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- Re: 第十二章 絶望は死へと向かい狂い踊る 第18話 ( No.560 )
- 日時: 2013/06/27 15:59
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
■絶望は死へと向かい狂い踊る⑤
「ソウルジェムがっ!?」
彰は綺麗な輝きを取り戻していくまどかのソウルジェムを見て、驚きの声をあげた。
「う、うーん……」
彰に抱えられたまどかが目を薄っすらと開けた。
「まどかっ!!」
「ほむら、ちゃん?———ほぇ!?」
訳もわからないままほむらに抱きしめられたまどかは思わず素っ頓狂な声を出してしまった。
「更紗に心を乗っ取られかけてたんだよ。本当によかった……」
心底ホッとしたような表情で彰がそう説明した。
涙を瞳に溜めてまどかを抱きしめるほむらの姿を見れば、どれだけ自分が危ない状況だったのか何となく理解できた。
「でもよ、どうして助かったんだ?」
苦笑を浮かべつつ、リンがそう聞いた。
まどかはリンにそう聞かれ、さっき心の中で起きたことを思い出した。
伝えなくてはいけない。
蒼井明奈のことを。
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「彰さん!!あの!!」
真剣な顔つきでまどかが彰を見つめていた。
「ど、どうしたの?」
彰はあまりの気迫に少し気おされつつもまどかの言葉に耳を傾けた。
「実はさっき、気を失ったときに———」
途中からまどかの言葉が耳に入ってきていなかった。
彰の視線の先に立つ、一人の少女に目を奪われてしまったからだ。
色鮮やかな紺色の生地にヒイラギの花がデザインされた着物を着ていた。
その着物は女性が着るような物ではなく、よく時代劇で浪人が着ている物に似ていた。
何より驚いたのは顔だった。
美樹さやかにソックリだった。
髪の毛を肘くらいまで伸ばし一つに結んでいるさやか、という感じだ。
だがその少女がさやかと異なるのは、瞳だった。
今時の少女が持つ輝きに満ちたものではなく、いくつもの修羅場を乗り越え、絶望を知った者の失望の目だった。
少女が手に持った刀の柄に手をかけた。
その瞬間、身が凍るほどの殺気を彰は感じた。
(アイツ……殺す気だ!!)
今この場でその殺気を感じ、少女の姿に気付いたのはリンと彰だけだった。
リンが気付き、その視線を少女に向けるよりも早く、彰は自身の刀の柄に手をかけ、少女に向かって駆けた。
「皆!!ここから逃げるんだ!!!」
彰の行動と声で、まどかとほむらは自分たちの後方にいる少女の存在を認識した。
認識し、その少女を自分たちの瞳におさめた時には彰が刀を抜いていた。
彰は小さい頃に学び、身体に染み付いた抜刀の技を持って相手に挑んだ。
(こ、こいつ!!)
こちらに向かってくる少女もまた、抜刀の構えをとっていた。
しかも———。
(こいつ、まさか俺と同じ流派!?)
彰と同じ構え、呼吸のタイミング、動き、何もかもが同じだった。
ただ一つ、違っていたものそれは———。
(俺よりも、速いっ!!)
二人がそれぞれ抜刀し、交差した。
少女は彰を抜き去った後、数回刀を素振りすると静かに鞘に納めた。
対して彰は持った刀を手から落とし、そして———。
「彰さんっ!!!」
まどかの叫ぶ声も虚しく、彰は身体から血飛沫をあげて力なく地面に倒れこんだのだった。