っていることだった。
「お兄ちゃん!!」
聞きなれた声がした。
「明奈!?」
だがその声の主はどこにも見当たらない。
彰が姿を探していると空から羽根が降り注ぎ、ナメクジたちを一掃した。
「!!」
彰の頭上。そこには天使のような羽根を生やした明奈が飛んでいた。
今まで見たことの無い、ファンシーな服装を身にまとっていた。
「危機一髪だったね、お兄ちゃん」
「あきな?ど、どういうことだ?」
「あぁ、これ?その何ていうか……」
明奈は手をモジモジさせながら唸った。
「魔法少女っすよ。蒼井彰くん」
「え?」
明奈の背後から白いぬいぐるみのような生き物が歩いてきた。やたらと長い先の丸まった触角がピョコピョコ動いていた。
「ゴンちゃん!」
明奈は生き物を抱き上げた。
「オイラはゴンべぇっす。よろしくお願いするっすよ」
ゴンべぇはお辞儀をする代わりに触角を動かした。
「どういうことなんだ、これ……」
「そうっすねぇ。とりあえず説明は後にして家に帰ったらどうっすか?彰くん、ビショビショじゃないっすか」
「あ……そうだな。明奈も見つかったし」
彰は渋々納得し、明奈・ゴンべぇと共に部屋に戻った。
- Re: 第四章 28話 ( No.56 )
- 日時: 2012/05/10 14:33
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
彰は濡れた身体を温め、着替え終わると、明奈たちの待つリビングに入った。
「あ、お兄ちゃん。大丈夫?」
明奈はいつもどおりのパジャマ姿だった。
これだけ見ればいつものと変わらないのに、ゴンべぇの存在が先ほどのことが現実であったことを物語っていた。
「はぁ。心配したんだぞ、明奈」
「ごめんなさい———。でもとても言えることじゃなかったから」
「それだよ。ちゃんと説明してくれよ。なんなんだ、魔法少女って」
明奈はゴンべぇに視線を送った。
ゴンべぇはテーブルの上に飛び乗り、ちょうど2人の中心となる位置に座った。
「魔法少女は魔女を狩る存在っす。まぁさっきのはただの使い魔だったんすけど」
「魔女?使い魔?」
「魔法少女が希望を振りまく存在だとすれば、魔女はその逆。絶望を振りまく存在ッす。魔女は人知れずに人を陥れ、人を不幸にする。それを倒せるのは魔法少女だけなんすよ」
「わかったような、わからないような……でもなんで明奈なんだよ」
「素質があったからっす」
「素質?」
「そうっす。素質がなければ魔法少女にはなれない。そもそもオイラの姿も見えないっす」
「いやいや、俺がお前をみているじゃないか」
「だから彰くんにもあるんすよ。魔法少女……いや、魔法少年の素質が」
「はぁ?」
彰はくだらないと言わんばかりにため息をついた。
「そんな冗談笑えないよ。素質がどうか知らないけど、そんな危険なことに明奈を巻き込むなよ」
「確かに危険なことっす。でもそれに見合う見返りがあるとすれば?」
「見返り?」
「契約さえしてくれればどんな願いでも叶えてあげられるっす」
「!!」
彰は耳を疑った。
どんな願いでもとゴンべぇは言ったのだ。
そして今更になって気がつく。
動けないはずの明奈が自分の足で動いていることに。
- Re: 第四章 29話 ( No.57 )
- 日時: 2012/05/10 14:35
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
「明奈、病気を治して欲しいって願ったのか?」
「え!?えっと、うん!そうだよ!」
明奈は急に話を振られたせいなのか、動揺しながら質問に答えた。
「そうか……」
明奈は現に1人で歩いているし、普段よりも顔色もいい。
もう一生治ることも、歩くこともできないと申告されていたにも関わらず、明奈はこうして歩いている。
「そうか、確かに見合うかもな」
「……でしょ?うまい話っすよ」
ゴンべぇがニヤリと笑ったが、それを彰も明奈も見ていなかった。
「どうっすか?彰くんも契約しないっすか?」
「いや、明奈の病気が治ったのなら俺は願う必要はないよ。明奈だってこれから自由になんでも出来る。そんな危険なことをしなくたっていいじゃないか」
戦うってことは当然命を落とすこともある。
ならそんな危険なことをする必要もない。そう思った。
「ところがそうも行かないっす」
「え?」
「明奈ちゃん、あれ」
明奈はポケットから空色に輝く宝石を取り出した。
「これはソウルジェムって言って、契約して魔法少女になると生まれるものっす」
「綺麗だな」
彰はソウルジェムを指で軽くさすった。
「ひゃぅ!」
「へ?な、なんだ急に!?」
明奈が突如変な声を上げたため、彰もびっくりしてしまった。
「くすぐったいよぉ」
「何にもしてないだろ!」
ゴンべぇは触角でソウルジェムを撫でた。
- Re: 第四章 30話 ( No.58 )
- 日時: 2012/05/10 14:35
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
「うひゃああ!やめてってば!」
「ふふふ。ソウルジェムと肉体は見えない糸で繋がっているっす。だからソウルジェムを通してその人に感覚を伝えることが出来るっす」
明奈は怒りながらソウルジェムをしまった。
「ソウルジェムと肉体は感覚を共有しているのか。今はくすぐっただけだけど、実際破壊なんてされたら……」
「ただじゃ済まないっすね。まぁそれは気をつけてもらうほかないっす。それと……」
ゴンべぇは触角から光線を出し、空中に映像を映し出した。
「これはグリーフシードっていうっす。魔女を倒せば手に入るものっす」
「これは何に使うんだ?」
「ソウルジェムは魔力を使えば使うほど輝きを失って濁っていくっす。それを浄化するのがグリーフシードなわけっす」
「濁りきるとどうなるんだ?」
「魔法は願いの力っす。その輝きを失えば当然魔法が使えなくなって、願いの効果も消える」
「じゃあ明奈の病気もまた……」
「その通りっすね。何もしなくても徐々に濁っていってしまうから、やっぱり魔女と戦う必要があるんすよ」
なるほど、これが契約と言う意味か———彰は内心でそう思った。
どんな願いでも叶えると言うのは聞いた人からすればとてもおいしい話だ。
だがどんなおいしい話にも裏があって、それに見合ったリスクをどこかで負わなくてはいけないのだ。
(俺の願いはもしもの時にとっておこう。明奈に何かあったとき、俺の願いで救えるかもしれない)
ゴンべぇの言っていることを100%信じたかと言われたら、彰はNOと答えるだろう。
だが明奈はそうではない。
自由を手に入れられるとなればそれは願わずには居られない。
14年間我慢し続けたことなのだから。
「よし、明奈。これから明奈が魔女退治に行く時は俺も一緒に行くよ」
「お兄ちゃんも?でも今日みたいに危険な目に遭うかも……」
「邪魔にはならないようにする。いいだろ?」
「うーん。どうしよ、ゴンちゃん」
ゴンべぇは彰のことを見た。
「彰くんもなろうと思えば魔法少年になれるんだ。いざと言う時には戦える。なら一緒のほうがいいんじゃないっすか?」
「そっか、そうだよね」
そう、いざという時のために一緒に居なくては意味が無いのだ。
すべては明奈のために。それが彰のすべてだった。