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Re: 第十二章 絶望は死を纏いて狂い踊る 第17話 ( No.545 )
日時: 2013/05/01 10:17
名前: icsbreakers (ID: WV0XJvB9)

■絶望は死を纏いて狂い踊る⑫

リンは黒い塊で作り出した3メートルはある槍を煙の魔女に向かって飛ばした。

しかし槍は煙の魔女の身体をすり抜けてあらぬ方向に飛んでいってしまった。

煙の魔女は身体の一部をリンに向かって伸ばした。

リンはそれを身体を捩って避けたが、羽根の一部に当たってしまった。

「こいつ!実体の有る無しを切り替えられんのか!!」

リンはすぐさま体勢を立て直し、次々と襲ってくる煙を避けた。

「こーいうのは彰のほうがやり易かったかもな。まっ、何の問題もないけどよ!!」

リンの前に直径10メートルはあるであろう魔方陣が描かれた。

そしてその魔方陣から黒い塊が大口を開けて煙の魔女を頭から喰らっていった。

「気体になれば逃げれるとでも思ったか?そう思ってるなら大間違いだぜ?何せこいつの腹の中は———『無』なんだからよ」

煙の魔女をすべて喰らい尽くした黒い塊は霧状になって消滅した。

「まぁ、味がオレに伝わって来るのが欠点だがな……おえ」

リンは渋い表情で彰たちのもとに降り立った。

「もう魔女の気配は無いな。あとはどうやってここから出るかだが……」

「ここから出たければ、私を殺さないとぉぉ」

「!!?」

噴水を挟んだ向こう側に更紗が立っていた。

「私を殺せば『ドールハウス』から出れるし、人質も戻ってくるわよぉ」

「ほぉ?そいつは簡単でいいなぁ」

リンはニヤリと笑って自身の足元に黒い影を忍ばせた。

素早い更紗の不意をついて倒そうという算段だ。

だが更紗が手に持つ人形を見て、リンの表情が強張った。

「あ、あれって……」

まどかがその人形を指差して顔を青ざめさせた。

ほむらの表情も信じられないものを見るかのようなものに変わっていた。

「何なんだ?あの人形?」

彰は三人がなぜそんなにも驚いているのか理解出来なかった。

更紗の能力から、その人形がかつて魔法少女であり、今は魔女を封じているのであろう事はわかる。

これから新たな魔女が現れたとしても、大量の魔女を退けることに成功した彰たちなら1体を相手にすることなど造作もないはずだ。

「蒼井彰……。アナタは『コレ』が現れた後に魔法少女になったんですものねぇ。知らなくて当然だわぁ」

更紗は人形から手を離した。

人形はひとりでに空中に浮くと、くるっと回転して頭を下に向けた。

「なら教えてあげるわぁ。この子の名を———」

更紗が世界に溶け込むようにして消えた。

そしてまるで映画館のアナウンスのようにどこからとも無く更紗の声が響いた。

『この子の名は———ワルプルギスの夜』