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Re: 第十二章 絶望は死を纏いて狂い踊る 第17話 ( No.546 )
日時: 2013/05/07 10:49
名前: icsbreakers (ID: WV0XJvB9)

■絶望は死を纏いて狂い踊る⑬

「そんな……どうして!?」

ほむらは悲鳴に近い叫びを更紗に向けて放った。

まどかは唇を震わせて顔を青ざめさせていた。

「ワルプルギスの夜は確かに倒したはずなのに……」

ほむらは崩れ落ちると両手で顔を覆った。

記憶の中にある数多のループの中で見た惨劇が『ワルプルギスの夜』という言葉でフラッシュバックし、ほむらの心を一瞬で折ったのだ。

「あれがワルプルギスの夜……?」

実物を目にしていない彰にはいまいちピンと来なかったが、ほむらたちから話は聞いていた。

命からがら、やっとの思いで倒した魔女。

ほむらがループせざる負えなくなった原因の一つ。

己が命を削るような思いをして倒した魔女が、再び目の前に現れることになったとしたらとても平気では居られないだろう。

「どうしよう……あの時は本当に、本当に勝てたのは奇跡みたいなもので……また倒せるのかな……」

まどかは瞳に涙を溜めて彰を見上げた。

まどかも実際にその恐ろしさを目の当たりにしている。

聞いた話では、叶ゆかりの能力によってほむらの記憶を見ているという。

ほむら同様にワルプルギスの夜によってもたらされた惨劇を知っているのだ。

「どうしよう……彰さん……」

震える足を、震える肩を抑え付けるかのように、まどかは胸の前で手をギュッと組んだ。

彰はそんなまどかをそっと抱きしめた。

(もし俺が倒せたなら……『痛みの翼』で浄化できれば———)

「アイツを浄化しようって思ってんなら、やめておけ」

「え!?」

彰の心の中を読んだかのように、リンがそう言った。

「アイツは普通の魔女じゃねーんだ。弩級の中の弩級、超弩級の魔女なんだからよ。お前が壊れるぞ?」

「でも!!ここでやらなきゃ皆が救われない!!」

リンが振り向いて彰を見た。

今まで見てきた天真爛漫な無邪気な笑顔は無く、どこか儚い、何百年もの時の中ですべてを悟ったものの微笑がそこにはあった。

「り、リン?」

「お前らじゃ死にに行くだけだが、オレなら奴を倒せる」

リンはため息をついて、首に巻かれた首輪についた自身のソウルジェムに触れた。

「まぁ……出来れば見られたくは無かったんだけどな———」

そう誰に言うわけでもなく呟くと、リンは彰から視線を離して向き直った。

「そいつらは任せたぜ」

リンの背中に黒い羽根が出現し、ゆっくり羽ばたき始めた。

「リン!!」

「なんだ?」

「命と引き換え……なんて無しだぞ」

「わーってるよ!!」

リンは雷鳴轟く空に向かって飛んでいった。

彰はそんなリンを死地に向かう友を見送るような悲しい目で見つめた。