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Re: 第十二章 絶望は死を纏いて狂い踊る 第17話 ( No.549 )
日時: 2013/05/21 13:30
名前: icsbreakers (ID: WV0XJvB9)

■絶望は死を纏いて狂い踊る⑯

ワルプルギスの夜より放たれた使い魔たちは一斉にリンに飛び掛っていった。

ワルプルギスの夜の使い魔は、普通の魔女の使い魔とは比にならないくらい強力だ。

並みの魔法少女では返り討ちにされ、仮にチームで戦ったとしても無限に生まれるそれらに翻弄されて終わるだろう。

本来なら使い魔たちに囲まれた時点で敗北を頭に思い浮かべるだろう。

しかしリンはおそるるに足らないと言わんばかりにその場から動こうとはしなかった。

代わりに動き出したのはリンの周りを回る魔法陣だった。

回る魔法陣から、黒いレーザーが目にも止まらぬ速さで打ち出され、それに射抜かれた使い魔たちは一撃でその姿を消滅させられた。

使い魔たちの攻撃が届くよりも早く、しかも的確に打ち出されるレーザーはあっという間に使い魔たちを全滅させた。

ケラケラケラケラ———。

ワルプルギスの夜の笑い声が、先ほどよりも大きくなった。

ワルプルギスの夜は突如その身を回転させ、下を向いていた頭を上へと移動させた。

そして次の瞬間、凄まじい衝撃波がワルプルギスの夜より放たれた。

ワルプルギスの前方に位置する建造物は、まるで竜巻にでも巻き込まれたかにように粉々になりながら空へと巻き上げられた。

その衝撃波は幾度とも無くリンに向けて放たれた。

巻上げられた瓦礫と砂埃でリンの姿はまったく視認できなくなっていた。

普通の魔法少女なら恐らく跡形も無く消し飛んでいるだろう。

例えそれがあの天音リンであろうとも。

誰もがそう思った。

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間一髪、ほむらの機転で被害から免れた彰たちは、絶望的な状況に言葉を失っていた。

「リンさん……は?」

搾り出したかのようなか細い声でまどかがほむらと彰に聞いた。

「わからない……。でもあんなの食らったら———」

彰は歯軋りをして、拳を強く握り締めた。

「でも……初めてだわ」

ほむらが目を見開き、驚いた表情でワルプルギスの夜を見つめて言った。

「ほむらちゃん、初めてって……??」

「何ていうか……あんな本気なワルプルギスの夜を見るのは初めて。いつもは見下しているような余裕が感じられたもの」

執拗に攻撃を繰り出すワルプルギスの夜の姿が、何度も戦ってきたほむらからすれば異常に見えた。

こちらがやらなければやられる———そういう感じなのだ。

「あのワルプルギスの夜が、『恐れ』を感じているの?」

そう思うと、ほむらはリンのことが恐ろしく思えた。

ワルプルギスの夜さえ恐れるほどの力。

そしてそれは場合によっては自分たちに向けられていたかもしれないのだから。

今ワルプルギスの夜を倒せるとしたら、確かにリンしか居ないかもしれないだろう。

しかしもし倒した後に矛先が自分たちに向いたらどうなるのか。

まどかを護るどころか、まばたきをした次の瞬間にはすべて消し飛んでいるかもしれない。

そんな可能性があるのなら、今ここでワルプルギスの夜に倒されてもらったほうが———。

(何を考えているの!!私は!)

ほむらは今思ったことを振り払った。

始まりはどうあれ、今は仲間なのだ。

負けて欲しいなど、考えてはいけない。

そんなほむらの気持ちを吹き飛ばすかのように、立ち込めていた砂埃が突如晴れたのだった。