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Re: 第十二章 絶望は死を纏いて狂い踊る 第16話 ( No.531 )
日時: 2012/12/05 10:57
名前: icsbreakers (ID: WV0XJvB9)

■蒼き姫君と紅き王子のワルツ⑩

杏子は両耳を手で押さえ、目を閉じ、身体を小さく丸め、繰り返される心の闇から逃れようとした。

しかし心の闇はどんなに目をそらそうとも、頭の奥、心の底で否応なしに響いてきた。

幾度となく言葉にならない悲鳴をあげた。

だが助けてくれる者など居るはずも無く、ただ虚しく虚空に消えていった。

ふと音が無くなった。

そして無の中に誰かの足音だけが響いていた。

「杏子」

杏子は顔を上げ、そこに立っている少女を見た。

「さやか……」

いつもならここで無機質なさやかによって心の闇の最初に戻されてしまう。

再び苦しい時間が巡ってくる。

もうやめてくれ———そう杏子は口に出しそうになった。

さやかが手を差し伸べてきた。

払われてしまうとわかっていながらも、杏子はすがるように手を伸ばした。

さやかはその手をしっかりと握り、そして微笑んだ。