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Re: 第十二章 絶望は死を纏いて狂い踊る 第16話 ( No.530 )
日時: 2012/12/04 14:38
名前: icsbreakers (ID: WV0XJvB9)

■蒼き姫君と紅き王子のワルツ⑨

さやかは飛んできた巨大な槍を間一髪避けた。

しかし体勢を崩し、無様に地面に身体を打ちつけた。

満身創痍だった。

身体の傷は治癒が間に合わなくなっており、動きもだいぶ鈍くなっていた。

「はは……」

さやかは力なく笑うと、剣を杖代わりにして立ち上がった。

「ほんと何やってんのよ、アンタはさ……」

さやかは紅蓮の騎士を見上げた。

さやかの顔にあるのは魔女を倒す者の表情でも、辛さに苦しむ者の表情でもなかった。

病気の親友に「大丈夫?元気だしなよ」と優しく言葉をかける友の顔だった。

「杏子、前に言ってくれたじゃない。私の王子様になってくれるって……。お姫様悲しませてどうするのよ」

これは皮肉でもあり、強がりでもあった。

杏子という人間が、一度言ったこと、約束したことを破らない人間だということを知っていた。

なぜなら似たもの同士だから。

初めは対立から始まったけれど、肩を並べて、背中を預け、いつの間にかまどかとは違う親友となっていた気がする。

一緒に居てくれることで安心できた。

(私はね、口では恥ずかしくて言えなかったけど、アンタのこと親友だと思ってる。だからアンタが居なくなると寂しいよ)

さやかは胸のソウルジェムに手をあてた。

ソウルジェムが淡い光を放ち始めた。

(杏子はどうだった?私のこと……。ううん、言葉で聞かなくてもいい。伝わってるから———。だからわかるよ……きっと杏子も反対だったら同じことしてくれたんだろうって)

淡い光だったのが少しずつ激しさを増し、目を背けるほどのまばゆい光へと変わった。

「一緒に居てあげる……。一人ぼっちは、寂しいもんね」

さやかは光を纏って紅蓮の騎士に向かってとんだ。

そして剣先を紅蓮の騎士に向け———。

「みんな、ごめん」


「まどか……ごめんね」