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Re: 第十二章 絶望は死へと向かい狂い踊る 第18話 ( No.551 )
日時: 2013/06/04 10:41
名前: icsbreakers (ID: WV0XJvB9)

■絶望は死へと向かい狂い踊る①

ワルプルギスの夜が消滅し、そして黒い巨体も消えた。

黒い巨体が居た場所に、元の姿に戻ったリンが立っていた。

「り、リン……」

強張った声色で名を呼ぶ彰を、リンは物悲しげな表情で見た。

「魔女、みたいだったろ?出来れば知り合いには見せたくなかったんだよな」

リンは力なく笑うと、彰から逃げるように視線を背けた。

リンが友達という存在を最も大事に思っていることを彰は知っていた。

同時にそれを失うことを嫌っていることも。

どんなに綺麗ごとを並べていても、人は人の汚い部分を見てしまえば心が離れていってしまう。

それを恐れていたリンは、人に自分の中の怪物を見られたくなかったのだ。

現に彰の中に、リンを恐ろしく思う気持ちが少なからず芽生えてしまっていた。

「気味悪いだろ?良いんだぜ……正直言ってくれてもさ」

「そんなことないよっ!!」

「鹿目、まどか?」

リンの所まで駆け寄り、リンの手をとって突然そう言い放ったまどかに、リンは呆気に取られた。

「だってリンさんは皆のために戦ってくれたんでしょ?それなのに気味が悪いとか思うなんておかしいと思う」

「でもよ……そういうもんだろ?人間ってやつはさ」

まどかは大げさに首を横に振った。

「そういう人もいるかもしれない!でも私はそうは思わないよ!」

「お前……ふふ」

大真面目な顔でそう語るまどかを見て、リンは思わず笑ってしまった。

同時にかつて無慈悲なる悪魔がまどかのことを『女神』と呼んでいたその意味が理解できた気がした。

「わかったよ。ネガティブになるのはとりあえずヤメだ。お前らもここを出るまでは我慢してくれや」

そう言われた彰とほむらは顔を合わせて苦笑した。

こうやって生まれたわだかまりも、まどかが自然と溶かしてしまう。

そんなまどかを無慈悲なる悪魔に渡すわけにはいかない———リンは改めてそう思った。

「さてと……」

リンはまどかに彰たちのほうに戻るように促し、自分は少し離れた位置から更紗と対峙した。

更紗はボーっとワルプルギスの夜が消えた、歪んだ空を見つめていた。

「切り札は見ての通り無くなった。今度こそおしまいだな、更紗」

更紗はゆっくり首だけ動かし、リンを見た。

「ふ、ふひっ、ひひ」

更紗は手に持っていた傘を投げ捨て、今度は身体ごとリンに向き直った。

「希望があるだとかぁ、信じれば報われるとかぁ、諦めなければ勝てるとかぁ……そんな絵空事絶望の前じゃ無意味。無意味なはずなのよぉ。なのにぃ……なのにぃいい!!」

更紗は頭をを皮膚が剥がれ落ちるのではないかと思うくらい掻き毟った。

そして髪の毛をブチブチと抜き取った。

「なんで絵空事が現実になっちゃうわけぇぇえええ!!?」

リンは暴走する更紗に冷たい視線を向けて言い放った。

「希望とか絶望なんてお前には関係ないんだよ。なぜならお前は引っ掛けまわすだけの傍観者に過ぎなかっただからな。ただ見ているだけの奴に女神は微笑まない。絶望の女神であろうとな」

更紗は俯いてゆらゆらと揺れだした。

そして次の瞬間、更紗の姿が消えた。

「お得意のスピードか?だがよ、同じ手はくわねぇよ!!」

リンの背後から無数の黒い刃が放たれた。

それと同時に更紗の姿がリンの前に現れた。

更紗の手がリンに伸ばされようとしたその時だった。

「げほぉおあばあぁ!!」

リンの胸の前から出現した黒い刃に更紗の身体が貫かれ、向かってきていた方向とは逆に押し出された。

「ぐぎゃあぁああ!!」

先にリンの背後から放たれていた黒い刃は軌道を変えて更紗の背中から貫いていた。

全方向から攻撃され、射抜かれた更紗の身体は張り付けられた罪人のように空中に固定された。

「……」

ソウルジェムを破壊すれば終わる。

だがリンは妙だなと思った。

更紗がリンに飛び掛ってきたとき、更紗の視線はリンに向いていなかった。

リンの後ろ。

(後ろ?)

リンは背後を見た。

少し離れた位置にまどかが心配そうな顔をして立っていた。

視界の隅で、更紗の身体からソウルジェムが落ちようとしているのが見えた。

リンは妙な胸騒ぎを覚え、咄嗟に新たに出現させた黒い刃でソウルジェムを破壊した。

その瞬間、更紗と、そしてまどかの身体が崩れ落ちたのだった。