二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Re: 第十三章 間奏 Ⅱ〜漆黒の死神、紡がれる記憶 第二話 ( No.572 )
- 日時: 2013/10/10 14:35
- 名前: icsbreakers ◆3IAtiToS4. (ID: WV0XJvB9)
■第二話②
とても不思議な感覚だった。
当たり一面、本の詰まった本棚が置かれていた。
天井は無く、延々と白い空が広がっていた。
まるで図書館のようなこの空間の中心に、控えめな大きさの丸テーブルが置かれており、その上にティーポットとそれに不釣合いな煎餅が置かれていた。
「私が生きてきて、紅茶との出会いは衝撃的だったわ。でもお茶のお供は煎餅……これは譲れないわね」
目を包帯で覆い、真っ白なバッスルスタイルのドレスを着た気品ある女性は、紅茶をカップに注ぎながらそう語った。
「あの……叶ゆかりさん?」
「ゆかりで良いわ。それでどうしたのかしら、彰くん」
ゆかりの前に座る彰は、居心地の悪そうな顔で辺りを見渡した。
「なぜ俺がここにいるのか、そろそろ説明して貰えないでしょうか?」
彰がそう言うと、ゆかりは口元に笑みを浮かべた。
「彰くんは、コーヒーのほうが好きなのよね。確か角砂糖が2個、ミルク入りよね」
いつの間にか用意されたコーヒーに、ゆかりは角砂糖とミルクを入れてかき混ぜた。
「毒は入ってないから安心して」
コーヒーを彰に差し出し、ゆかりは自分で淹れた紅茶を口にした。
「あのっ!!」
「来たわね」
ゆかりは彰を無視して、ポツンと存在する扉に視線を向けた。
扉がゆっくりと開き、そこからまどかが現れた。
「ま、まどかちゃん!?」
「あ、彰さん!?」
二人の声はほぼ同時に放たれ、見事重なった。
「どうしてこんな所に……?何がどうな———」
突然まどかに抱きつかれ、彰は出しかけの言葉をのどに詰まらせた。
「夢、なのかな?もうお話することも出来ないと思っていたのに……」
まどかは顔を彰に埋めたまま、肩を震わせていた。
今の彰には、自分が謎の少女に斬られたあとの記憶が無かった。
そのためその後、まどかたちがどうなったのかわかっていなかった。
それでもこのまどかを見ていれば、とても辛い思いをしていたのだろうことは理解できた。
「見せつけられるとちょっと妬けちゃうわね。若いって羨ましい」
まどかはハッとなって彰から離れた。
「ゆかり……さん?」
彰に続き、思いがけない人物がそこには居た。
「幽霊を見るような顔ね。まぁ無理もないわね。でもアナタを導いたのがワタシなんだから、ワタシがここに居る可能性は充分にあるでしょ?」
ゆかりは意地悪そうな笑顔をまどかに向けた。
「立ち話も何だし、こちらにどうぞ」
ゆかりはそう言って、二人をテーブルの方へと誘った。